インディアナポリス研究会コルツ部

歴史

2013シーズン

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Week7 10月20日
DEN@IND
33−39
 川上哲治が他界した。年齢的には93歳なので、その死を悼むという気持ちはあまり無い(最も複雑な気持ちを味わっているのは、何と云っても長嶋茂雄であろう。もしかしたら、ホッとしているかもしれない。巨大すぎる目の上のタンコブだったから、)。世代的にも、当然現役時代は知らないし、監督時代も知らない。むしろ、かつてNHK(だったかな?)で放送されていた少年野球教室の姿が懐かしいぐらいである。

 その死は、むしろ私にとっては、戦前のプロ野球を知る最後の大物が亡くなったと云う意味合いの方が強い。千葉、青田、別所、皆鬼籍に入り、そうしていよいよ川上である。スタルヒン(何故?)と対戦したことのあるプレイヤーはもういない。いるかもしれんけど。

 川上巨人と云えば、何と云ってもV9であろうが、それを称える声は日本中のあちこちから常にあがっているが、その内容について論評する人は存外少ないように思われる。

 川上巨人の無論それ自体偉業であるが、その日本シリーズ、いずれも3敗していない、1敗ないし2敗でパ・リーグのチームを葬り去っており、その一方で4連勝も無いという事を指摘する人は存外少ないように思われる。私の知らないところで盛んに論議されているかもしれないけれど。

 日本シリーズで9連覇しながら、そのいずれも3敗、すなわち王手を掛けられる事が無く、一方で4連勝も無いと云うのは特筆すべき事では無いだろうか。3敗しないという事は、勝ちたい時に勝ち、4連勝が無いという事は勢いで勝った事も無いという事になる。内容的にはともかく、勝ち星的には完全にゲーム、そうしてシリーズを支配していたという事になる。そう考えると、第2戦重視なんていう戦略も、凄味を増して聞こえてくる。

 V9の比較対象として80年代から90年代の森西武が挙げられるが、この西武は3敗も4連勝もある。無理に比較対象を挙げるとすれば、ジョーダンのいた時のブルズであろう。このチームは6度の優勝、3敗も無く4連勝も無い。やはり、勢いではなく、勝ちたい時に勝っていたチームであったのだろう。ちなみに8連覇時のセルティックスは3敗も4連勝もある。

 V9巨人の3敗も4連勝も無いと云う事実は、もう少し人口に膾炙しても良い事柄だと思う。

 ちなみに、日本シリーズにおける勝ち負け記録で、この3敗も4連勝も無くV9以上の偉業だと私が思うのは、第1次長嶋巨人の初日本シリーズ、3連敗から3連勝し第7戦で負けるという奇跡である。3連敗から3連勝したら、普通第7戦は勝つだろう、勢いだけで。勝った阪急の足立が凄いというよりは、負けた長嶋のミラクルっぷりに私は凄味を感じる。
 3連敗から3連勝は、よく知られているように、過去3度、西鉄、巨人、西武が記録しているが、勿論第7戦ないし第8戦は勝利している。しかも西鉄、巨人は大勝である。MLBやNBAで似たような事があるのか、調べていないので分からないが、この「3連敗から3連勝して第7戦で負ける」という奇跡も長嶋茂雄の数多いミラクルの内のひとつとして、もう少し記録されて然るべきだと思う。

 ちなみに、私の思う長嶋三大ミラクルは、1.天覧試合のサヨナラホームラン 2.ルーキーイヤーであわや三冠王 3.今ここで紹介した「3連敗から3連勝し、第7戦で負ける」の3つである。例のメークミラクルは次点かな。「永久に不滅です」にもちょっとしたミラクルがあるのだが、それは別の機会に。その1は、ありとあらゆるところで論議されているので、ここでは、その2の「ルーキーイヤーであわや三冠王」についてちょっと書いてみたいと思う。

 まず、ルーキーが打撃タイトルを獲ること自体が、異常である。投手タイトルをルーキーが獲る、あるいは独占するというのは木田や野茂、松坂の例を出すまでもなく、割に起こる。ただ、バッターがルーキーイヤーに打撃タイトルを獲るという事はほとんど無い。私の知る限り、他の事例は桑田武の本塁打王と金城の首位打者のみである。ただ、金城の場合は、厳密というか完全に2年目なので、ルーキーちゃあルーキーかもしれないが、厳密にはルーキーではない。長嶋は、もちろん完全な1年目、ルーキーである。

