インディアナポリス研究会コルツ部

歴史

2014シーズン

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/2/3/4/5/6/7

Divisional
PlayOff
1月11日
IND@DEN
24−13
 しっかし、どうしてパス投げるかなあ。まあ、QBにパス投げんなちゅうのも、バッターにバット振るな、あるいはAV男優に○○(以上、自主規制)すんな、同様、無理な注文なのかもしれんが。

 なんか、どういう書き出しなのか、分からなかった人ごめんなさい。これは、キャム・ニュートンへの私の恨み節です。まあ、CAR@SEA等々他のディビジョナルプレイオフについての感想は、余裕があったら最後に、あるいは稿を改めて書きます。まずはコルツファン歓喜のIND@DENの感想から。

 苦戦が予想されたこのゲームの第一の勝因は、なんといってもマニングの不調だろう。尽きるといっても良いかもしれない。私も長年コルツファンをやってきたが、これだけ調子が悪いマニングは初めて見た。技術的戦術的に抑えられているというよりは、肉体的な不調のように見えた。なんというか、ボールそのものに力が無かった。すべて山なりみたいなパスだった。首の調子が悪くて、腕が振り切れないのかなと思って見ていたら、試合後の報道で、足のケガ(大腿四頭筋)を告白していた。

 一選手のケガなり不調なりは、戦術や他の選手の頑張りで補う、あるいは補えるのがこのゲームの面白さの一つであろうが、マニングのチームというのは、コルツファンがさんざん経験してきたことであるが、良くも悪くもマニングにおんぶにだっこであるので、マニングの調子がそのままチームの結果につながってしまう。致し方のない事であるけれど、コルツおよびコルツファンにとっては最大のツキだったと思う。

 二つ目の勝因は、パガーノ以下コーチ陣のマニング対策だったと思う。私が、このゲームでコルツ勝利の眼も十分あると思っていた一つの根拠は、BAL上がりのパガーノにはマニング対策のノウハウがあると思っていたからだ。コルツ時代のマニングを最もうまく抑えていたのはレイブンズである(惜しむらくは、それが勝利につながらなかった事であるが、)。そこからやってきたパガーノならマニング対策のノウハウはあると思っていたし、実際にあった。

 三つ目はOL陣の踏ん張りであろう。特に両タックルは完璧な仕事をしたと思う。戦前、コルツとブロンコスの決定的な違いは何かと考えた場合、それはパスラッシャーの有無だと私は考えていた。ウェア&ボンのデンバーに対し、何も無いコルツ、この差がそのまま得点差になって現れるかもしれないと私は恐れていたが、結果的にはウェア&ボンを完封。しかもコルツ側はニューサムがマニングに値千金のファンブルフォース。しかも、それをラックがタッチダウンにつなげる。この7点は本当に大きかったと思う。まさしく、「−2点が+2点、すなわち+4点分の働きをしたことになる。」である。
 このゲームは、コーチ陣以下、チーム全員が完璧な仕事をした結果の勝利だと私は思うが、MVPは誰かと問われれば、カスタンゾ、ライツの両タックルだと思う。

 今、私はここで「コーチ陣以下、チーム全員が完璧な仕事をした」と書いたけれども、そういう意味では、ラック入団以降、私はコルツのゲームほど40試合ほど見ていると思うが、ベストのゲームだったと思う。内容的に完璧な試合、あるいは劇的なゲームは他にもあるだろうが、「コーチ陣以下、チーム全員が完璧な仕事をした」という意味、すなわちコルツというオーガニゼーションの勝利という意味では、このゲームがベストだと思う。ゲーム終了直後のペップ・ハミルトンの破顔一笑はその象徴だったと思う。

 また、ビッグゲームでマニングに勝つというのも、異論反論はあるだろうが、やはりラック入団以降のコルツの最大の目標だったと思う。そういった意味では、そのミッションは今回達成され(そのゲームに、マシス不出場、ウェイン0レシーブというのは何とも象徴的である。)、ラック時代は次の季節に突入したと思う。パガーノは「WE HAVE TOMMROW」と言っていたけれども。

 という訳で、次のAFC決勝は、コルツファンとしてあるまじき態度であるが、コルツ惨敗を私は予想する。こういうベストゲームの後、気持ちがほぐれて、惨敗してしまうというのは、勝負事ではよくある事である。
 そういうジンクス的なもの以前に、今のペイトリオッツに勝てる気が私は全然しない。勝てる方法、展開が全然思い浮かばない。

