インディアナポリス研究会

歴史

戦評 '08シーズン

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<1/2/3/4/5/6/7/8>

 2009年
Week8
 11月1日
SF@IND
14−18
 とりあえず、一番驚いたのはアダイが左利きだったということだ。 

 つう事で、マニングのタッチダウンパスは無かったものの、ナイナーズ相手に快勝。いきなり7点を先制されたときには、久しぶりに、もしかしたら今季初めて、リードされた感覚を味わったが、その後、ジリジリとFGで差を詰めていき、最後は上記のアダイのTDパスで勝利。ゲーム展開的には、前半終了間際、残り33秒からのFGにつなげたドライブが大きかったと思う。あれが無ければ、ナイナーズの勝利も十分にありえたと思う。モメンタム的に非常に大きなFGだったと思う。

 プレイオフでは、こういった展開が最も予想されるので、そういった意味でも、今季の7勝のうち最も意味のある勝利だったと思う。

 その意味のある勝利を引き寄せた表のMVPがアダイなら、裏のMVPはパンターのマカフィーだったろう。ほとんどが自陣20ヤードぐらいからのパントを敵陣20ヤード地点あたりまで押す戻すパントを連発。結果的にナイナーズはノーFGに終わる。40ヤードあたりから開始して、ファーストダウン2回でFGで3点獲得みたいなドライブが49ersにひとつでもあれば、ゲーム展開もまた違っていた筈なので、マカフィーは非常に大きな仕事をしたと思う。
 これで、もう少し左右に散らすパントを蹴れるようになったら、打倒サイファーズも近いと見た。でも、そういうテクニックを身に付けようとすると、メカニックが狂ったりするんだよなあ、これが。

 マニングが珍しく3サックを浴びているが、これは、私の記憶が正しければ、全部RGのポラックが漏らしたもの。あげく後半はカイル・デバンに交代させられとる。機動性が売りだった筈だが。ユーゴーの二の舞になるなよ。

 そのほか、18得点、マニング・ノータッチダウンパスに抑えられたもうひとつの原因は、WR陣。ウェインも含めて、やはり一線級のCBにマークされると、なかなかリリースできない。まあこれは、人的補充が無ければ解決しない問題なので、致し方あるまい。マニングからウェインに放じられ、誰だか忘れたが、CBにカットされたTDパスも、ランディ・モスなら獲れていただろう。

 WRといえば、噂のクラブツリー。今回はじめて、そのプレイ振りを見たが、これは本物と見た。さすがにゴネただけのことはある。ゴネ得と見た。すいません、完全に言葉の使い方が間違っています。
 言葉の使い方はともかく、体格的には、昨今流行りの大型レシーバーとは違って、やや小ぶりな印象だが、WRとしてはむしろこれくらいの方がちょうど良いのかもしれない。カルビン・ジョンソンやブレイロン・エドワーズなどを見ていると、逆に腕の長さがドロップを誘発している感もなくはないので、このクラブツリーのような体格のほうがむしろ理想的なのかもしれない。キャッチ、ルートランニングともに正確なのでポリアン好みだろう。来年のドラフトにエントリーしないかなあ、って、それはさすがに無理か。

 このクラブツリーを得た事で、LT、QB、エースWRとオフェンスの鍵となるポジションがナイナーズは完全に埋まった。これで低迷期は完全に脱する事になるだろう。アッレクス・スミスがどうだろうという意見もあるだろうが、ものすごく良くはないにしても、十二分に良いQBだと思う。少なくともショーン・ヒルよりは良いと思う。2,3年は彼にチームを預けてみるべきだろう。それだけの賃金も支払っている訳だし。元はとらんと。

 話をコルツに戻すと、次はヒューストン戦。ヒューストン・サイドから見ると、これはもうマスト・ウィンどころか、死んでも勝たねばならない試合だろう。ここらで、またコルツに負けていろようなら、いつまでたってもプレイオフに出れない。
 コルツ・サイドから見ても、今季初めて、調子の良いチームと当たるので、結果的にも内容的にも非常に見物である。マスト・ウォッチ。惜しむらくはオーエン・ダニエルズのIR入りだろう。まあ、ダラス・クラーク的には悲願のプロボウルにまた一歩近づいた事になるのではあるが。とりあえずタイト・エンド三枠目は確定か。
 また、その後のコルツのスケジュールはNE、BAL、そしてまたHOUと11月は結構きびしいカードが続く。12月は楽だけど。開幕7連勝している割には、コルツファンのテンションはここまでなかなか揚らなかったのであるが、この11月の5ゲームの結果如何で、テンションの揚りようも変わってくるだろう。

