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<1/………/11/12/13/14/15/16/17/18/19>

A.Luck
ガニマタ。
 ルーキーイヤーから「書こう書こう。」と思っていて、「よし書くか。」と思った矢先に、まさかまさかの電撃引退。史上初、「現コルツ」に掲載されることもないまま「元コルツ」で選手紹介と相成りました。しかも、それがアンドリュー・ラックとは。トホホ。
 本来なら、順当に「俺ホール・オブ・フェイム」入りの筈だったのに、まあさすがにこういう結果だと、そういう訳にもいかず、普通にワン・オブ・コルツという事で、「元コルツ」枠です。

 2019年8月24日に引退表明。その理由はというと、「ここ4年間の、ケガ、リハビリ、ケガ、リハビリ、ケガ、リハビリ、の生活にほとほと疲れてしまった。もうフットボールから離れたい。」である。本人のインタビューちゅうものは、そっくりそのまま鵜呑みには出来ないものだろうけれども、まあまあ、これが大きな要因のひとつではあろう。

 ケガ・リハビリ・ケガ・リハビリの連続で気持ちが切れてしまったという訳であるが、その点について、「この根性無し!!!。」とか「金返せ。」とか、私は言うつもりはない。本人の決断を静かに尊重したいと思う。

 今季(2019シーズン)のキャンプ段階で取り沙汰されていたケガがどの程度のものかは皆目分からない。IR入り級のものだったのか、だましだましプレイできるものだったのか、それは分からない。しかし、それが最終的な引き金となって、この電撃引退表明となったのであろう。

 まあとはいえ、深刻なケガによる引退というよりは、精神的な疲労からの引退という感じなので、来年再来年あたりひょっこり現役復帰するかもしれない。しないかもしれない。あるいは、他チームで現役復帰するかもしれない。それがテキサンズで、「やっぱ、地元っていっすよね〜。」とか言ったら、全コルツファンの総力を挙げて、全力で罵倒しよう。

 で、結局、ラックの最終成績、とりあえずの最終成績はというと、7シーズン中4回プレイオフ出場、カンファレンスファイナル1度進出という結果である。スーパーボウル出場、MVP、新人王、オールプロ・ファーストチーム等は無し。

 まあ、微妙な数字ではある。十分合格点とも云えるし、ドラフト時の期待を考慮したら、「バストだった。」という説もあろう。わたくし個人的には、なんとも評価しがたい。4度のプレイオフ出場時は十分楽しませてもらったし、件のKC戦では10回ぐらいテレビの前でガッツポーズもした。ルーキーイヤーのパッカーズ戦やライオンズ戦の逆転劇も忘れがたい。昨季の12月背水の陣も楽しかった。
 一方で、ドラフト時の「スーパーボウル、2,3度頂き。」の気持ちは満たされないままでいる。「バストだ。」という評価に反論しがたいものもある。まあ、これは私的には永遠に判定不能かなあ〜。

 しかし、私の見解はともかくとして、ここで仮にラックをバスト判定してしまうと、2012ドラフトは大変な事になってしまう。1位から3位までが豪快にバスト、4位のマット・カリルをどう見るかはともかくとして、このカリルまでバスト判定してしまうと、5位のブラックモンもバストなので、史上稀にみる不作イヤーという事になってしまう。
 6位以下も結構微妙で、9位のキークリーでようやく当たりである。しかも、上位指名のほとんどの選手がオリジナルのチームにもういね〜〜。

 また、QBに限ってみても、1巡4名が総崩れで、当たりはようやく3巡75位のラッセル・ウィルソンであり、同じく3巡88位のニック・フォールズが微妙に成功、4巡102位のカーク・カズンズが、まあまあスチールといってよい成績である。
 まあ、QBなんていうのは、例年そんなもんではあるけれど。しっかし、難しいなあ〜〜、ドラフトって。ここ30年、つうかNFL史上最硬最厚の鉄板と云われた(そこまでは云ってない。)ラックがこの結果だもんな〜。やっぱ、1巡1コより7巡32コの方が価値があるのか。

 さて、ラックのキャリアを振り返ってみると、その最大の不幸は、まあやはり、そのルーキーイヤー、つうかルーキー契約時のHCが馬鹿のパガーノだったという事に尽きるであろう(初年度は、エイリアンズだという説もあるが、)。

 パガーノの馬鹿がまともなゲームプランも無しにゲームに臨み、結果前半大量リードを許し、それを負けず嫌いのラックが無理矢理逆転していたというのが、まあ所謂「逆転のラック」の真相あるいは正体であったろう。