 プレイオフ出場5チームの中でペイトリオッツに最も勝てそうなのはBALとPITかなと私は思い、今回の組み合わせに私は小躍りしていた。ここで上手くBALがパッツに勝てば、ホームでBALと対戦。これはコルツに十分分があると私は踏んでいたのであるが、2度2TDs差を付けられながら、そこから押し返しての逆転勝利。これは相当強い証拠である。

 また、こんなことを書くと不謹慎であるが、このBAL@NEが終わり、IND@DEN戦を前に私の気持ちは軽かった。絶対に勝ちたいという気持ちはなかった。ここで勝っても、次のNE戦は勝てそうもないしなと思っていたからだ。
 また、こんなことを書くと、更に不謹慎と思われるが、今のシアトル・パスディフェンスに対して、ベリチックがどういう回答を出すのか、それを知りたいという気持ちも強い。一コルファンの気持ちより一フットボールの気持ちの方が上回っている。ベタにアサイメントブロックのランで攻略なのかもしれないけれど。

 という訳で、次はコルツ、負けて良し。いや、むしろ負けろ。って、そんなファンいるか。でも、ラックはムキになって勝ちにいくんだろうなあ。ラックが複数回戦って、勝てていないのはこのニューイングランドだけだし。勝ちたがりのラックはそれを絶対許さないだろう。ラック大爆発という目もあるかな。

 最後に2ツッコミ。

 パガーノの親父がサイドラインにいたが、貫禄あり過ぎ。ハンチングにグラサンに葉巻って、葉巻って。むしろ親父をHCにしたい。貫禄あり過ぎだろ。この親父がHCならスーパーボウル10連覇出来るわ。

 試合後の歓喜のロッカールームにアーセイが姿を見せていた。どんどんビンス・マクマホン化してくるな。キャラ立ち過ぎ。完全にアル・デービスの後釜狙っとる。そのうち選手登録するな。

 他ゲームの感想は余裕があったら書きます。

                                                     2015/1/16(金)
Conference
Chanpionships
1月18日
IND@NE
7−45
 まあまあ負けると思っていたので、そんなにショックは無い。それも、かなり高い確率で惨敗すると思っていたので、そんなに悔しくもない。むしろ、昨年の方がまだ勝つチャンスはあったので、悔しさは強い。実際、今年のNEの強さは、総合的に判断すれば、モスのいた当時、あわやパーフェクトシーズン以来だと思う。チームの形は異なるが、完成度では当時に準じると思う。

 もともと、戦術的戦力的に大きく劣っていたのに加え、ディビジョナル・プレイオフでのゲーム内容の差異からくるメンタリティでも大きく隔たっていた。この3年間でベストと言っても良いゲームをし、一種の達成感(勝負事で最も無用なもの。毒と云っても良いくらいである。)に包まれていたコルツに対し、あわや負けそうなゲームを接戦でモノにし、不安と自信が程よくブレンドされた精神状態でチャンピオンシップを迎えたペイトリオッツ。コルツが勝てる要素は全くなかったといって良いだろう。ひっくり返っても勝てないと私は思っていた。勝つとしたら、ターンオーバーが1つ2つどころか、3つ4つ、理想的には5つ6つあって、初めて勝負になると私は思っていたくらいである。

 という訳で、この結果にそんなにショックや口惜しさは無い。詳しくは後述するが、むしろ良い負け方をしたと思っているくらいである。ラック時代第2期の掉尾を飾るゲームとしてはベストと言っても良いくらいである。ここまで負けた事の無い人生を歩んできたラックにとっては初めての敗北であろうし、ベリチックというのが、NFCにとってはともかく、AFCのチームにとっては目の上のタンコブどころか、眼前の巨大な岩石、カッチン鋼である事を、この屈辱の4連敗で嫌という程思い知ったであろう。心して欲しい。

 以上、負けたこと自体はそんなに悔しくはないとはいうものの、3戦連続で中央のランでやられるとゲーム内容は、正直、如何なものかと思う。反省の色無し。コルツ的にはともかくとして、ディフェンス畑出身のパガーノのキャリア的には大きなミソが付いたと思う。

 これは完全な素人意見であるけれども、プレイデザインとかパーソナルの問題というよりは、もっと単純な、と言っては語弊はあろうが、もっと純粋な技術的な問題のような気がする。パッツのブロックに対して、コルツのDL陣が技術的に対応できていなかったように思う。