 しかも、本塁打王と打点王の2冠であり、打率も2位なのである。しかも、本塁打は記録的には29本なのであるが、実際には30本打っているのである。では何故29本かと云うと、ベース踏み忘れ(アホ)。しかも盗塁数は37、つまり実質的には3割、30本、30盗塁のルーキーなのである。こんなルーキーはもう2度と現れないかもしれない。ちなみに、ルーキーイヤーの30ホーマーは上記の桑田(!)と清原のみであるのだが、清原は高卒という事を忘れてはならない。打率も3割4厘なので、清原は長嶋に最も近づいたルーキーだったといっても良いかもしれない。ただ、当時のパ・リーグは落合・ブーマーの全盛期だった為、タイトルとは無縁だったのである。

 長嶋ミラクル話はこの辺で切り上げて、日本シリーズの勝ち星の話に戻すと、3連敗4連勝は上に紹介したようにまま見られるが、勝ち負け勝ち負けがきれいに並んで、つまり○●○●○●○の形での4勝はいまだ一度も無い。今年の日本シリーズも第2戦第3戦と楽天が連勝したのでもう無理である。もしかしたら、MLBやNBAでのプレイオフではあるかもしれない。ちなみに、日本のパ・リーグのプレイオフでは、1973年の有名な野村の死んだ振り作戦が○●○●○で3勝している。○●○●○●○での4勝というのは、ある意味4連勝以上の究極の日本シリーズの勝ち方だと思うが、誰か挑戦してみてはいかが。って、誰に向かって言ってんだ。

 長嶋と野村の名前が出たので、ここで彼等の因縁話をもうひとつ。私は先に、長嶋のルーキーイヤーはあわや三冠王と書いたけれども、当時、マスコミで三冠王が期待されていたのが、この長嶋に山内、そうして怪我が癒えればの条件付きで中西の3名であった。戦後初の三冠王をこの三者で競争していた形なのだけれど、結果は人も知るように野村。さぞかし、世間はガッカリしただろう。

 川上の死から、話が飛び火してしまったが、川上ついてはもうひとつ付け加えておきたい。それは、あの美しいバッティングフォームである。私は、川上のバッティングフォームが、左バッターの、もしかしたら右バッターにとっても、ひとつの理想だと思っている。王だ落合だと云う前に、川上に戻ってみてはいかが。右バッターのひとつの理想は高校3年時の清原か、やっぱ。

 と、得意の本文と全然関係の無い前置きを長々と書いてしまったが、本題は問題のMANNING@INDである。一週遅れの記事になってしまったが、ちょうどコルツはバイウィークなので許してちょ。

 今季は過剰労働による体力不足のため、このサイトへの記述はもちろん、NFL観戦も控えようと思い、全ゲームの録画も止めたのであるが、ついつい見てしまう。禁断症状が出る。野球やバスケットボールでは、そういう症状は無かったのであるが、フットボールとはなんとも魅力的なスポーツである。

 さて、今季一番の問題の一戦、NFL一押しの一戦、Manning in Indianapolisである。

 とはいえ、新聞記者的には色々と記事の書き易いゲームであろうが、実際のところ、純然たるフットボール的にはさほど重要な試合ではない。ここまで6戦全勝のデンバーは無論のこと、4勝2敗のコルツにしても、この一戦に負けたからといって、シーズンの命運を大きく左右するゲームではない。単なるレギュラーシーズンの一戦に過ぎない。
 とりわけ6戦全勝のデンバーにとっては手頃な負け時といっても良いくらいのゲームである。ここらで一丁負けといて、全勝で浮かれているチームの気分の引き締めをはかるには格好のゲームといっても良いくらいである。
 4勝2敗のコルツにしても、幸いAFC南は全体的に低調なため、致命的な敗戦になるようなゲームではない。

 という訳で、チームとしては単なるレギュラーシーズンの1ゲームに過ぎないず、あと残る図式と云えば、ラックvsマニングという図式であろうが、こちらも当人達はさほど意識はしていないだろう。ライバルというには、あまりに年齢が離れているからである。ラックにとってのマニングは、偉大なる先輩、少年時代の憧れ、QBとしての教科書といった感じであろう。また、マニングにとってのラックは、自分が築いたコルツ、あるいはNFLのQBとしての後継者といったぐらいで、両者ともに特別な感情はなかろう。退入団の因縁はあるが、そんな事をいちいち気にしていたら、アメリカでのプロスポーツマンは務まらない。まあ、アーセイに関しては、何らかの感情はあろうが、もともとマニングというには良かれ悪しかれ感情的にな人間ではないので、それも小さなものであると思う。