 また、ラックの初年度に、私はラックへのお願いというか希望として(まあ、私の声はまず絶対届かんけど、)、「OLの調教」と、あとこれは当時書いたかどうか忘れてしまったけれども、「ペイトン・マニングの被サックの上手さの習得」を挙げた。
 こんなのも、まともなOLのコーチングを知らないパガーノではてんで話にならず、結果このざまである。ラックの最初のケガは、確か「内臓破損」だったと思うけれども、これもいまから思えば非常に暗示的ではある。

 ラックの初年度のヘッドコーチがパガーノでさえなければ、例えばエイリアンズをそのままヘッドコーチに据えていたら、あるいはこのフランク・ライクが7年前にタイムスリップしてヘッドコーチであったら、また彼等でなくとも、平均的なヘッドコーチであったら、それこそラック2,3年目でのスーパー制覇も十分有り得たと思う。
 そんな事をつらつら考えると、「上位でQBを指名した時のヘッドコーチは非常に重要である」という、この鉄則を今更ながら痛感する。いや、ホント痛い。ラックに対して、そうして全NFLファンに対して謝罪したいと思う。テキトーにHCを選んで、ホントすっませんでした。まあ、私に責任はないけどさ。

 また、これは馬鹿のパガーノには直接関係はないけれど、当時のNFLはアーロン・ロジャースが全盛で、「インターセプトされるくらいなら、サックされたほうがマシ。」というQB観が席巻していたという事も、ラックのキャリア、そうして無論ロジャース自身のキャリアも大きく傷つけたと思う。

 この考え方が席巻していたのにはいろいろ理由はあろうが、看過できない理由の一つとして、「QBレイティングに、被インターセプトは非常に影響を与えるのに対して、被サックはほとんど無い。」という点が挙げられると思う。被サックというのが、パスのマイナスヤードとして計上されるのか、ランのマイナスヤードとして計上されるのか、ちょっと私にはよく分からないのであるが、まあいずれにしても被インターセプトに比べれば、QBレイティングに与える影響は非常に少ない、つかゼロに等しい。いや、ゼロには等しくないか。

 ロジャースが当時物凄く評価されていたのは、いろいろ理由はあるだろうが、その一つとして、そのQBレイティングの高さ、マニングやブレイディに比しての高さが挙げられるだろう。当時、日本の解説者たちが自信満々にこの数値を挙げていたのを私は思い出す。

 あともう一つ、この数値を喜んだ人々に代理人もいるだろが、それはまた別の話である。

 私は、この考え方「インターセプトされるくらいなら、サックされたほうがマシ。」は、はっきり言って間違えていると思うし、ロジャースが台頭してきてからすでに10年ほど経過してきているけれども、NFL界全体としても、そういう結論に至ったと思う。

 QBレイティングに関しては、いずれ機会を見て考察してみたいと思っているが、被サック数がその数値にほとんど反映されないというのは大きな欠陥だと思う。
 この計算法だと、インターセプトの反対はタッチダウンみたいになっているが、確かにタッチダウンもインターセプトの反対概念であろうが、もうひとつ反対概念なのは被サックだと思う。

 QBというのは、「インターセプトかタッチダウンか」でも迷うだろうが、「サックかタッチダウンか」でも同様に迷う。ところが、インターセプトの方がQBレイティングに大きく反映されるのに対し、サックの方はほとんど反映されない。これはおかしなことだと思うし、賢い代理人は目を付けるであろう。

 つか、被インターセプトや被サックの反対概念はタッチダウンつうよりは、むしろパスコンプリートだと思う。タッチダウン数というのは、どっちかというとレシーバー陣の力量に左右されるので、あまりQBの力量とは関係ないと思う。少なくとも、大きく依存していない。また、優秀なパワーバックがいれば、ゴール前ではランでタッチダウンを奪ってしまう。タッチダウン数というのは、ピッチャーの防御率と同じで、勿論それはひとつの大きな目安ではあるけれども、一般に過大評価されている数値だと思う。
 QBで最も大事な数値は、野球のピッチャーと同じで、やっぱり勝ち星だと思う。だからこそ、高い給料を支払う訳だし。それぞれのゲームに対して、最も影響を与えるポジション、ほとんど独善的に影響を与えるポジションという意味でも同じい。

 って、話が逸れた。まあ、「インターセプトされるくらいなら、サックされたほうがマシ。」という考え方がリーグに蔓延していなければ、ラックのケガが防げたかというと、それはまた別問題かもしれないが、一因にはなっていたと思う。

 では、アンドリュー・ラックよ。ありがとう、さようなら。そうして、早く帰ってこーい。

 あと最後にひとつ、これは本来、ラック引退前に「選手紹介」の記事で、最後の一文に使おうと思っていたのであるが、このままお蔵入りさせてしまうのも何なので、ここで使ってしまおう。