 この3戦連続中央のランの敗因が何であったかはともかく、パガーノのHCに関して、少々私は疑問を感ずるようにはなった。同じ負けるにしても、中央のランは止めて、そのひずみで他が破られたみたいな敗戦にはして欲しかった。

 ここでちょっと、これからのコルツの話になるが、今後ラックがQBを務める限り、今後コルツは、向こう10年あるいは向こう15年、プレイオフ常連チームであり続けるであろう。ラックがケガをしない限り、あるいはAFC南に超凶悪ライバルチームが生まれぬ限り、ラックのキャリア全てでプレイオフ出場という偉業も十二分にあり得ると思う。50%ぐらいの蓋然性ではないだろうか。

 そして、その10回以上のプレイオフ出場のうち、何らかの形で1,2回はスーパーボウルに出場し、1度くらいはスーパーボウル制覇もありえるだろう。

 ただ、ラックのポテンシャルを考慮した場合、その成績は勝ちなのか負けなのかと問われれば、負けだと思う。ラックほどのQBならば王朝を樹立しなければならないと思う。5,6回はスーパーボウルに出場し、3,4回の制覇を目指さねばならない。

 ただし、ここから先はラックの仕事というよりは、GMやHCの仕事になると思う。まず、ラックの能力あるいはパフォーマンスであるが、当然ここあたりがピークで、伸びしろは無い。というか、ルーキー時から既にピークであった。更にラック以外の戦力、チーム戦力的にもサラリーキャップ的に今期がピークで(だからこそ、今季あるいは昨季、一度目のスーパーボウル制覇をしておきたかった。)、これから向こう10年、形はどうあれ、徐々に戦力ダウンしていくのは必定である。となると、ここからもう一つ勝つ、あるいはチームのレベルをもうひとつ上げるためには、単純なパーソナルの戦力以外で向上するしかない。
 そういった訳で、王朝を作るのはGMあるいはHCの仕事になる。そう考えた場合、グリグソンのGMはともかく、パガーノのHCではちと厳しいような気がしてきた。

 パガーノをこの3年、つうか実質2年間見てきて思うのは、確かに優秀なHCだと思う。優れたモチベーターであるし、専門のディフェンスもなかなかである。ただし、新しさが無い。イノベーターでは無い。
 私はかつてどこで書いたと思うが、王朝を作るチームの条件のひとつとして、「時代の一歩先を行く戦術ないし戦略」を挙げている。最近のシーホークスの画期的なDB網(そのうち、こじゃれた名前が付くと思う。)などは良い例である。
 ただ、パガーノを見ている限り、確かに優秀なディフェンス畑のコーチではあるけれど、その戦術戦略は、あくまでボルチモアの焼き直し、コピーであって、新しさは無い。これでは王朝は作れないと思う。今回の3戦連続中央のランへの無回答などは、良い、あるいは悪しき例であろう。フットボールの理解が浅いのだと思う。もっとも、あくまでベリチックやウォルシュ、ピート・キャロルに比較しての話ではあるが。

 そういった意味では、今後のコルツをどうするかという意味において、このゲームはベストのゲーム、ラック時代第2期の掉尾を飾るゲームとしてはベストのゲームになったと思う。是非とも、良いスタートラインにして貰いたい。

 とまあ、ここまで、これからのコルツの為にはGMやHCが大事と書いてきたけれども、本当に大事なのは当然彼らを最終的に決定決断するオーナー、我らがアーセイ・オーナーである。そういった意味では、これから向こう5年ぐらいのアーセイの判断、煎じ詰めればアーセイの出会いが今後のコルツ、そうしてラックのキャリアを決定付けるであろう。勿論、アーセイ自身もただのチンピラオーナーで終わるのか、それとも名オーナーの仲間入りをするのか、大きな分岐的にいる。コルツとラックがプレイオフ常連で終わるのか、スーパーボウル常連になれるのかは、アーセイの出会いと見識次第である。

 勿論、ジム・ハーボーを三顧の礼で迎え入れるという、謂わば最後の切り札は持っている訳であるが、これを使うのもなあ。反則という感じもしない訳でもないし、一つ間違えば空中分解だし、この切り札は最後の最後までは使いたくない。無名の新人をアーセイ・オーナーには是非とも見つけてきて欲しい。

