2011年 Week5 |
10月9日 KC@IND 28−24 |
開幕前後、日本でのTV放送をチェックしたら、確かこのゲームは放送予定、つーか第7週ぐらいまでは放送される予定だった筈であるが、いきなり放送無し。別のカードに差し替えられとる。 まあ確かに、私もコルツのゲームなんか放送するよりバッファローやデトロイトのゲームを放送せいと書いたような記憶もあるが、無きゃあ無いで、やはり寂しい。コリンズのコルツなんか見たかねえが、ペインターのコルツは見たい。また次週のシンシィ戦なんかも結構期待していたカードなのであるが、これも無し。グレシャムについて書きたい事があったのであるが、別の機会に譲るとするか。 つう訳で、このゲームは実際の映像を見ずに、スタッツとハイライト映像と、リアルタイムで追っていたGAME CENTERの印象だけで記事を書きます。 ここ2試合、つうかPIT戦も入れれば、ここ3試合、コルツは惜しいゲームを失っているが、これは「みんなで頑張って、勝てそうな所まで持っていった。」と見るべきなのか、それとも「勝てそうなゲームを、工夫や努力の足りないばかりに、落とした。」と見るべきなのか、それは分らない。喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、いまいち態度が鮮明にならぬ。まあ、これは実際のゲームの映像を見ても、よくは分らないだろう。 GAME CENTERをリアルタイムで追っていた印象だけから判断すると、第2クォーター中盤、コルツ陣22ヤード3rd&1からパス失敗で3&アウトに終わりで、その返しのドライブでKCに初得点初タッチダウンを許したシーンと、前半残り1分から2つ目のタッチダウンを許したシーンが、モメンタム的に痛かったような気もするが、正解はよく分らない。 3rd&1からパス失敗のシーンでは、17−0でリードしていたのだから、ランをコールしてダラダラ攻めるべきだったのではないだろうか。それこそゾーンブロックとかを使って。まあ、実際の映像を見ていないので、断言は出来んが。 あと前半24点も取りながら、後半0点というのもよく分らぬ。アジャストされ過ぎてんのか。 そのほか、プレイヤー的に気になったのは、デロン・カーターの12回22ヤード平均1.8ヤードって。このカーターがブラウンより優遇されている理由がよく分らぬ。今更、ブリッツ・ピックなんか意味ねーだろ。アダイが次週出られるかは不明だが、仮に不出場になり、ブラウンの出場機会が機械的に増え、200ヤードとか走ったら、責任者、レポート提出な。 あと、このゲームではペインターの被サックが0。TBとKCのパスラッシュ能力に大きな差があるわけでもなく、しかもOLのメンツ的には低下していながら、被サックが0という事は、これはやはりホーム効果か。マニングがブース席から指示してんのか。 こんな事ぐらいしか、書きようが無い。 ただ、とりあえず云えるのは、コルツ&コルツファンにとって最良のシナリオであるところの、コルツが負けつつペインターがスタッツを稼ぐというミッションを、今回も、完璧に、完全無欠に遂行したという事である。これをコールドウェルが狙ってやっているのだとしたら、あやつは恐るべき剛の者であろう。 2011/10/11 |
10月9日 PHI@BUF 24−31 |
今季のサプライズチームと云えば、バッファローとデトロイトだそうであるが、バッファローはともかく、デトロイトはサプライズではないと思う。デトロイトがやるのは、正直、分かっていた。数年前のアリゾナ同様、5年くらい負け続けて、普通にドラフトしていれば、チームはタレント集団になり、勝手に強くなっていくものである。ドラフト制度というのは、元来そういうものだ。マット・ミレンが辞めて、3年くらいか、そういうことになるだろう。あとはもう、スタッフォードが怪我し無い事を願うばかりだ。あるプレビュー誌のライオンズのオフェンスの項目の第1行が、「スタッフォードは今年は怪我しないのか。」になっていたのには、笑った。 つう訳で、デトロイトは、今後10年はともかく、向こう5年くらいはプレイオフ・コンデンターであり続けられると思う。