 ラックよ、とりあえずヒゲ剃ったら。

                        2019/9/4(水)
M.Hasselbeck
ノックの後継者に
なりたかったッス。
 2013年の3月に2年契約でコルツ入り。2年のバックアップを全うし、2015年2月、泣きのもう一年(いや別に、泣いちゃいねーけど。)で、2015シーズンもラックのバックアップを務める予定である。

 はっきり言って、NFLの現役QBの中ではトップ15には入る実力の持ち主であろう。とりわけ、WCOというスキームに限定すれば、トップ5といっても良いくらいの技量の持ち主かと思われる。

 それはつまり、どういう事かというと、現状、年齢的なものを全く考慮しなければ、現在でもNFLの半分くらいのチームだったら、スターターは十分務められる実力の持ち主という事である。ぶっちゃけ、フィッツパトリックにスターターを与えるくらいだったら、ハッセルベックに与えた方がはるかにマシであろう。

 勿論、調べることは出来ないので分からないけれど、今オフはともかく、2013年3月の段階であれば、スターターのオファーもあったと思う。
 実際、2011シーズンはタイタンズのスターターとして9勝7敗の成績を残している。QBというポジションは、年齢的な衰えが他のポジションに比べはるかに低いから、チーム状態にもよるが、2013年の段階でも似たような成績は残せたであろう。

 まあ勿論、30代後半の選手にスターターを与えてどーするという議論はあろうが、それはまた別の話である。もしかしたら、スターターとしてのオファーも無かったかもしれない。

 それはともかくとして、そのような十分スターターが務められる技量に持ち主のQBが何故にバックアップQBを受け入れたのかといえば、それはつまり、「コイツ、コーチの座、狙ってます。」という事であろう。

 実際問題、将来的にコーチ業を見据えている者にとって、バックアップQBほどコーチ修行に最適の場は無いと思う。ヘッドコーチが、オフェンシブコーディネーターが、クォーターバックが、局面局面で、何を感じ、何を考え、どう判断したのか、これほどはっきり分かる場所は他にない。しかも、自身はバックアップQBという、勝敗に直結しない、勝敗の責を問われない、謂わば第三者的な立場にいる。ひとりのチームメイトとして第三者的というのはどうかという説もあろうが、HCやOC、QBの判断や言動を最も客観的に見れる立場いる事は間違いない。

 キュービアックやショーン・ペイトン、ジェイソン・ギャレット等々、バックアップQB上がりのHCが増えているのは決して偶然ではないと思う。

 しかしながら、ハッセルベックがコルツのバックアップQBを引き受けた理由はもうひとつあると思う。それは、無論、アンドリュー・ラックである。このン年に一人と謂われる逸材がフィールド内で、あるいはフィールド外で、何を感じ、何を考え、どう判断してきたのか、将来的なコーチ業を抜きにしても、同じゲームをしてきたプレイヤーとして、同じポジションを務めてきたQBとして、純粋に知りたいという気持ちがあったのだと思う。そうして、それはやっぱり本物で、泣きの契約延長につながったのだと思う。

 実際、どこぞのチームでスターターを務めて、つまらんケガをして治療費を失うくらいだったら、ラックのバックアップをしていた方がはるかに安全だし楽しいだろう。そうして有意義だろう。しかも給料は2年7.25ミリオン。2度目は1年3ミリオン。フットボール好きにとっちゃあ、ある意味最高の仕事である。

 つか、代わって欲しい。1年300円でいいから。その代り、ゲームも練習もしないけど。まあ実際、コルツ、あるいはブロンコスでも良いけど、1シーズン丸々サイドラインにいられてQBミーティング等にも参加できる権利、つまりゲームにも練習にも参加しないバックアップQB(?)になれる権利みたいのがオークションにかけられたら、それこそ億単位の金が動くだろうなあ(億は大袈裟か。)

 また、そういう、純然たるラックへの知的好奇心以外にも、ラックとのコネがあれば、いろいろと旨い汁が吸えそうだという計算もあるだろう。CMの端役とかな。嫁さんの雑貨屋の開業資金ぐらいにはなる(未確定情報なので、信じないよーに。)。
 ラックの車の運転手を務めて、養毛剤の一つも挙げときゃ、人の良さそうなラックはいくらでも騙せそうだし。もっとも、ハッセルベックからもらった養毛剤なんて、即ゴミ箱行きだけどな。

 まあ、その手の邪心はともかく、このラックのバックアップQBという座に、ハッセルベックはかなり満足していると思う。コーチ修行、ラックへの好奇心、そうして旨い汁。こんなおいしい仕事、なかなか他にない。

 フルネームはMatthew Michael Hasselbeck。ちなみに、父親ドンもTEとしてNFLプレイヤーであったらしい。つか、あった。弟ティムは知る人ぞ知る、って感じかな。

                           2015/6/5(金)