 という訳で、今季のコルツのゲーム評はこれにて終了となる訳であるが、最後の最後に個人評をひとつ、ジャック・メーホートである。

 云わずと知れた(でもないか。)昨ドラフトのコルツのファーストピックであるが、そのルーキーシーズンは何気にきっちりレギュラーシーズン14ゲーム14先発(2ゲーム欠場)、プレイオフ3ゲームも3先発。無難にこなした。と書くと、マイナス的なイメージであるが、OLは「無難」が最高の褒め言葉である。今季、この最後の最後まで、メーホートの事を私は一つも書かなかったが、それは彼がOLとして最高の仕事をした証であろう。

 ドラフト時には、「ポジション的プレイスタイル的にどーすんだ」的な書き方を私はしたが、きっちりスターターとしての仕事は果たした。また、コルツのオハイオ・ステイト・ジンクスも払拭した模様である(今後はともかく)。

 今季丸々見た結論から言うと、体格的プレイスタイル的にナチュラルポジションはRTだと思うが、カスタンゾとの相性もプレイスタイル・性格ともども良さそうなので、このまま凶悪左サイドコンビで売り出すのも面白いかもしれない。とか言っているうちに、カスタンゾをリリースしてLTに転向させたりしてな。

                                       暖かくなってきましたネ。2015/1/28(水)
1月18日
GB@SEA
22−28
 このゲームのレビューを書く前に、その前のDAL@GBの感想をひとつばかし。このゲームを見ていて思ったのは、カウボーイズのQBがロモではなく、もう一ランク上のQB、例えばイーライやフラッコーだったら、ボーイズは楽々勝っていたという事である。そういった意味では、ロモの限界がはっきり分かったゲームだったように思う。この問題をどう捉えるかは、ジェリー・ジョーンズの問題であり、私には全然関係ない事であるけれども。

 さて本題のGB@SEAであるが、その感想の前に、ゲーム前の私の予想を遅ればせながら発表しておく。それはすなわち、「ロジャースはSEAには通用しない。GBはひっくり返っても勝てないであろう。勝つ為には、ターンオーバーが1つ2つどころか、3つ4つ、理想的には5つ6つ欲しい。」であった。

 と思っていたら、ターンオーバーが5つ6つ出た。で、前半終了時点で16−0。2ポッゼッション差である。この時点で、あちゃー、やっちゃったかな〜と私は思った。この2ポッゼッションを後半丸々守りきるのはロジャースの力をもってすれば、そんなに難しい事ではない。それをキャッチアップするだけのオフェンス力はシアトルには無い。ディフェンス型チームの典型的な負けパターンである。

 で、第4クォーター、ウィルソンのラッシングTDが出て19−14残り2:09の時点で私は生放送の視聴を打ち切り、家を出た。いや、別に遊びにじゃないですよ、仕事ですよ。一社会人ですから。こりゃ決まったなと勿論思っていた。

 で、帰宅後、早速、録画しておいたIND@NEを見始めたら、冒頭でシアトルの勝利が告げられていた。私はひっくり返った。しかもオーバータイムだという。すなわち、オンサイドに成功し、2ポイントも取り、FGで同点にされ、オーバータイムでTDを決めての勝利という最終スコアである。

 オンサイド以降に関しては、何の説明も要るまい。フットボールというゲームにおけるモメンタムの恐ろしさを、知ってはいたけど再確認するゲームである。とりわけ、リンチの逆転タッチダウンランなどは、普通の状態だったらファーストダウンはともかくタッチダウンは無いプレイである。パッカーズディフェンス陣はまったく足が動いていなかった。というより心が動いていなかった。万全な準備と一定以上のテンションが無ければ、プレイできないのがフットボールのディフェンスであるという事を知ってはいたけど、再確認したシーンであった。どんなスポーツでも同様の事は大なり小なり云えるだろうが、このフットボール、とりわけディフェンスにおいてはそれが残酷なほどに顕著である。

 オンサイド以降のパッカーズのパフォーマンスに関しては誰も責められないであろう。仕方がないとしか言いようがあるまい。むしろ、クロスビーはあの状況下、屋外で、しかも48ヤードの同点FGをよく決めたなと感心したくらいである。私が今まで見た中ではベストのFGである。

 オンサイドのリカバーに失敗したボスティックを責める向きもあるし、また現地の放送局にも抜きに抜かれていたが、それは酷というものであろう。楕円形のボールを、あのごちゃごちゃした中、100%の確率でキャッチは出来ない。だからこそ、オンサイドというプレイが成立しているのである。