 両者のライバルという意味では、ラックにとっては現時点では、私の思うにおそらくラッセル・ウィルソンであろうし、マニングにとっては、キャリアの初期はライアン・リーフ、中期以降は無論ブレイディという事になろう。この辺は何らかの感情はあったろうし、また無ければプロスポーツマンとして失格だろう。ただ、ラックとマニングの間では、上述の繰り返しになるが、年齢が離れすぎていてライバルにはなり得ない。勿論、同じチームにいれば、話は別であるが。

 あと、マニングとその他のチームメイトとの関係もあろうが、そもそもマニング時代のコルトは、一部を除いてほとんどいないので感情的な問題が残りようが無い。ごく一部に例外はいるが、それは後述する。

 最後はマニングとファンとの関係であろうが、これは呑気はインディの町なので、そんな気持ちは生まれようが無い。ブーイングが生き甲斐のフィラディルフィアの町なら無理矢理にでもブーイングしていたろうが、フージャーの町じゃねえ。
 そもそも退団の経緯も、ごく自然なものなのであるから、特別な気持ちは生まれにくいだろう。感謝の気持ち以外、何も無いというのが、ファンの本音ではないだろうか。私も同様である。

 これがファーブのように、強く愛され強く憎まれるようなタイプの人間、プレイスタイルなら、色々な感情も湧きあがったであろうが、上述したようにマニングというのは感情的な人間ではないので、そういう気持ちは起こり難い。

 以上、新聞記者やテレビディレクターが期待するほどエモーショナルにはなりにくいゲームであり、事実ならなかったのであるが、勝敗はマニングの負け。相変わらず、大事なところで負けるねえ。

 私は先に、この一戦は両チームにとって、マスコミ関係者が期待するほど重要な一戦では無いと書いたけれども、ひとつだけ重要な点があって、ここでマニングが負けると、「大事なゲームで勝てない。ここぞという時、勝てない。」というマニングのパブリックイメージがまた増幅してしまうのである。開幕ン連勝はいつか止まるであろうが、ブロンコス的ではなく、マニング個人のパブリックイメージ的に、ここでだけは止まっちゃダメというのが、このコルツ戦だった訳である。そして負けた。また負けた。

 そして、例によって例の如く、マニング自体のパフォーマンスが悪かった訳では決して無い。断じて無い。ブロンコスの敗因は、フィールドポジションの悪さ、ファウル、ターンオーバーという、自分達の力では比較的どうにもならぬものばかりである。
 マニングのインターセプトにしても、腕をはたかれたボールが敵の手元に行くか否かなんていうのは、ほとんど運である。実際同じようなシーンがラックにもあったが、こちらはそのまま地面に落ちている。
 また、ファウルにしても、自分達の気持ちひとつだという側面はあるだろうが、これもある程度レフリーの主観に左右される。
 フィールドポジションの悪さも、嵌まるときは嵌まってしまうものなので、どうしようもない。

 でも、負けたらマニングの責任になってしまうのがフットボールの世界である。このゲームを見終わったときの私の率直な感想は、「自身のパフォーマンスは悪くないのに大事なゲームで負けてしまうという典型的なマニング的な結末」というコルツファンには御馴染みの、そうしてデンバーファンもうすうす気付きつつある典型的なマニング的結末である。これなら、いっそ5Intsぐらい喰らって豪快に散った方が良かったと思わせるような、もやもや感である。

 まあ、マニングの感想はそれくらいにして、それ以外の感想。

 まずは、セルジオ・ブラウン。「えっ、セルジオ・ブラウンなんか、このゲームで活躍してないじゃん。」っと突っ込まれた方。その通りです。いつものとおり、セルジオは全然活躍していません。第1クォーターでの幻のリターン・タッチダウンがあるのみです。でも、あそこで笛を吹かれているのがセルジオらしくて、思わず書いちゃいました。

 セルジオに関しては、あの衝撃のJAX戦以来、いろいろ突っ込んできているが、実は今のコルツで私が一番好きな選手は、このセルジオだったりする。このゲームの幻のタッチダウンなど、最高ではないか。
 まあ、こういうガヤというか、お調子者は結構貴重な才能なので、しぶとくキープして貰いたい。スペシャルチーマーとしてもDBとしても全然戦力になっていないけれども、サイドラインの賑やか師というのは、これはこれでなかなか稀有な、いそうでいない貴重な才能なのである。セルジオを切ったら、私はちと切れる。ちとだけども。

 次はマシスのサック。

 私は先に「このゲームは、マスコミが期待するほどエモーショナルにはならなかった。」と書いたけれども、私がこのゲームで唯一、感動というか、感銘というか、感慨をおぼえたのは、マシスの2つのサック、特に一つ目の、エリック・ウォルデンが抑えそこなってリカバー・タッチダウンにはならなかったけど、セイフティになったサック、ファンブルフォースであった。決まった瞬間、私はテレビに向かって、「フリーニー様の怨念じゃ〜。」と思わず叫んでしまった。