 上の記事で、「ハゲテルベック、コーチになる気マンマン。」みたいな事を書いたが、豈図らんや(でもないか、)、引退後(2015シーズン終了後)は、ESPNのアナリストに華麗なる転身。そう来たか。その需要があったか。

 ちなみに、つう訳でもないが、弟ティムの嫁、エリサベスはTVタレント。そのコネを使いやがったな。

 いやまあ、別に実力でアナリストの座を勝ち取っても良いんだけどさ。

 その番組「サンデーNFLカウントダウン」が、アメリカの放送界でどのような地位にあるか、極東の僻地に暮らす私には皆目分からんが、そのアナリストの座を2016年から現在まで、丸々4年間、守り続けている。

 現在の同僚アナリストは、ウィキ情報によると、テディ・ブルースキー、ランディ・モス、レックス・ライアン。これは、あくまで私の憶測であるが、モスとライアンがバカ担当、ブルースキーとハゲテルベックがマジメ担当なのであろう。やっぱ、ハゲは利口っぽく見えるしな。ノックみたいな例外もあるけど。

 ちなみに、この「サンデーNFLカウントダウン」の過去のアナリスト、当然といえば当然であるが、結構そうそうたるメンバー。殿堂入りがゴロゴロいる。チームにしたら、かなり強そう。

                          2020/4/15(水)
P.Rivers
キレてなんぼ。
 同時期(2020オフ)にコルツ入りしたバックナーと違って、チャージャーズ退団時から、人間関係等を理由にコルツ入りが噂、濃厚だった選手なので、コルツ入りが決まっても、私には驚きや喜びは無かった。「おっ、来たか。」みたいな感じである。

 ちなみに、コルツとチャージャーズは昔から友好球団で、人材交流は多い。そのほか、友好球団としては、イーグルスがあったけれども、最近は音沙汰がない。ポリアン関係のコネだったのかもしれない。
 もっとも、現GMのバラードは元KCなので、アンディ・リード経由のコルツ入りだったのかもしれない。

 閑話休題。リバースに話を戻すと、冒頭に述べたような経緯から、私はリバースにあんまり期待していないように思われるかもしれないが、そんな事は全然ありません。期待しています。現状では、バラードは、ベストとまではいかないにしても、ベターな判断をしたと思う。

 一昔前、10年くらい前の私だったら、「フランチャイズQBはドラフト上位を使えや。13位でQB獲って来んかい、コラァ。」と毒づいていたかもしれないが、どこかで書いたように、最近、ここ数年前から、QBはベテランFAの方がリーズナブルかなと私は思うようになってきた。ここで使った「リーズナブル」というのは、英語的な意味の「リーズナブル」ではなく、専ら日本語的な意味での「リーズナブル」である。「お買い得」といった感じかな。

 もちろん、フランチャイズQBはドラフト上位指名選手を使うのが、現時点でもベストだし、常道だと私も思っている。実際過去10年、あるいは20年くらいのスーパーボウル出場&制覇チームのQBは、やっぱりドラフト上位指名選手が多くを占める。
 
 FA組のスーパーボウル出場&制覇QBというと、リバースの先輩、ブリーズや、トレント・デルファー、ブラッド・ジョンソン、カート・ワーナーなどがいて、最大の成功例は、これはコルツファンには悔しい限りであろうが、ペイトン・マニングのデンバーであろう。
 またドラフト下位組のQBとしてはハッセルベックがいて、ファーブの2巡33位、ラッセル・ウィルソンの3巡75位を上位と見るか下位と見るかは微妙ではあろう。あと、ブレイディ、これは特殊な例外であろう。

 という訳で、ドラフト上位指名QBでなければ、スーパーボウル出場&制覇は出来ないという訳では、必ずしもない。もっとも、ここで実例を挙げたQBのチームは、いずれもディフェンスが売り、中には歴史的なディフェンスチームもあるので、ある程度のディフェンス力は必須という事にはなろう。まあ、アリゾナとか多少の例外はあるが。

 しかしながら、そういう消極的、というか消去法的な理由で、私はベテランFAQBを推す訳ではない。理由は二つある。

 一つ目は、一昔前と違って、選手寿命が延びた事。最近は、フットボールに限らず、あらゆるスポーツで、トレーニング方法やコンディショニング方法が進歩して、かつてと違って、40才過ぎのスポーツマンがザラにいる。
 
 なかでも、クォーターバックというのは、ある意味、キッカーやパンター以上に、あるいは他のスポーツを含めても、相当上位に位置するであろう、年齢的な衰えの少ない、あるいは、それの数字に表れにくいポジションである。
 考えてみれば、純運動的には、50ヤードほどフットボールを投げて、10ヤード前後走るだけのポジションである。それも2,3時間で50回程度である。運動量的には50代でも十分可能であろう。