 マイク・シングレタリーの顔は誰かに似ているなあと前々から思っていたのであるが、最近ようやく気が付いた。ナイナーズファンやベアーズファンには悪いが、坂上二郎に似ている。特に目をつむると、そっくり。今同時に坂上二郎ファンも私は敵にまわした。

                                                          2009/11/7
 2009年
Week9
 11月8日
HOU@IND
17−20
 つうか、いい加減勝てよ、テキサンズ。 コルツファンの私が言うのも何だが、どんだけ負ければ気が済むのだか。ここらでコルツに勝てなかったら、もう永久に勝てないよ、永久にプレイオフ出れないよ。ヒューストンの今後の日程を見ると、確実に勝てそうなのはSTLぐらい。TEN、JAX、SEAあたりに調子が出てきた事を勘案すると、ひとつ間違えると5割切るよ。今年あたりプレイオフに出れなかったら、向こう十年、出れない気がする。

 たしか前にもどこかで書いた気がするが、キュービアックの采配を見ていると、あまりにも普通すぎる。50年間無敗みたいなチームが取るような采配を振るっている。もう少し奇策、でたらめな采配を混ぜないと。勝ち続けてきた自信と負け続けてきた不安をひっくり返すには、どこかのタイミングで、セオリー無視のでたらめな采配が必要なのである。普通にやっていたら、永遠に負け続けてしまう。戦力的には、この試合で証明したように、もはやヒューストンの方が上なのだから、あとは奇策を用いて、自身と不安をひっくり返せば良いだけだと思う。次のインディ戦でも負けるようなら、キュービアックは更迭すべきだろう。

 とまあ、ヒューストンサイドから書いてみたが、ゲーム終了から5日近く経過してしまうと、いまひとつテンションが揚がらない。TV放送を見てから書こうと思っていたら、ズルズルとこんな結果になってしまった。

 試合を見た率直な感想はというと、結果を知っていて、見たからかもしれないが、いまひとつ冷えた印象。もう少し熱い試合を期待していたのだが、なんとなく淡々とシナリオ通りに試合が終わった感じ。試合前に期待するものが大き過ぎたのかもしれない。あとまあ、上にも書いたようにキュービアックの個性も関係していると思う。キュービアックも選手の頭をポカリとするぐらいの事はして欲しかったと思う。ショウブでもマリオ・ウィリアムズでも誰でも良いから。デメーコあたりが適任かもしれない。ボンタ・リーチとの殴り合いでもよかった。熱くなるべき試合を逃してしまったという感じである。

 細かい感想はというと、そんなにはないのであるが、前半終了間際でのヒューストンの56ヤードFG。結果的にブロックされた最初のキックの直前に恒例のタイムアウトをコルツは取っていたが、あのタイムアウトは意味が無いと思う。NBAの試合終了間際のファウル作戦よりも意味が無いと思う。

 こういう、ここぞという時のFGで、蹴る直前にタイムアウトを取るというのは、この試合のコルツに限らず、各チームで判で押したように取られる作戦ではあるけれど、成功した例を見た試しがない。科学的に考えてみれば、一回目に蹴るより二回目に蹴った方が、風やら距離感やらの微調整が効くのだから、どう考えてもこのタイムアウトは、意味が無いどころか、二回目のキックのチャンスを与える分だけ、むしろ損だと思う。

 実際、この試合でも、一回目はブロックされて失敗、タイムアウト後の蹴りなおしの二回目はど真ん中で成功だった。このような、形はどうあれ、「一回目失敗二回目成功」というパターンは、私は数多く見てきたが、「FG蹴る直前にタイムアウト作戦」成功というべき「一回目成功二回目失敗」というパターンを私は見たことが無い。それともこの作戦が大成功した有名なゲームでもあるのだろうか。謎な作戦ではある。