アリゾナに似ていると書いたが、アリゾナとの決定的な違いはQBが若いという点であろう。アリゾナもカート・ワーナーではなく、ライナートで勝てていたら、今とはまた違った位置にいたであろう。 一方で、クリーブランドやバッファローが、ここ10年近く負け続けているのは、結局のところ、ドラフトに失敗しているからである。 クリーブランドのここ数年の低迷の遠因は、2度の(2009、2011)のトレードダウンでスキルポジションがスカスカになってしまったことだと思う。かつて、ウィンスローやブレイロン・エドワーズ、ブレイディ・クインなどで痛い目に遭って、ビビッているというのもあるだろうが、上位指名権を持っているチームというのは、よほど特別な事情が無い限り、その指名権を行使すべきだろう。1巡上位と1巡下位+2巡下位ならば、1巡上位の方が価値は上である。チームを本当の意味で引っ張る力というのは、大概1巡上位指名選手にしかない。NFLで、向こう10年くらい力を発揮する選手なんていうのは、大学時代は大概無敵である。1巡上位のトレードダウンというのは、ドラフト時では得した感じもするだろうが、長い目で見れば、大概結局は損している。むしろ果敢にトレードアップした方が、結局は得していることが多い。少なくとも、その心意気は買えるであろう。 戦争のように、上限無く人員を導入できるならともかく、スポーツというのは、出場選手数は固定、ロースター数には上限があるのだから、あとはもう、その質を高めていくより法は無い。「質より量」という戦略は、戦争では至高の絶対的な戦略であるが、それはスポーツでは通用しない。デトロイトの曙光がスタッフォード指名から始まっているのは、誰の目にも明らかである。 一方、バッファローの失敗というのは、これはもう、ドラフト思想というよりは、根本的にロースター構成の考え方が間違っているとしか思えない。 全体8位でセイフティ(ダンテ・ウィットナー)を指名してみたり、RBを3年一度くらいの割合で指名してみたり、チームの核となるポジションであるQBやLTは指名しなかったり、もうひとつのチームの核であるDE・OLBはアーロン・メイビンを指名しているが、あっさり2年で放出してみたり、一体どういう考えでチーム作りをしているのか、首を捻らざる得ない。3年に一度指名しているRBの今季のスターターがストリートFA上がりのフレッド・ジャクソンなんていうのは、その象徴であろう。勿論、私はジャクソンを否定している訳ではない。ジャクソンのような優秀なRBをロースターに抱えながら、全体9位でスピラーを指名したことを非難しているのである。それは、ジャクソンにとっても、スピラーにとっても、ビルズにとっても、幸福な事ではないだろう。 また、昨ドラフトで全体3位で指名したマーセル・ダレアスも、私が見た数少ないアラバマ戦の印象からすると、圧倒的なタレントでゲームやスクリメージを支配する選手というよりは、あくまでスキームの中で生きるといった典型的なニック・セイバン上がりのプレイヤーである。全体3位の価値があるかというと、正直疑問である。使い方次第で、箸になったり棒になったりする選手だと思う。まあ、さすがに、箸にも棒にもならぬという事は無いだろうが。 以上、季節外れのドラフト話をしてしまったが、ここで私が言いたいのは、NFLにおいて、弱いチームが強くなる為には、結局のところ、ドラフトしかないという事である。 NFLに限らず、弱いチームが強くなる方法としては、おそらく次の三つが挙げられると思う。1)良く練習をする。2)斬新な戦術・戦略を開発する。3)良い選手を獲得する。一つ目から考察する。 1)良く練習をする。 良い練習には大きく分けて2種類ある。より長い練習とより効果的な練習の2つである。すなわち量と質である。 このうちの前者、「より長い練習」に関しては、アマチュアの初心者・中級者レベルならともかく、アマチュア・トップレベルやプロレベルでは、現実的には、なかなか厳しいだろう。というのもトップレベルのプレイヤーというのは、大概誰しも最低限の生活と余暇の時間を除けば、そのほとんどの時間を練習に費やしているからだ。体を動かさなくても、ビデオ学習や新しい技術の創造など、何らかの形で、練習をしているからである。