 という訳で、ターンオーバー5つという奇跡が起きて、戦前の予想がひっくり返ったゲームを、ゲーム終盤のオンサイド成功という奇跡でもう一度ひっくり返して、戦前の予想通りの結果になったという、奇跡2連発のある意味非常に珍しいゲームがこのNFCチャンピオンシップだったと思う。奇跡が2度連続して元に戻るというなんかチープな内容の小説みたいなゲームだったとも云える。それゆえ、奇跡的なゲームだったわけである。
 しかし、奇跡が1試合で2度起きるというのもなあ。奇跡は起こるからこそ奇跡なのだといわれるけれど、2連発だとホントに奇跡だ(ややこしい。)。

 あとまあ、このゲームを見終わって思ったのは、ゲーム終盤で2ポッゼッション差、理想的には17点差以上つけることの大切さである。2ポッゼッション差以内だと、このゲームのようにオンサイド一発で逆転されてしまう。分かっていた事であるが、再確認した。そういう再確認の多いゲームだったと思う。

 さて、スーパーボウルの予想に入るが、結論から言えばNE有利、それも6:4どころか7:3ぐらいでNE有利だと思う。この優位はひっくり返らないんじゃないかな。それこそ、ターンオーバーが1つ2つどころか云々で。
 何より、今のペイトリオッツにはアサイメントブロックがある。これこそ、対シーホークスディフェンスの特効薬、謂わば丸山ワクチンであろう。これだけでも、そこそこの得点は出来るし、クイックヒットのパスはブレイディの特技のひとつである。30点近くは得点できるのではないだろうか。一方、シアトル側にそれを押し返すだけのオフェンス力があるかと云えば、それは無いと思う。27−17みたいな決着になるんじゃないかな。

 とはいえ、私が見たいのはそういう事では無くて、以前にもチラッと書いたが、今やリーグ最強を誇るシアトル・パスディフェンスにベリチックがどのような答えを見せてくれるかという事である。素人でもわかるようなアサイメントブロックで勝利しても、私は詰まらない。ディープやミドルに何としてもパスを通して、シャーマンに世の中甘くないという事を教えてやって欲しい。

 でもまあ、ブロックすっか。勝ち方より勝つ事の方が大事だもんなあ。何だかんだで、10年近く勝ってないしな。

 一方、シアトルサイドから見れば、この劣勢を跳ね返すには運頼みしかないんじゃないかなあ。
 実際、今季のシーホークスはかなりツキに恵まれている。最大のツキはカーソン・パーマーのケガであるし、次はプレイオフで最も強敵となるであろうカウボーイズとの対戦は避けられた事、そうしてトドメはボスティックの落球である。最後に一発、どえらいツキがあるか。ないか。

 とまあ、何だかシアトルは絶望的みたいな書き方になったが、カンファレンス決勝のパッカーズやコルツような、ひっくり返っても勝てないという程の差ではない。、ちょっとしたツキや展開次第で十分勝利はあると思う。しかもここで勝つと、昨年のマニングに続き、今年はブレイディと、00年代を代表する2大QBを倒す事になる。これは、勿論連覇そのものも偉業だけど、NFL史に残る快挙だと思う。似たような事例は無いのではないだろうか。

 と、今度はシアトル寄りみたいな書き方になってしまったけれど、私は別にどちらのチームの側にも付かない。純粋にフットボールを楽しみたいと思っている。実際、見どころの多い、どちらかと云えば玄人好みのマッチアップになったのではないだろうか。試合前の期待感ワクワク感という意味では、近年ベストというか、個人的には今まででベストのスーパーボウルである。非常に楽しみ。

 最後に、これは直接今回のスーパーボウルとは関係ないかもしれないが、対ベリチックについて、感想というか発見をひとつ。ベリチックと戦うチームというのは、何というか、特徴がはっきりしていないチームの方が戦いやすいように思う。というか、ベリチックが対策を練りずらいように思う。例えば、マニング時代のコルツのようなコテコテのオフェンス型、しかもノーハドルオーディブルという明々白々なスキーム、そうしてディフェンスはカバー2と、こういう特徴、チームカラーがハッキリしすぎているチームよりは、もっとぼんやりとしたチームの方がベリチックと組み易いと思う。
 典型的なのはイーライのジャイアンツであろう。パスオフェンスもまあまあ、ランオフェンスもまあまあ、パスディフェンスもまあまあ、ランディフェンスもまあまあみたいな、こういうまあまあチーム、とらえどころのないチームの方が、ベリチックと戦い易いと思う。すなわち、ベリチック最大最高の武器であるチーム分析が通用しない、といったら語弊があるかもしれないが、通用しにくいチームである。ここ最近のボルチモアなども同様だろう。