 実際、過去の、それこそトレーニング方法やコンディショニング方法が進歩していない時代から数えても、体力的な衰えを理由に引退したQBは、ほとんどいなかったと思う。その多くは怪我が理由の引退であり、残りはチーム事情とか本人のヤル気といった理由であろう。

 今回のリバースも、ケガを抱えているという情報は無いので、十分やれると思う。

 話はちょいと脱線するが、肉体的な衰えという点では、スポーツマンに限らず、最近は、普通の人も、かつてより衰えにくくなっていると思う。
 以前、私は「太陽にほえろ」をCSかなんかで見ていて、ボスの設定年齢および石原裕次郎の実年齢が、自分より若い事を知って、慌てて、ぶっといネクタイと金のカフスボタンを買いに走ったことがある。
 また、「サザエさん」の波平の設定年齢は54歳(ウィキ情報)である。世の54歳ども、油断してんなよ。
 また、「生きる」の志村喬は47歳である。こわっ。

 また、最近の老人は、これはあくまで私の印象で、統計を取ったわけではないけれど、一昔前に比べて、「差し歯」はともかく、「総入れ歯」は減ったと思う。大丈夫か、ポリデント。

 事程左様に、医学的な理由からも、選手寿命は延びていると思われるので、とりわけ年齢的な衰えの出にくいQBをベテランFAで賄うのは理にかなっている、所謂「リーズナブル」であると思われる。

 そうして、二つ目、こちらこそ一つ目より重要な理由なのであるが、それは「ルーキーQBの2度目の契約、すなわちルーキー契約の次の契約が、サラリーキャップ的にあまりにキツイ。」である。

 これは、実例を挙げると分かり易いが、例えばアーロン・ロジャースである。2度目の大型契約時以降、自身がどんなに素晴らしい成績を残そうとも、チームはスーパーボウルに辿り着けない。そうして、毎年のように、優秀なチームメイトがパッカーズから去っていく。

 もっとも、厳密に云うと、ロジャースが優勝したのは、ルーキー契約をリストラしての契約時なので、ルーキー契約時というか、1.5回目の契約時にスーパーボウル制覇したという事になる。

 それはともかく、これは、アーロン・ロジャースに限らず、皆同様で、ルーキー契約時にスーパーボウル出場&制覇を成し遂げて、それっきりというQBは非常に多い。イーライ・マニングやロスリスバーガーである。って、「非常に多い」と云いながら、二人しか挙げていないけれど。

 また、これは一巡上位指名QBではないけれど、ラッセル・ウィルソンも同様の憂き目にあっている。

 また、今後は、ジャレッド・ゴフやカーソン・ウェンツ、パトリック・マホームズが同じ苦しみを味わうであろう。

 もっとも、2度目の契約時でスーパーボウル出場&制覇をしているQBもいないではない。
 例えば、キャム・ニュートンは二度目の契約時にスーパーボウル出場しているが、それは二度目の契約の1年目である。この時点では、キャップヒットはギリギリ重くない。

 また、アレックス・スミスも例の6年契約の後の2度目の契約時にスーパーボウルに出場はしている。ただし、出番は無く、しかも、この2度目の契約をどう見るかは、意見の分かれるところであろう。
 
 はっきり大型の2度目の契約時&ビッグ・キャップヒット時にスーパーボウルに出場しているQBとしては、マット・ライアンであるが、彼の場合は、2度目の契約時の初期、チームが大きく負けて、ドラフト上位指名権を獲得できたからである。

 しかし、これは普通は難しい。優秀なQBがいると、そのQBがケガでもしない限り、大概勝ち越してしまうからである。しかしながら、プレイオフを勝ち上がる戦力は無く、一方でドラフト上位指名権もない。ここ10年くらいのロジャースのパッカーズが良い、つうか悪い例であろう。

 ちなみに、我らがペイトン・マニングの2006と2009は、これは、やっぱり特殊な事例で、当時のマニングのキャップヒットがどういう状況下は調べられないけれども、キツかったのは確かで、それでも優勝&出場できたというのは、当時のコルツのドラフト指名選手が、フリーニー以下というかダラス・クラーク以下というか、当たりまくったというのが大きな要因であろう。
 あとまあ、カバー2というのが、あまりお金のかからないシステムだったというのも大きいだろう。あと、ダンジーも「欲しがりません、勝つまでは。」っていうタイプだったし。

 という訳で、いろんな事例を挙げてみたけれど、これらは、すなわちサラリーキャップという制度が健全に機能している証なのであるから、NFLファン的には歓迎すべき事態であろうが、当事者的にはやっぱりキツイ。