 私は先に、このゲームに関してのコルツのプレイヤーに、一部の例外を除いて、特別な感情はないと書いたけれども、その一部の例外が、マシスつうか、その相方フリーニーだったと思うのである。マニングに対して「良からぬ感情」と言ったら大袈裟になるが、複雑な感情、何らかのコンプレックスを抱いていたのがフリーニーだと思うからである。マニング個人というよりは、マニングにまつわる様々な状況に対して、何らかのコンプレックスを抱いていたと思うのである。

 当時、マニング全盛期のコルツは、なにをやってもマニングマニングマニング。ディフェンスはおまけみたいなもん、下手をすれば厄介者扱いだった。マニングの足を引っ張る不良分子扱いだった。勝てばマニングのお陰、負ければディフェンスのせいという訳である。
 その状況に対して最も不満を持っていたのが、ディフェンスの中心プレイヤー、フリーニーだったのは言う迄もあるまい。勿論、フリーニーにしたって、それがマニングの責任で無い事は重々承知しているだろうが、マニングに対してひとかどならぬ感情を抱いていたのも事実だろう。この試合、もしフリーニーが参加していたら、なんとしてもマニングからサックを奪わんとしていたであろう。残念ながら、昨オフ解雇されてしまったので、コルツのユニフォームを着てマニングからサックを奪うという悲願は達成できなくなってしまったが、その悲願を、フリーニーの気持ちを誰よりも了解しているであろう相方のマシスが達成したのである。ブラインドサイドから大外まくってのファンブルフォースという、まさしくフリーニー十八番のプレイで、である。
 このプレイを決めた直後、サイドラインでマシスが興奮する訳でもなく喜ぶ訳でもなく、ジッと一点を見つめて、精悍な表情をしていたのが私には印象的だった。何と云うか、任務を遂行した男の顔だった。

 ちなみに、このフリーニーはチャージャーズに移籍しているので、もしフリーニーが怪我をしていなかったら、コルツはポリアン時代の攻守の中心選手と連戦する筈だった訳である。また、フリーニーはマニングと同じAFC西地区なので、怪我が癒えれば、マニングからサックという悲願は達成できる、かな。

 それはさておき、フリーニーをそういう気持ちにさせた張本人マニングであるが、そういうところにいまひとつ気が回らないんだよなあ。コルツ時代、そうしてブロンコス移籍後も当然同じなのであるが、ディフェンスには全く無関心である。ビックプレイがあろうが大失態があろうが、いつもそっぽを向いている。隣の人とぺちゃくちゃお喋りしている。まあ確かに、マニングのオフェンスというのは打ち合わせや反省が重要な類のものなのかもしれないが、もう少し自軍のディフェンス陣に関心を持って欲しいと思う。テレビ・ディレクターがディフェンスビッグプレイやミスの直後、サイドラインのマニングを毎度抜くけれども、あれは「マニングはディフェンスに関心ないですよ〜。」というのを、全国の皆々様にご報告しているのだろう。

 芝居でも良いから、ガッツポーズのひとつでも見せたら良いと思う。それでなくとも、フットボールという競技はディフェンスとオフェンスが乖離しがちである。メンツが完全に分かれ、練習は別々、たまに会うときはスクリメージで対峙するという、まるで別のチームであるかのような錯覚を起こしがちなスポーツである。野球も投手陣と野手陣が分かれがちになり易いスポーツであるが、フットボールはそれ以上であろう。そうして、攻守が同じ程度の力量ならともかく、大概はどちらかが上でどちらかが下になる。たとえば2000年前後、つうか00年代を通じてボルチモアはディフェンス優位であった為、ディフェンス陣はオフェンス陣に不満を抱き、オフェンス陣はそれを拗ねるという状態が常態であったと聞く。2000年代のコルツはその攻守逆転版であろう。最近のブロンコスも早速ディフェンス陣が拗ね始めているらしい。

 このWeek7まででパスディフェンス32位ランディフェンス1位という異常な数値を叩き出してしまい。早速チャンプ・ベイリーがそれに不満を漏らしたらしい。そりゃマニングと対峙するチームは当然無理にでもパッシングアタックをせざる得ないので、ブロンコス守備陣がこういう数字上の結果になるのはやむを得ない。でも、世間はそうは見ない。単純に数字の上下だけで判断する。嘘だと思うが、それが世間というものである。