 また、この試合の終了間際の決めればOTのFGは、42ヤードだったにもかかわらず、タイムアウトを取らなかったからという訳ではないが、一回目で外した。タイムアウトを取っていたら、二回目は成功していたかもしれない。

 キッカーにプレッシャーを掛けたいのなら、むしろ逆にブロックに行かないとか、訳の分からないフォーメーションを取るとかした方が効果的だと思う。ゴールポストの下で手を振ってみるとか。スクリメージラインで味方同士で殴り合いのケンカを始めるとか。マニングがフリーニーにマウントポジションで殴られていたら、多分キッカーは外すと思う。そしておそらく最も効果的な作戦は、キッカーの女に携帯で電話をかけることだろう。これは動揺する。いろんな意味で。

 そのほかはというと、やっぱりカッシングは目立っていたかな。アーロン・カリーを除けば今年の豊作ルーキーLBナンバーワン(よく分からない表現ではあるが。)という評価は正しいと思う。この試合ではストロングサイドをやっていたけれど、将来的には彼をミドルにしてデメーコをWLBにすべきだろう。デメーコが嫌がるか。

 あとダラス・クラークにパス通されすぎ。キャリアハイだったらしいが、そりゃそうだろう。こんなにパスを取り捲るダラス・クラークを私は見たことが無い。全盛期のマービン・ハリソンでも、こんなにはキャッチしていなかったと思う。また取っとる、という感じだった。ヒューストン・サイドにはそれなりの作戦があったのだろうけど、にしても取られ過ぎ。
 一方で、オーエン・ダニエルズ欠場の影響は、あったような無いような、よく分からないッス。

 ドナルド・ブラウンは、早く復帰してもらわないと、アダイが死ぬ。確実に死ぬ。オフェンスのほとんどのプレイに参加していたように思う。ランよりも、パスプロとかパスキャッチというようなラン以外の仕事の方が多いのだもの。あれは本来、3rd down バックの仕事だぞ。

 フリーニー、ヤンキース優勝して良かったな。松井のサイン貰ったか。自慢のキャップにサインしてもらえよ。

 ウェインのパスはやりすぎ。アダイが羨ましくなったか。どう考えてみても、アダイの方が運動神経は良さそうなので、この結果は致し方なしだろう。まあウェインの投げた、中学生並のヘナチョコパスも、これはこれで笑えるが。もちろん試合に負けたら、めちゃ糾弾されたろうけど。これもヒューストン戦の余裕か。むしろ、こういうプレイを、それこそヒューストン側がしなければいけなかったのであるが。控えのTEに投げさせるとか。

 で次はNE戦。でも何かいまひとつ気持ちが盛り上がらない。勝っても負けても、どっちでも良い様な気がする。プレイオフも、むしろフォックスボローでやりたい気がする。冬のジレットでニュー・イングランドをぶち破りたい。つうわけで、この試合は花相撲で。でも、そういう試合は勝つんだよなあ〜、マニングさんは。

 という訳で、開幕8連勝の割には、いまひとつ盛り上がらないシーズンを送るコルツファンからのリポートでした。って、訳の分からん終わり方だな、いつもの如く。

                                                          2009/11/14
 
 2009年
Week10
SNF
 11月15日
NE@IND
34−35
 TV放送を録画した奴をちょうど今見終わりました。本当は以下のような書き出しを用意していて、実際、試合も終了2分前までは、そんな書き出し同様のグダグダな内容だったのだけど、試合終了2分前に衝撃的な事件が発生し、その興奮冷めやらぬまま寝つかれないので、その勢いにまかせて記事を書いてみたいと思います。まずは用意しておいた書き出しから、

”毎年恒例となったシーズン中盤のNE戦。例年はWeek9に組まれ、ワールドシリーズへの刺客として使われるこのカードであるが、今季はMIN@GBという凶悪なカードがあるので、その役割を譲り、Week10に移動と相成りました。NFLサイド的には看板カードなのであるが、正直言って私は厭きています。選手も飽きていると思う。のびきった蕎麦をすするような感じである。経年劣化が激しい。旬は過ぎている。”

 なあんて書き出しを用意し、実際のゲームも、上述したようにグダグダ感満載だったのであるが、試合終了2分前に事件は起こった。突如起こった。自陣28ヤード、6点リードのNEが4th and ギャンブルを選択したのである。