 と考えると、今回のシアトルはかなり特徴のハッキリしているチーム、チームカラーの明々白々なチームである。やはり劣勢か。

                                                 2015/1/30(土) 
Super
Bowl
2月1日
NEvsSEA
@ARI
28−24
 まあ、最後のは「魔が差した」としか言いようがないだろう。世界中の誰もがリンチのラン2発で勝てると思っていた。世界中の誰もがラン2発で勝てる、勝ったと思っていた、だからこそパス。それはそれで一理屈である。でも、結果的には失敗だった。最終的にコールを決定したのはOCなのかキャロルなのかは分からないけれど、彼等を責める事は出来ないだろう。人間の心の動きとはそういうものなのである。

 これが仮にレギュラーシーズンの何でもないゲームの何でもないシーンだったら、結果はともかく、普通にランをコールしていたと思う。これがスーパーボウルの究極のシチュエーション、決まれば勝ち、決まらなければ負けという究極のシチュエーションだったからこそ、あのコールになったのだと思う。決定というものはそれくらい不思議なものなのである。判断はどこまで行っても理屈で説明が付くが、決断はどこまで行っても理屈では説明が付かないのである。フットボールに限らず、我々はそういう世界で生きているとしか言いようがないであろう。フットボールほど、それが鮮明になる事は無いけれども。

 直接的結果的な敗因はこのコールだったろうが、シアトルサイド的に真の敗因は別にあったように思う。それは24−14と、謂わば望外のリードをした第3クォーター中盤以降の雑な攻撃にあったと私は思う。

 24−14となった時点で私はシアトルが勝ったと思った。これから20分程度でシアトルの堅固なディフェンス相手に10点差を逆転するのはなかなか難しいと思ったからだ。そうして、このリードを勝利に結び付けるだけのノウハウがシアトルとウィルソンにあると思っていた。ところが、それが無かったのである。

 24−14とリードした直後のパッツのドライブを3&アウトで断ち、その直後シアトルのドライブ、最初のプレイでプレイアクションが成功する。決まった瞬間、私は「あちゃ〜。」と思った。この見え見えのランシチュエーションでプレイアクション、これはさすがにパッツといえども引っ掛かると私は感心したのである。ところが、結果的にはこれが悪魔の囁きだった。その後、シアトル・オフェンスは、どういう訳か、パスに固執、3&アウトを繰り返し、パッツに逆転の目を与えてしまった。最後のコールも、これが伏線だったといえなくもない。

 こういう事を書くと、また手前味噌になるが、24−14とリードした時点で、QBがラックだったら、これはシアトルが勝っていたと思う。これは以前にもどこかで書いたが、ラックといえば逆転勝ちが代名詞になっているけれど、その一方でほとんど相手に逆転勝ちを許さないQBでもある。一定にリードを持って第3クォーター中盤に入ったら、まず逆転は許さない。その目を徹底的につぶし、謂わば固く閉じてしまう。まさしく激辛流である。それが顕著に現れたのが、その時の記事には時間的体力的に厳しくて書かなかったけれど、今季のデンバーとのプレイオフであろう。

 このゲーム、21−13と勝ちの見えた第4クォーター12:20から、ラックはだらだらと攻撃を続け、8:14を使ってFGを決めている。
 一定リードを保って終盤に入ったら、時間を使うためにランを多用するというのは定石だけど、本当に大切なのはランを多用する事では無く、1stダウンを取り続ける事である。しかもロングゲインをせずに、である。理想的には3回のオフェンスで10ヤードきっちり奪って1stダウンを取り続ける事である。ラックはこのオフェンスが物凄く上手い。ラックというQBは、これに限らず、そのオフェンスのシリーズごとの目的をきっちり意識してクォーターバッキングをするプレイヤーであるけれども、それが最も分かり易いのが、この一定リードを保って終盤に入った時のクォーターバッキングである。これは、おそらくリーグで最も上手いと思う。NFCの決勝もQBがラックだったらGBは逃げ切れていたのではないかと思っているぐらいである。