 そういうものを融和とまでは言わないけれども、ある程度調整するのがQB、チームリーダー、チーム最高給取りの仕事なのではないかと私は思う。そのために、演技でもよいからディフェンスのビックプレイにはガッツポーズのひとつもしろと私は言っているのである。ところがマニングはそんな事は全然しない。オフェンスの反省と調整に夢中である。もしかしたら、テレビ画面の外ではやっているのかもしれないが、そういう雰囲気は私には感じ取れない。

 これが私のマニングに対する最大の不満であり、マニングの最大の欠点だと思っている。まあ、マニングは技量を出来る限り高める事が勝利への最速の近道だと信じているのだろうが、スポーツというのは人間のやるもの、ましてフットボールというのは多人数の人間が参加するスポーツなのだから、そういう人間的なもの精神的なものは意外に大きいと私は思っている。
 勿論、何から何まで精神論で解決せよという心算は毛頭無いし、またそういうものは麻雀用語でいうところのオカルトとして基本的には斥けられるものであろうが、そういうものが土壇場では意外に大きくモノをいうのがゲームだと私は思っている。

 マニングの前任者のティーボーは結局それだけ、というかそれが限界ギリギリ、カリスマレベル、昨今の流行語的な意味ではなく、言葉の正しい意味でカリスマレベルまで高められたQBだったと思うが、これら最も遠いところ、対極にいる二人のQB、マニングとティーボーがほぼ同じチームでほぼ同じ結果(ディビジョナル・プレイオフ敗退)という結果を出したのは、私には非常に興味深い。

 また、ヤンキースのジーター、こちらはティーボーと違って技量においても秀でているが、そのジーターが何故に殿堂入りクラスと称えられているかと云えば、その技量もさることながら、何と云っても、その史上最高とも称されるリーダーシップである事は論を待つまい。

 そういうものをマニングに求めても、性格的なものなので、無意味であろうが、それが私のマニングに対する最大の不満、欠点である。

 2006シーズンのNEとのカンファレンスファイナル、これはマニングのコルツ時代唯一のエモーショナルなゲームだったと思うが、その決勝点が、マニングのパスプレイではなく、サタディの開けた穴にアダイが突っ込んだランプレイだったというのは、それを象徴しているように思われる。

 マシスの話から始まって、結局マニングの悪口へと戻ってしまったが、あのサックが、まさしくフリーニー得意のプレイだったために、私はそういうことを思ってしまったのである。

 さて、次はウェインの怪我である。コルツファンにとっては「マニングの帰省」より、むしろこちらの方がこのゲーム最大のトピックかもしれない。
 ACLの怪我なので、すでにIR入り、シーズンエンド決定。怪我の状態は不明であるが、年齢的なもの、当面の目標だった出あろう1000レシーブ達成、そうして何より恩人マニングご帰還のゲームでの怪我&チームの勝利という事で、いわゆる神のお告げを感じてもおかしくない情勢である。このまま引退って言う事も十分有り得るであろう。離婚を控えていて、無茶な慰謝料が必要ともなれば話は別であろうが。

 ウェインの今後はともかくとして、とりあえず今季はウェイン無しでオフェンスを進めなければならない。
 でもまあ、これも良い機会、って勿論良くはないけど、近い将来ウェインはいなくなるのであるから、ここらで一丁ウェイン抜きのオフェンスを模索するのも良いであろう。なかなか難しいであろうが。特に、これはウェインがいた時から感じていた事であるが、クイックスラントが使えないというのは本当に痛い。

 今現在NFLで3ヤードくらいの距離が欲しい時、ある意味ラン以上に最も確率の高いプレイであろうクイックスラント、もちろんQBとWRにそれ相応の技量は要求されるが、このクイックスラントが使えるWRは現状のコルツではウェインしかいなかった。そうして、そのウェインがいなくなってしまったというのは、本当に痛い。この程度の距離はますますラックとリチャードソンのラン頼みになってしまう。あとはブラジルに期待か。アレンもいないしのお。
 
 ただ、こういう状況に陥ってみると、今更ながらロバート・ウッズを獲っておけば良かったなあと思う。今季の新人WRを、全部では無いがチラチラ見たところ、もっともウェインの後継者にふさわしいのはこのウッズのように思えた。確かなルートランにシェアハンドと、いかにも典型的なNo.2レシーバータイプである。いかにもポリアンが好きそうなタイプである。