 さすがにそれはないだろう。FG1本差というのなら、まだ分かる。残り2分で20〜30ヤード進まれてFGを決められるよりは、この4th and 2をクリアする方が確率は高いかもしれない。でも6点差である。マニングといえども、残り2分で60〜70ヤード進んでタッチダウンというのはそんなに高い確率ではない筈だ。レッドゾーン近くの方が、守る範囲が狭まり守りやすくなるという説もあるかもしれない。でも、それよりなによりディフェンス陣の士気が下がるだろう。「そんなに俺達は信用されていないのか。」と。実際、ギャンブル失敗後のアダイの13ヤードランの守り方などは、露骨に気持ちを失っていた。気持ちが入っていれば5ヤード前後で止められた筈である。ギャンブル失敗後、99%の人間が逆転タッチダウンを確信した筈である。それこそNE側の陣営も含めてである。ベリチックも含まれている。

 テレビで見ている限り、このギャンブルの発案はブレイディのように見えた。もちろん本当のところは分からない。また、明かされもしないだろう。しかし、そのギャンブルを最終的に決断したのは、これまで徹底して激辛流を貫いてきたベリチックである。魔が差したのだと思う。ウェス・ウェルカーの存在もあったろう。しかしこれは決定的な敗着だったと思われる。この結果を受けて、コルツがパーフェクトシーズンへの扉を大きく開くかどうかは分からない(多分無理。そんなチームじゃない。)。しかし、これがニューイングランド王朝崩壊の一戦となる事はほぼ間違いないと思う。ここから巻き返して、またスーパーを2回も3回も獲るには相当な馬鹿力が必要である。もちろん、このギャンブルはコルツや世間を欺くための芝居だったというのなら、またおのずから話は別であるが。

 それ以外の感想。

 まずは何といっても、このギャンブルの影の主役とも言うべきウェス・ウェルカー。あらためて思うが、本当にボールを落とさない逃さない。ミスター・ノードロップ・ノーファンブルである。ウェス・ウェルカーへのスラントというのは、パス・ラン共に含めて、現在のNFLに於ける最も成功率の高いオフェンス・プレイだと思う。もしかしたら、ランディ・モスやフィッツジェラルド、カルビン・ジョンソンらを抑えて、彼こそがNFLナンバー1のWRかもしれない。件のギャンブルもウェス・ウェルカーがいたからこそ決行したのだと思う。その位置にデニス・ノースカットがいたら、何も考えずにパントを蹴っていた筈だ。実際、あのギャンブルも、どんなにガチガチに固められていても、ウェス・ウェルカーへの決め打ちのクイック・スラントで勝負すべきだったと思う。もちろん、パントがベストだけれど。

 コルツ側に目を転じると、あまり見るべきものはなかったかなあ。やっぱり、一定以上の力のあるCB陣にマークされるとWR陣はどうしても苦しむ。エースWRが欲しいなあ。

 あと、これはこの試合に限った事ではないが、リターン。キックオフなりパントなりのリターン。あれは、どうにかならんのか。タッチダウンどころかビックリターンすらないもの。いっつも釘付け。最後にキックオフなりパントなりのリターン・タッチダウンを決めたのは、一体いつなのだろう。完全に記憶にない。ドミニク・ローズあたりが決めているのだろうか。地味に改善、それも激しく改善ポイントだと思う。
 まあ確かに、WRにRACを求めないし、RBにはブリッツピックとパスキャッチを求めるし、DBはカバー2要員ということで、リターンに必要な能力を持ったプレイヤーを集めにくいという事情はあるけれど、もう少しどうにかならんかな。寂しすぎる。一方的に損している。

 ブラッケットのエンドゾーンでのファンブルリカバー、あれタッチバックに出来んかな。やはりフットボール・プレイヤーの習性か。

 最後に、フリーニー&マシス・コンビについて。このふたりは、ことパスラッシュに関する限り、NFL史上最凶のDEタンデムだと思う。NFLの歴史は全然知らないけれど、彼等以上のパスラッシュDEコンビが今までにいたとは到底思えない。敵に同情する。最近強く感じる。