 ラック論はともかくとして、この一定リードを保って終盤に入った時のノウハウがシアトルとウィルソンには無かったように思う。考えてみると、シアトルはディフェンス型のチームなので、基本的には接戦終盤を迎えて、逃げ切る、あるいは差すといったゲームプランなので、大量リードを安全に逃げ切るようなプレイブックは持っていなかったのかもしれない。
 この後半、雑に攻めて、仮に逆転されても、もう一期差し返す自信があったのだと思う。実際、そういう展開になった訳であるし。

 では、この望外のリードを生んだ要因は何かというと、それははっきりクリス・マシューズである。こんなCFL上がりのストリートFA、しかもレギュラーシーズン0レシーブの男を誰がマークしよう。シアトルサイド的にも謂わば宝くじ的に使ったのであろうが、これがまさかの大当たりだったわけである。

 ここで、宝くじ的という言葉を敢えて使ったけれど、シアトル的にはそれなりの計算と一定の期待はあったと思う。でなければ、スーパーボウルでいきなり使ったりはしない。
 それは高さである。6−5という高さである。人も知るように(って、それほどでもないか。)、パッツのパスカバーはシアトルのそれのパクリである。パクリといったら言葉は悪いが、シアトルのそれを参考にして、今季もの凄く良くなった。AFC決勝でラックが何も出来なかったのは、その一つの達成であろう。

 ちなみに、こういう新しい戦術や戦略への感受性の高さ、あるいは知的好奇心の高さというのはベリチック最大最高の長所である。成功者というのは、なかなか他人の美点は取り入れにくいものである。今まで自分のやってきた事を否定するような気がするからだ。それをこうもあっさり取り入れるというのは、ベリチックの勝利への執念というよりは、もっと純粋なフットボールというゲームそのものへの知的関心の高さといって良いと思う。フットボール関連の書物を集めるのが趣味というのも、同じく、勝利への意志というよりは、純粋なフットボールというゲームへの知的好奇心の高さの現れだと思う。

 さて、ベリチックの嗜好はともかくとして、パッツのDB網へと話を戻すが、パッツのそれとシアトルのそれの決定的な違いは何かと云えば、高さである。そのシアトルから移籍したブラウナーを除いて、パッツのDB陣に高さは無い。結果、そのブラウナーをマシューズに付けるまで、好きなようににやられてしまった。

 ただまあ、これは仕方があるまい。ピート・キャロル就任以来5年の歳月をかけてコツコツと長身DBを集めてきたシアトルと導入以来1年しか経過していないパッツとでは、謂わば年季が違う。こればっかりは一朝一夕にはいかない。マシューズ採用は、パクられてばっかりではつまらないシアトルが、本家の意地でその弱点を鋭く突いてきたといえよう。

 この長身DBに関しては私は長らく疑義を呈してきたのだけれど、これがその答えだったようである。パスカバーの技術やスキームならいくらでも教えられる、指導教導できるが、身長のミスマッチだけはどうにもならないというのが、長らくDBコーチを務めてきたピート・キャロルの結論だったようである。このスーパーボウルで、それをはっきり私は教えられた。
 この身長のミスマッチでピート・キャロルはずっと悔しい思いをしてきたのだと思う。逆に云えば、パスカバーの技術やスキームなら自分なら完璧にコーチング出来るという自信があるのだろう。

 私は戦前このスーパーボウルのスコアを27−17と予想した。シアトルには今のパッツ・ディフェンス相手に大きく得点する能力はないと思っていたからである。しかし、結果的には24点、しかも事実上は31点である。しかも、スペシャルチームやディフェンスの力に頼らぬ、純粋にオフェンスの力による得点である。キャロルは正しい解答を提出したと思う。もっとも、その自分が見つけ育て、つまらぬ形で失ったブラウナーに、ゲーム後半、マシューズを消されたのは皮肉な話ではあったけれども。

 この長身ワイドレシーバーというのが、シアトル側の謂わば「傾向と対策」であったのに対し、パッツ側の「傾向と対策」はRACだった。

 戦前、私パッツはアサイメントブロック中心で攻めてくるのではないかと予想していた。結論から言えば、それは無かった。アサイメントブロックの習得がいまひとつだったのか、それとも他に理由があるのか、ベリチックはそれをオフェンスの中心に据えなかった。
 代わりに据えたのは、ショートパスからのRACだった。ショーパス自体は、私に限らず、誰もが予想していたシアトル・ディフェンス対策の一つであったろうが、それではほとんど得点できないと私は思っていた。昨スーパーボウル後半のデンバー然り、今季プレイオフのグリーンベイ然りである。それなりにオフェンスは進むのであるが、いかんせん得点までが遠い。5ヤード前後のパスを10回以上成功させるというのは、想像以上に至難の業であるからだ。そこがアサイメントブロックとの決定的な違いである。アサイメントブロックならば、どこかで、10回に1回くらいはロングゲインが出て得点につながる。ところがショートパスにはそれが無い。