 ただまあ、グリグソンはこの手のタイプには興味を示さないんだよなあ。昨季のエイブリーとヒルトン、そうして今季のベイと、WRに関しては、ルートランより運動能力重視の選考である。謂わば、捕るまでを重視するポリアンに対し、捕ってからを重視するグリグソン(他に担当がいるのかもしれんけど、それはともかく)という構図である。
 捕ってからを重視するか、捕るまでを重視するかは確かに見解、あるいは好みの分かれるところであろう。もちろん、捕るまでも捕ってからも素晴らしいカルヴィン・ジョンソンやフィッツジェラルドのようなのが理想であり、彼らこそエースレシーバーに相応しいのだけれど、そんなのは元々数が少ないので考慮の対象外である。現実的には、捕ってから派と捕るまで派の二者択一を迫られる。グリグソンは前者であり、ポリアンは後者という事になろう。ウェインも殿堂入り級の実績を残しているけれど、純粋にWRといての評価となれば、エースではない。RACが無いからである。典型的なポリアン系統のWRと云えるだろう。

 ちなみに私はポリアンに育てられているので、後者、捕るまで派である。勿論、同じ事を繰り返すが、どちらが正しくどちらが間違っているという問題ではない。あくまで好み、あるいはフットボール・スタイルである。
 ただ、ポリアンの指名したレシーバー、ギャルソンや、最近NEと契約したコリー、古くはアロマショドーなど、そうして多くのTE勢も含めて、他チームに行っても活躍しているというのは確かなポリアンブランドだと言えるのではないだろうか。まあ、アンソニー・ゴンザレスのような豪快な失敗例もあるけれど。

 ポリアンの眼力はともかくとして、今後、グリグソンがどのようなレシーバーユニットを構築するのかは要注目である。

 その現コルツのレシーバーユニットの一人、ヘイワード=ベイであるが、先のシアトル戦ではまさかの0レシーブ、続くSD戦では1レシーブと、ポリアン時代のWRでは有り得ない結果を残し、コルツファンにかつてない衝撃を与えたが、この試合では4レシーブ1TDに1ターンアラウンドと、まずまずの結果を残した。
 まあでも、こういうのを見てっと、このベイは普通に10ヤード・フックをやらせるよりは、スクリーンやターンアラウンドといったガジェットプレイヤー的な使い方をした方が良いのかもしれん。それで良いのかという問題は以前残るが。いずれにせよ、今オフ、首脳陣がベイをどのように処遇するのかは要注目である。

 次は、フリーマン。このフリーマンは、このゲームに限らず、昨季チームに加入以来ずっと輝いているのであるが、一番良いのは、油断の無いところだと思う。CFL上がりの苦労人らしいと言ってしまえば、それまでであるが、この油断の無さがフリーマンの真骨頂だと思う。パスカバーに長けているとか、タックルが強烈とか、リーダーシップがハンパ無いというような、目立つセールスポイントは無いけれど、この油断の無さが彼のプレイを支えていると思う。だから、常にプレイに絡むのである。だから、ブロックも機敏に外すのである。そうして、この勤勉性というのがMLBあるいはILBにとって最も重要な能力だったりする。

 以前にも書いたが、先代のブラケットに続き、このフリーマンと、これでコルツは、2代続けてMLBはドラフト外という事になる。そうして、私はますます「MLBにドラフト上位はいらない」論者になっていくのである。このポジションは、CBやDEなどとは違って、圧倒的な運動能力よりは、先に挙げた勤勉性が重要になってくるので、ドラフト上位はいらないのだと思う。また、サックやINTを数多く残せるようなポジションでも無いから、なまじドラフト上位権を使ってしまうとA.J.ホークのように苦しむ例も出てくる。ドラフト下位やドラフト外の勤勉性こそ求められるポジションなのだろう。その最大の成功例が、近年ではロンドン・フレッチャーであるのは言うまでもあるまい。まあ、もちろんレイ・ルイスやアーラッカーのようにドラフト上位で成功した例もあるけれど。

 以上、個人評はここまでにして、最後にチーム評。それも、このゲームではなく、今季前半戦のコルツを。

 ここまで7戦で5勝2敗。開幕前、私は「今季のコルツは前半戦のスケジュールが厳しいので、ここに敗戦、そしてケガ人続出となると、今季のコルツは5勝前後で終わってしまうのではないか。」というような事を書いたが、ここまで既に5勝なので、この予想はめでたく外れた。ケガ人には続出とまでは言わないが、アレンにウェインと代わりが無い選手のシーズンアウトなので、これはかなり痛い。

 それでも5勝2敗。リチャードソンの加入が大きいというのもあるが、それも差っ引いても、十分すぎる結果である。しかも、その5勝にはナイナーズ、シーホークス、ブロンコスといったスーパーボウル候補が含まれているのである。ぶっちゃけ(全盛期の木村拓哉風に)全敗だと思っていたのであるが、まさかの3戦3勝、それも運に恵まれて勝ったのではなく、内容的にも完全な勝利である。