                                                       2009/11/17

 件のギャンブルの件について補足。

 さすがに問題のコールだけあって、各地で喧々諤々の議論になっているようであるが、ベリチックのコールを支持するコールが意外に多いのには驚いた。このコールそのものは間違っているのは自明で、何故そのようなコールをベリチックがしたのかという点が議論の的になるのかと思っていたら、それ以前に、コール自体の正否が議論の対象になっているのは意外だった。

 私はこのコールははっきり間違っていると思っている。パントを蹴っていたら、勝負事は何が起こるかわからないというものの、九分九厘、それこそ事件の起きない限り、ペイトリオッツの勝ちだったろう。私は、この放送は、結果を知らずに見ていたので、その時のリアルタイムの感想を云うと、「こりゃ、パント蹴られて終わりだなあ。ありゃ、ギャンブルするのか。よしゃ、勝ちの目が出てきたぞ。とち狂ったか、ベリチック。もしかしたらブレイディ。」である。

 確かに、2分で70ヤードをドライブする事はマニングなら可能という見解もありうるだろう。ただし、ここはタッチダウンのみを防げばよいシーンである。タッチダウンを防ぎつつ、出来ればFGも防ぎたい、というようなシーンではない。一定以上の力を持った守備陣なら十分に可能なミッションである。どこかのタイミングでサックを奪い、試合終了に追い込んでいただろう。
 まあ確かに、このゲームに限らず、ここ数年のNE守備陣の課題は、ここぞという時にパスラッシュが掛からないという点ではある。最も有名な例は、スーパーボウルに於ける対NYG戦だろう(タイリー、どこへ行った。)。具体的に云えば、ウィリー・マッギネストの後釜ということになる。今回のギャンブルも、この懸念がその判断を促すのに、一役買ったのだろう。

 とはいうものの、やはりこの判断は間違えている。たしかに、何分の一かの確率でマニングはタッチダウンを奪い、NEはこの試合を落とす事になるかもしれない。しかし、それより何より問題なのは、守備陣がこの一件でベリチックやブレイディに不信感を抱くということである。私が何より問題視するのはこの一点である。実際、そういう声はちらほら聞こえてきているし、テディー・ブルースキーも「有り得ない決断だ。守備陣は我々は信用されていないと感じるだろう。」とスポーツセンターで述べていたし、ロドニー・ハリソンも似たような事を語っていた。これがスーパーボウルならともかく、レギュラーシーズンの一試合、それも両チームにとって、さほど価値のないゲームである。試合の勝敗よりも、そのほうが遥に重大な問題だろう。ギャンブル直後の、インディのタッチダウンの際の守備などは、先にも書いたとおり、露骨にそれが出ていた。仮にギャンブルが成功していても、しこりは残った筈である。

 しかし、そんなことは稀代の勝負師、ましてディフェンス出身のビル・ベリチックである。百も承知であろう。ここから先は、私の完全な邪推になるが、もしかしたら、ベリチックは、そんなことは百も承知で敢行したのかもしれない。目的は守備陣に喝を入れるためである。勝ち続けているチーム、それもちょうど今のNEのような、チーム自体は勝つ続けているもののプレイヤー自体は勝った事がないチームにとって、最大の敵は慢心である。いわゆる根拠のない自信である。それを拭い去る為に、この刺激的なギャンブルをベリチックはコールしたと考えられなくもない。確かに一時的にチームは動揺するだろう。そして、マスコミや周囲も大騒ぎするだろう。しかしながら、マスコミや周囲が大騒ぎする事によって、かえってチームはひとつにまとまるという事は、意外によくある。もしかしたら、ベリチックはそれを狙ったのかもしれない。タイミング的には絶好だし。って、さすがにそれはないか。やっぱり、魔が差しただけか。

                                                            2009/11/19
 11月15日
DEN@WAS
17−27
 NE@INDの影に隠れて、あまり話題に上らないこの試合を今回、私がレポートするのは、他でもない、この両チームに元インディが結構いるからである。つっても、ハンター・スミスとダレル・リードとストークリーの三人だけだけど。