 そこで、ベテランFAQB(「フルアーマー・クォーターバック」という意味ではない。念のため。)である。彼等も、キャップヒット的には重いには変わらないけれど、所謂上位指名のフランチャイズQBと違って、色々融通が利く。今回のリバースの1年2500万ドルの契約なんていうのは、その最たる事例である。上位指名のフランチャイズQBと違って、雁字搦めにはならない。卍固めにはなる。

 まあ、勿論、先にも書いたように、フランチャイズQBはドラフト上位指名選手を使うのが、フットボール的にも経営的にも、ベストだし、常道だと思うけれども、その考え方に固執する必要はないと思う。我らがアンドリュー・ラックをはじめ、上位指名QBの失敗例の方が数多いのだから。

 と、現代QB論を長々と書いてきてしまったけれども、本題のリバースである。

 今更、説明不要であろうが、ここ10年というか、ここ20年を代表するクォーターバックのひとりであり、殿堂入りも、まず間違いないであろう。

 QBとしての特徴としては、そのキレっぷりは無論の事、なんといっても「インターセプトの少なさ」である。その「インターセプトの少なさ」というのは、フットボール哲学的あるいは性格的に少ないのではなく、単純に技術的に少ないのである。

 リバースの投げるボールというのは、ショートはともかく、ミドルやディープは、その多くがロブボール、すなわち山なりのボールなので、単純にCBがインターセプトしづらいのである。
 実際、ロブボールをピンポイントで落とす技術は天下一品である。私が過去15年ほどNFLを見てきた中でも、間違いなくナンバー1だと思う。対抗馬を挙げるとすれば、それこそペイトン・マニングぐらいあろう。あと、強いて挙げるとするならば、アンドリュー・ラックか(悲しい)。

 この技術ゆえ、「マーティ・ショッテンハイマー理想のQB」であるとか「バーニー・コーザーの再来」だとか云われていた訳である。

 したがって、長身レシーバーとは非常に相性が良く、私も本意ではないが、今ドラフトでは、長身レシーバーを、選りに選ってピックアップしている次第である。長身絶対主義である。

 この技術が年齢的に衰えているとは、ちょっと考えづらいので、コルツファンは、このリバースのロブボールを、今季は是非とも堪能して頂きたい。って、俺はリバースの代理人かっつの。

 ちなみに、今、これを書いていて、ちょいと思ったが、過去15年間で、レギュラーシーズン、プレイオフも含めて、コルツと最も対戦したクォーターバックは、このリバースかもしれない。ブレイディとどっこいどっこいか、もしかしたら上かもしれない。調べていないので、正確な数は分からないけれど。いずれにしても、この二人がツートップである事は間違いあるまい。つか、ブレイディ、獲ってこーい。おっと、コルツファンにあるまじき発言をしてしもうた。

 また、リバースは、コルツというか、マニング家とは入団時の因縁がある。ラックの時も同様の事を思ったが、因果は巡るのお、不思議と。

 フルネームはPhilip Michael Rivers。期待してます。

                            2020/4/15(水)

 前回の記事で、書き忘れた事をちょいと追加します。

 リバースのキャリアで、特筆すべきって事でもないけれど、最近のファンが不思議に思われるだろう事は、リバースが、そのキャリアの当初の2年間は丸々ベンチにいたという点であろう。

 昨今の上位指名QBの多くが開幕戦先発当たり前、謂わばデフォルトみたいになっているのを見慣れたファンの目からすれば、やや奇異に映るかもしれない。

 同じく、上位、つうか1巡24位指名されながら、ファーブのわがままで丸々3年冷や飯を食わされた選手がアーロン・ロジャースである。

 これら、リバースの2年間やロジャースの3年間は長すぎるかもしれないが、私がNFLを見始めた当初は、「新人QBは1年間くらいベンチに置いて、NFLを勉強させるべき。」みたいな考え方が支配的、とまでは云わないけれど、今とは比べ物にならないくらい信奉されていた。

 リバースと同期のイーライは開幕10試合目で初先発、同じくロスリスバーガーは開幕3試合目で初先発であるが、こちらは開幕スターターだったマドックスの負傷による繰り上げ先発の為、当初はサイドラインが予定されていた事になる。
 ロジャースと同期のアレックス・スミスは開幕5戦目(インディ戦!!)で初先発も、第7戦で先発を外され、先発定着は第12戦目からである。

 ペイトン・マニングみたいな特殊な例外もいるにはいるけれど、当時はだいたいみんなそんな感じで、上位指名QBの開幕戦先発デフォルトっていうのはマット・ライアンあたりからだったと思う。