 この結果だけ見れば、完全にスーパーボウル・コンテンダーであろう。ただ選手の顔ぶれを見ると、とてもそうには思えんのだよなあ。オールプロ級といったら、ギリギリ、それもかなりギリギリのマシスぐらいだし。プロボウル級もラックとウェイン、ギリギリでシェアラスとベシアぐらいである。あとは、みなアベレージ・プレイヤーばかりである。実際、個人成績欄には、コルツの選手の名は11.5サックのマシスを除いて全然無い。びっくりするぐらい無い。コルツファンでファンタジーフットボールに興じている人は、さぞかし泣き笑いであろう。

 でも5勝2敗。これがラックの功績なのか、パガーノの功績なのかは皆目不明であるが。また、この2年、パガーノ体制つうかラック体制というか、ポスト・マニング時代のこの2年、ここまで23試合(プレイオフは除く)で16勝7敗、しかも特筆すべき事は、ここまでただの一度も連敗は無いという事である。しかもその7つの敗戦後の相手には、ミネソタ(去年)やグリーンベイ、サンフランや今回のデンバーといった強豪が含まれているのである。それらを含めて7戦7勝である。ドラフトで全体一位になってしまったチームのその後の2年弱としては驚嘆すべき数字では無いだろうか。

 とはいえ、まだまだ不満もある。

 まずはディフェンスから。不満は無い。不満があるといった矢先に、「不満は無い」と言い切ってしまう私もどうかしているが、ディフェンスには実際不満は無い。後は、習熟度やパーソナル等々、ちょこちょこバージョンアップして行けば良いだけである。
 しかし、以前の記事にも書いたが1年強の短い期間でここまで変わってしまうとは、まことに恐れ入った。ダンジー時代の守備が悪かった訳では無いけれど、あの頃とは比較の対象にすらない。劇的な変容振りである。特に、ここぞという時3&アウトが獲れるというのは、コルツファンとして衝撃的ですらある。衝撃的は言いすぎだけど、ダンジー時代には無かったものである。カバー2とハイブリッドの大きな相違点であろう。

 この変容振りは、完全にパガーノの功績といってよいだろう。もしかしたら、他にキーパーソンがいるのかもしれんけど、とりあえず表面的にはパガーノの功績である。まさに安心の元ボルチモア守備コーチ・ブランドである。
 このパガーノに限らず、元ボルチモア守備コーチというのは大概成功している。というか、元ボルチモアという括りを外してみても、多くの守備コーチは大概移籍先で評判通り、あるいは期待通りの結果を出す。ライアン兄弟は言うまでも無く、ウェイド・フィリップスや、ピート・キャロルなど、守備コーチは大概、前チームと同じような結果を新チームでも出す。スパヌオーロのような微妙な結果も無くはないが、大概は成功する。

 一方で、攻撃コーチは、前チームと同じような結果を出す例はあまり無いように思われる。あくまで印象なので統計を取ったわけでは無いけれど、シャナハンもエルウェイ以後は寂しいものであるし、ノーブ・ターナーも成功とは言いがたい。そのほか、細かいところを挙げれば、いろいろいるだろうが、大物攻撃コーチが移籍して華々しい成果を挙げたという例はあまり無いように思う。

 その一方で、大物QBが移籍すると、マニングの例を出すまでも無く、古くはモンタナから、ブリーズ、ワーナー、ファーブに至るまで大概成功する、つうか失敗例を聞いた事が無い。ワーナーのジャイアンツは失敗か。一方で、大物WRや大物RBの移籍すると、オフェンス力が必ず向上するかというと、そうでもない。

 これらの事実を総合すると、つまりフットボールというスポーツに於けるオフェンスの中心はQBであり、OCを始めとする攻撃コーチ陣は、あくまでその補佐役に過ぎないという事になる。一方で、ディフェンスの中心、というかディフェンスを構築するのはDCを中心とした守備コーチ陣の仕事であり、選手はその実行者に過ぎないという事になる。縮めて言えば、オフェンスはQBであり、ディフェンスはスキームという事になろう。

 私はかつての記事で、ハイブリッド・ディフェンスはスキームであり、カバー2はタレントだと書いたが、カバー2の場合は先の命題に反する事になるが、言い訳がましいことを書けば、カバー2はタレントを得がたいスキームだという事である。

 カバー2スキームの理想は、殿堂入りクラスのフロントラインにセイフティみたいなバック7だろうが、そもそも殿堂入りクラスを4人揃える事自体がまず難事業であるし、バック7にしてもセイフティはともかくとして、ゾーンカバーの得意なLBやCBはあまりいない。LBは何と云ってもタックルであるし、CBは何と云ってもマンカバーだからだ。
 そういった意味で、人材を集めにくいスキームがカバー2であり、そういった意味でカバー2はタレントだと述べた訳である。