 何と言っても、最初はハンター・スミスでしょう。インディでは地味にホルダーばかりをやっていた印象であるが、ワシントンに移ったら、信じられないようなキャラ変更。インディに対する当て付けか、っちゅうくらい活躍しとる。
 この試合でも、キックフォーメーションからスナップ直前にショットガンフォーメーション(パントフォーメーションかも、)に変更して、スナップを受けたハンター・スミスは右にロールアウトして、ゴールライン左隅にいるFBのセーラーズに対角線上に35ヤードTDパスを決めるという(実際に投げた距離は50ヤード近くだったと思う。)、マニングでも出来ないような派手なタッチダウンパスを決めていた。ことパスに関する限り、レジー・ウェインより上と見た。
 開幕戦でも、たしかTDランを決めていたので、1シーズンでパスとランの両方でタッチダウンを決めた、おそらく史上初めてのパンターということになるらしい(もしかしたら他にいるかも。)。この勢いでTDレシーブも決めて、TD三冠王の称号を獲てもらいたいものである。現役では他にはトムリンソンしかいないと思う。ロニー・ブラウンも決めているかな。今季のアダイも達成しているか。

 パンターというのは、元々運動能力の高い人が多いのであるが、にしてもである。インディ時代が信じられないくらいである。お前は醜いアヒルの子か。俺らは鴨か。

 んで、ダレル・リード。インディ退団でプレイヤー生命は終わったと、私は勝手に思っていたのであるが、この試合に限らず、デンバーの試合を見ていると、ちょこちょこ試合に登場する。ほとんどスターターじゃないかと見間違うばかりである。よく分からんが、OLBばかりではなくDEとしても使っているみたい。あんなワンギャップで突っ込ましてナンボの選手が3−4のDEである。そして、ここまで4サック。当然のようにキャリアハイ。つうかインディ時代は4年間通算で2.5サックである。インディファンしか注目していないだろうが、分からんもんである。

 ストークリーは、デンバーWR陣の層の厚さに阻まれて、たまにしかゲームに出てこないようであるが、それでも出ればきっちり仕事をする。開幕戦がいい例だろう。ごっつあんタッチダウンだけど。まだまだオースティン・コーリーよりは上と見た。

 試合の感想というのは、特にないのであるが、ちょっちデンバーについて。

 開幕時の勢いは、さすがにメッキがはがれてきたようである。オフェンスはともかく、あのメンバーで3−4はさすがに無理があると思う。
 3−4というのは4−3より優れたスキームであるのは言うを待たないと思うが、それはあくまでNTに人材を得た場合の話である。NTが凡庸だと、この試合のデンバーが良い例であるように、中央のランにまったく歯が立たなくなってしまう。けんもほろろである。ドラフトなりFAなりで、将来的には、何らかの手当てをするのだろうが、とりあえず今季は苦しむだろう。

 HCなりOCなりDCなりの交替に伴い、スキームをがらりと、というか無理矢理変えて、シーズン当初は敵チームの混乱を誘って成功するもの、その後はじりじりとジリ貧状態になるチームは多い。今シーズンのデンバー・デフェンスや昨シーズンのワシントン・オフェンスが良い例である。スキームとプレイヤーの一致が、いかに大切かという事がよく分かる。考えてみれば、我がコルツも、ダンジー交替当初は46気味から、いきなりカバー2にかえて、数年間苦しんだ。ロブ・モリスなどはそれで選手生命を失ってしまった。スキームとプレイヤーの不一致は選手にも首脳陣にも不幸である。

 WASなどもジム・ゾーンからプレイコール権を奪うよりも、WCO向きのプレイヤーを彼に与えてやるべきだろう。サンタナ・モスやランドル・エルは、どう考えてもWCO向きではない。宝の持ち腐れである。サンタナ・モスの足もランドル・エルの多様性もWCOは殺してしまう。そうして、それは結果的にチームを殺している。

 なかには、ランディ・モスとかショーン・ロジャースのようにスキーム関係無しみたいなプレイヤーもいるにはいるが、それはあくまでごく一部である。大半のプレイヤーは特定のスキームを要求する。

 そんなごく一部のプレイヤーのひとりであるチャンプ・ベイリー様であるが、この試合も見事にゲームから消えていた。ほんっとに見事である。ギルバート・ガードナーとは反対の意味でのTV嫌いである。敬服する。

 全然話は変わるが、シンシィがラリー・ジョンソンと契約した模様。問題児かつジョンソン姓ということで、飛び付かずにはいられなかったか。つーことで、エド・ジョンソンもどーぞ。
                                                              2009/11/19

<1/2/3/4/5/6/7/8>