 まあ、QBどころか、フットボール経験もない私には、サイドラインで新人QBが如何なる勉強をするのか、皆目分からないが、少なくとも、リバースやロジャースを見る限り、入団からしばらくサイドラインにいても、通算成績的にはともかく、キャリアが大きく傷つく事はない事が分かる。ロジャースの成績も勿論素晴らしいが、リバースに至っては、その3年目の開幕戦から、14年間ずっと先発出場し続けている。

 昨今の上位指名QBの多くのように、開幕戦からスターターで起用されて、そこそこの成績を挙げながらも、ルーキー契約満了が近づくとともにサヨウナラよりは、はるかにマシでは無いだろうか。

 そこで特筆すべきなのは、パトリック・マホームズである。彼は最近のQBにしては珍しく、開幕戦先発では全然なく、1年目の最終第16戦でようやく初先発である。そうして、2年目からの大活躍、皆さん、嫌っていうほど、ご承知であろう。しかも、彼は、KCが結構無茶なトレードアップをして全体10位で獲得したQBなのである。そのQBを、事実上丸々1年間寝かせたというのは、KCあるいはアンディ・リードに何らかの考えがあったとみるべきではないだろうか。

 ラマ―・ジャクソンも、開幕戦先発では無かったけれど、彼の場合は全体32位なので、上位指名とはいえない。

 で、結局何が云いたかったのかというと、「ジョシュ・ローゼン、頑張れ。」という事である。チャンチャン。

                          2020/4/19(日)

 コルツ入りが強力に噂されていたマシュー・スタッフォードであるが、2021年1月30日、まさかのラムズ、つうかラムズのゴフとトレード。しかも、その内容は、

 スタッフォード⇔ゴフ+2021年3巡+2022年の1巡+2023年の1巡

という驚きのもの。デッドマネー云々という話はあるけれども、これ完全にライオンズウハウハでしょ。

 人によっては、っていうか私もその一人だけど、スタッフォードにドラフト権が付いていると勘違いしたらしいが、ドラフト権がくっついているのは、なんとゴフの方。「1巡二つ献上いたしますので、ゴフの野郎を引き取ってくだせえ。おでーかん様。」みたいなトレードである。「よかよか、好きに図らへ。」というのが、これに続くライオンズ様の台詞。

 このトレードは元々、ライオンズがスタッフォードを放出したい意向から始まった筈だけれども、ラムズがゴフを放出したい意向の方が、より強かったのね。ライオンズは、足元見られるどころか、有り余るお釣りが来たって感じであろう。不用品をヤフオクに出品したら、予想より3ケタ違った、みたいな感じ。むしろ、失敗したのかと訝しむほどの高額落札。

 私は、スタッフォードは3巡くらいならトレードしてもいいかなと考えていたぐらいなので、大甘もいいとこ。実際、コルツは、どれくらいを提示したのであろう。でも、この条件に勝つとしたら、バックナー様+1巡が必要になってしまう。こわっ。

 スタッフォードに1巡出すくらいなら、昔獲った篠塚ならぬ、去年獲ったイーソンで1,2年様子を見た方がマシだと思っていたぐらいなので、このトレードは、私的にはそんなにショックはない。いや、むしろ張り合わないで良かったって感じ。

 両者ともに全体1位のクォーターバックとはいえ、32歳のスタッフォードと26歳のゴフ、しかも曲がりなりにもスーパーボウル出場QBのゴフに、これだけの価値の違いがあるとは驚いた。地元出身のゴフは、かなり傷ついたと思う。あと、ライオンズ側も、条件が良すぎて、逆に怖いと思う。まあ、1巡二つっていう巨大な保険があるから、まっいっか。スタッフォードが、ヘルプしてくれるかもしれんしな。巨大過ぎる施しがあるかもしれん。かもしれん。

 でも、スタッフォードとラムズには相当なプレッシャーが掛かると思う。プレイオフ出る出ない程度の結果では、失敗となってしまい、スタッフォードのキャリアも終了であろう。最低でもカンファレンス決勝レベルは要求される。それくらい、1巡2つは重い。ひとつ間違えば、ラムズは5年は沈む。

 しかも、スタッフォードにしても、ぶっちゃけ実績はない。数年前、カルヴィン・ジョンソンやスー、フェアリーのいた頃のライオンズと今のラムズ、戦力的には同等、むしろ当時のライオンズの方が上かもしれない。HCのコールドウェルを差っ引ても、である。上記の結果を残すには、スタッフォードに、アーロン・ロジャースやマホームズ級の活躍が必要なのではないだろうか。

 一方、ライオンズはお気楽極楽。仮にゴフで失敗しても、1巡二つという巨大過ぎる保険がある。しかも、ラムズが失敗すれば、その保険額はさらに膨張する。

 でも、このトレードにはホントに驚いた。NFLのトレードは、NBAと違って、構造上、ショッキングなものは起きにくいのだけれど、今回のは、ほんとショッキング。
 この手の玉突き人事というのは、NBAでは日常茶飯事だけど、ついにNFL、それも禁断のQBで行われる時代に入ったか。私は、つい先日、NFLでは、選手よりトレードピックの方が価値が高いと書いたけれども、考え方を改める時期がいよいよ来たか。