 もっとも、シアトル以外のチームだったら、ショートパスからのRACでロングゲインも可能だが、このシアトル・ディフェンスに関してはそれは無い。高速ラインバッカー陣がそれを封殺してしまうからだ。
 ところが、このゲームではそれが出た。こんなにRACを許すシアトル・ディフェンスを私は初めて見た。パッツ側がルート取りやムーブ、パスのタイミングなどを相当工夫したのだろう。これが28得点を生み出す原動力になった。こういう、他の人なら、パッと見諦めてしまうところで一工夫して突破してしまうというのは、ベリチックの数ある美点の一つだと思う。感服しました。

 これらは解答の提出された謂わば「傾向と対策」であったけれども、結局、解答の提出されなかった「傾向と対策」もある。それは、シアトル・ディフェンスへのミドル以上のパスである。これは結局通らなかった。マニングやブリーズ、ロジャースが不可能なのだから、ブレイディもやっぱり不可能だったという事である。それほどまでに、完璧なパスカバー網なのであろう。
 ただまあ、これはQBの課題というよりは、どちらかと言えば、昨年も同じような事を書いたが、WRの課題であろう。彼らのマークを外せるだけの技量がWRに求められているという事であろう。ただ、現状、そんなレシーバーはNFLに5人くらいしかいないのじゃないかなあ。カルヴィン、グリーン、フィッツ、ボルディン、マーキス・リーぐらいか。あとは問題のジョシュ・ゴードンくらいか。

 ただ、彼らが仮にセパレートできたとしても、その一瞬にすかさずパスを投げ込めるQBとコンビを組まなければ意味が無いので、となると、ほとんど候補はいない。せいぜい。グリーン=ドルトン・コンビくらいであろう。スタッフォードはちょっと厳しいと思う。この点に関しては、しばらくシアトルの天下か。

 そのほか、このゲームでは素人の私では窺い知れぬような様々な「傾向と対策」があったと思う。戦前、私は玄人好みのマッチアップでワクワク感がハンパ無いという書き方をしたけれど、その予想に違わぬ内容的にもゲーム展開的にもベストのスパーボウルだったと思う。スーパーボウルという括りを外しても、私が見た中ではベストのフットボールだった。
 冷静に考えれば、00年代ベストのカレッジのHC対00年代ベストのNFLのHCのマッチアップなのだから、これだけ優れたゲームになるのも当然と云えば当然かもしれない。私は堪能した。

 最後はああいう形で、パッツが勝ちシーホークスの負けという結果になったけれども、これはあくまで結果であって、どちらも勝者といって良いと思う。ただ、60分終了した段階でパッツ側が4点リードしていたというだけである。

 とはいえ、シアトル、特にウィルソンは後悔することの多いゲームになったろうなと思う。最後のワンプレーも当然として、後半のクォーターバッキングに関しては悔いの残るゲームじゃなかったんじゃないかな。「ああすれば良かった、こうすれば良かった。」生涯悔いるゲームになると思う。所謂、「もう一回やらしてくれゲーム」である。とりわけ、上にも書いたが、第3クォーターのプレイアクションは、結果的にはホントに恐ろしい悪魔の囁きだった。

 また、このスーパーボウル以外も、今季のプレイオフは面白いゲームが多かったように思う。マッチアップがはまったのも勿論の事、各チームの主力にケガ人が少なかった事も大きな要因だと思われる。惜しむらくは、カージナルスか。

 ここで最後にもう一度、ウィルソンに話を戻すが、今オフ、史上最高額での契約更改が既に噂されている。シーホークスに選択の余地が無いのは明々白々だけれども、ウィルソンの市場価値というのもちと知りたかった気がする。ぶっちゃけ、QBとして超一流かと問われれば、疑問符が付くであろう。一方で、この3年間の実績は、チームの勝利という意味ではラックを楽々と上回るラックも大概なのだけれど、)。こういうQBにどういう値が付くのか、ちょっと知りたい。

                                                 2015/2/7(土) 

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