 言い訳はそれくらいにして、話を戻すと、「オフェンスはQB、ディフェンスはスキーム」という意味では、「優秀なQBにディフェンス畑のHC」というのが、王道とは言わないが、エリートチームへの近道なのかもしれない。マニングとダンジー、ベリチックとブレイディ、エイクマンとジミー・ジョンソン皆然りである。まあ、ウォルシュとモンタナみたいな例もあるにはあるが。ラックとパガーノも彼等に続いて欲しいものである。あと、マニングとジョン・フォックスも。また、昨今流行りの元QBヘッドコーチには、この説を覆してもらいたいものである。

 コルツのディフェンス話から、思わぬ一般論に飛び火したが、ここでコルツへの不満に話を戻す。

 次はオフェンスである。こちらは、ディフェンスと違って不満は多い。このサイトでは珍しい事であるが箇条書きにする。

 1.OLの熟成
 これは昨季から散々言ってきた事であるが、これは今のコルツに対する私の最大の不満である。昨季と違って、ようやくメンツは固定されてきたようなので、これからはバックス陣も含めて、ランパスともにコンビネーションを磨きに磨いて欲しい。同じスタンフォード流のランアタックを指向しているナイナーズに比べると雲泥の差である。ナイナーズのOLがいかにも阿吽の呼吸で動いているのに対し、コルツのOLはそれぞれが当惑しつつ動いている感じである。OLが一体化すればリチャードソンのランも爆発し、ラックのランも減る筈だ。

 2.エースレシーバー
 3.第2レシーバー
 今までは2番のみであったが、ウェインのシーズンアウト&引退危機により3番の問題も表面化。つうか、スロットらしいスロットもいないので、WRは危機的状況と言えなくも無い。
 とはいえ、ここで云うエースや第2、スロットというのは、古典的な、あるいはマニング的ポリアン的な意味でのWR区分なので、グリグソンはそのように考えていないのかもしれない。WRなんていうのはディープスロットを2枚3枚用意しておけばそれで十分、中短距離はTEとRB、それにラックのスクランブルに任せて置けばよいと考えているのかもしれない。この辺は、WRに対する考え方、フィロソフィーの違いなのかもしれない。イメージとしてはPITやBALのようなWR陣か。でもハイネス・ウォードやボルディンみたいなのは必須だと思うんだけどなあ。この辺は、今後のコルツの動向を見守りたい。

 4.ドウェイン・アレン
 まあこれは、来季になれば自動的に解決する問題なので、上記3つと違って、そんなに深刻に捉える必要もないが、今後も怪我の不安はあるので、似たようなタイプをもう一人用意しておくべきかもしれない。それくらい、只今のオフェンスでアレン、つうかアレンのポジションの重要度は高い。そういった意味ではラックの次に重要なオフェンスプレイヤーかもしれない。ここまでの戦いに於いても、どんだけ「アレンがいればな〜。」と思った事か。来ドラフトの2巡で指名しておくか。

 以上が、オフェンス陣の不満になる訳であるが、よく考えたらラックとリチャードソン以外全部不満だったりする。あとまあ、FB南下もこっそりグレードアップしたかったりする。ストリートに面白いのは転がっていないか。
 
 以上全ての課題が、当たり前であるがコルツのオフェンスは止まらなくなる。ランオフェンスの力がある分、今のブロンコス以上になろう。さすれば、自然にスーパーボウルである。

 まあ、そんな先の事はともかくとして、とりあえず今季のコルツの今後であるが、当然ちゃあ当然であるが、プレイオフレースはかなり有利な位置にいるのには違いない。何と云っても、後半は前半に比べ、スケジュールがかなり楽になるのが大きい。最も強敵であろうKCも第16週なので、どちらかが消化試合になっている可能性が高い。他はシンシイ以外は何とかなりそうなチームばかりであるし、そのシンシィも、何となくではあるが、今のコルツは相性が良さそうなチームである。地区内5戦がキーとなろうが、ぶっちゃけ現時点で他の3チームとは勢い的にも勝ち星的にも大きく差が付いちゃっているので、3勝2敗で十分プレイオフ当確だと思う。ブラウンズさん、ごめんなさい、そのドラフト1巡は多分20位代後半です。ほとんど2巡みたいなもんです。

 唯一の不安はウェイン離脱によるオフェンスの機能不全であろうが、こればっかりはやってみないと分からないので、しばらく様子をみてみよう。

                        楽天イーグルス初優勝の瞬間に、ファンじゃないけど。 2013/11/3(日)

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