 でも、アメリカ人って、ほんとトレード好きだよね。人のモノがすぐ欲しくなっちゃう。この欲張りさん。

 っと、スタッフォードのトレードを枕にしたけれども、そもそも、このスタッフォード・トレードの噂話の発端のひとつは、リヴァース引退である。だから、リヴァースの項目に書いてみた訳である。

 という訳で、コルトとしてのリヴァースは1年こっきりで終了である。今後は、元々内定していた地元アラバマの高校でのヘッドコーチ職に就くみたい。

 今季のコルツへのFA入団、シーズンでの先発QB全う、プレイオフ進出、1年限りでの退団、つか引退については、コルツファン的にはいろんな意見があろうが、私的には、そんなに不満はない。もちろん、大満足でもないけれど。なんつーか、今オフ楽天復帰の決まった田中将大に対するヤンキースファンの感情に近いかもしれん。全然違うかもしれんけど。

 引退の決断に関しては、外野がとやかく言う事では無いので、何も言うつもりはない。だた、マニングやラックと違って、開幕直前での事実上の退団あるいは引退ではなかったのは、非常に有り難い。シーズン終了直後に、スパッと決断してくれたことには、感謝したい。QB、選び放題じゃ〜。迷いに迷って、スカを引く可能性もなくはないが。

 さて、今後のリヴァースであるが、前述の通り、地元アラバマの高校フットボールのヘッドコーチに就任、つうか、かなりヤル気マンマンである。まあ、アメリカでのフットボール経験者、とりわけアラバマでのフットボール経験者にとっては、高校フットボールのヘッドコーチ職っていうのは、ある意味、NFLやカレッジのヘッドコーチよりの魅力的だから、さもありなんであろう。フットボール経験者にとっては、スーパーボウル以上の究極の目標かもしれん。日本の高校野球の監督みたいなもんであろう。

 でもって、リヴァースの指導力は、当然のことながら、まったく以って未知数なのであるが、現役時代のプレイっぷりから、気ままに予想すると、時代逆行パワハラチームになると見た。なんかこう、サイドラインでかなり五月蠅そう。私がQBだったら、「えっせなー、黙ってろ。」とか、心の中で思ってしまうであろう。

 そもそも、チーム入りを敬遠するかもしれん。子供も9人いるし、ママさんも戦々恐々で、案外リクルートに苦労するのではないか。元NFL、しかも殿堂入りプレイヤー(予定)なのに。

 まあ、監督やコーチになった途端、プレイヤー時代とはまるで逆のイメージになてしまう人もいるので、これは安易な予想なのかもしれん。
 有名なのは、川上哲治で、現役時代は個人プレーの権化みたいな選手だったのに、監督になった途端に「チームプレー、チームプレー」言い出す始末。
 また、広岡達朗も監督・コーチ時代は鬼軍曹、あるいは冷徹な高級官僚みたいなイメージだったけれども、現役時代は「お嬢さんスライディング」とか批判されたりしていた。まあ、隣の長嶋との対照みたいな側面も強かったのだろうけど。
 また、石井一久の、現役時代のノンポリの代表みたいなイメージを知る者にとっては、現在の政治家面は予想だにしえなかったであろう。

 あと、これはコーチじゃないけど、前田智徳が、予想外におしゃべりっつうのもある。

 でも、アメリカ人だと、そういう人はあまりいないかな。ドッグ・リヴァースやスティーブ・カーも現役時代のイメージそのままだし、エルウェイも、あんな感じちゃあ、あんな感じではある。日本と違って、サンプルが少ないつうのもあるが。ライクやキュービアックは、バックアップQBなので、現役時代のイメージはよく分からんし。

 日本も、数的には、当然現役時代のイメージそのままが多数派ではあろう。田淵の優柔不断な感じとか、金本のストイシズムとか、原の評価しにくい感じとか、落合の得体の知れなさとか、長嶋のカンピューター振りとか、多くは現役時代のイメージそのままである。星野みたいに、現役時代のイメージが、より凶悪化したみたいな最悪の事例もあるしね。

 という訳で、「リヴァースは、ママさんに手を出して、10人目の子供を作る。」に、ショートケーキ4個。

 まっ、それはともかく、たった1年のコルツ時代も含めて、長い現役生活、お疲れさまでした。今後のリヴァースの人生にエロ、もとい幸あれ。って、エロも幸も同じようなもんか。チャンチャン。

                   急須の蓋が割れた。2021/2/1(月)

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