練習時間で他と差を付けるというのは、なかなか困難であると思われる。1日8時間の練習を3倍にするというのは、イガラシ君と墨谷2中以外では不可能だろう。時間は平等なのである。「精神と時の部屋」でもあれば、また話は別であろうが。 時間という量で差が付かないとすれば、あとは質で差を付けるしかないであろうが、こちらも、アマチュア・トップやプロレベルでは現実的にはなかなか厳しいだろう。どんなに質の高い練習をしても、この高度情報化社会ではアッという間に他に広まってしまう。自分だけ特別な練習をするというのは、現実的には不可能だろう。それこそやっぱり「精神と時の部屋」が必要になってしまう。 2)斬新な戦術・戦略を開発する。 これは先に書いた「質の高い練習」と同様の理由で、なかなか難しいであろう。簡単に真似できない戦術・戦略など、そうは無いからである。また、これは上の「質の高い練習」にも同様の事が云えるのであるが、「斬新な戦術・戦略」や「質の高い練習」には、どうしても優秀なコーチが必要になってくる。そうした優秀なコーチというのは、それこそ優秀なプレイヤーより遥かに数が少ない。10年で1人とか2人とかいうレベルである。そのようなコーチを獲得できるなんていうのは、ほとんど僥倖である。努力でどうにかなるものではない。そういった意味では、コーチもドラフトやサラリーキャップの対象にすべきだという意見は尤も至極である。 3)良い選手を獲得する。 良い選手を獲得する方法は、大きく分けてドラフトとFAの二つになる。トレードもあるけれど、トレードの場合は理論上は等価交換なので、「他チームと差を付ける」、「弱いチームが強くなる」、にはならないので考察から外す。勿論、実際には効果的なトレードも沢山あるだろうが、これはどちらかというと、上の「斬新な戦術・戦略」に属する事なので、ここでは考察しない。単純な戦力アップという意味では、ドラフトとFAの二つになると思う。 このうちの後者、FAに関しては、そもそも弱いチームにわざわざ入りたがる有力プレイヤーなどいない。「子供の頃から大ファンだった。」とか「父親がそのチームで長らくプレイしていた。」とかいうような特別な理由でも無い限り、普通は弱いチームとは契約しない。むしろ逆に自軍の数少ないスタープレイヤーに逃げられるというのが、弱小にとってのFA制度というものである。弱いチームがより弱く、強いチームがより強くなる制度といってよい。 以上のような考察から、結局のところ、弱いチームが強くなる為の唯一の方法が、新人とはいえ有力プレーヤーと独占的に契約できるドラフト制度ということになる。というか、弱いチームを強くする為に考え出された制度がドラフトというべきであろう。この制度の無いヨーロッパのサッカーリーグや、カレッジフットボールや日本の実業団スポーツといったほとんどのアマチュアスポーツ等々では、弱いチームはより弱く、強いチームはより強くなってしまう。金持ちになればなる程、ギャンブルや商売がより有利になるのと同じ理屈である。その飽くなき競争原理こそスポーツの正しい姿だという見解もあるだろうが、スポーツ興行という観点から見れば、ドラフト制度は絶対的に正しい制度である。競争原理は必ず寡占に向かう。放っておけば、資本主義は最終的には必ず共産主義になる。それを避けるためには、我々が豊かに生きるためには、そこに何らかの政治的横槍を入れざる得ない。そういった意味では、ドラフトは独占禁止法的な制度と云える。 ただ、ここで注意しなければ、ドラフトというのはFAと違って、有力選手の多くを掻き集めるという事は出来ない。FAならば、トップ5の5名を全員入団させるということも可能であろうが、ドラフトの場合は、1人指名したら、とりあえず基本的には、NFLでは次の指名は、それから32人後、すなわち32人分力の落ちる選手という事になる。だからこそ、ドラフト担当者のフットボール観、フットボール・フィロソフィーというものが重要になるし、より鮮明になるのである。 それで、失敗し続けているチームの代表格が、私の見たところ、このバッファロー・ビルズなのである。スターターの多くがドラフト下巡指名とFA選手で占められているというのは、その典型的事象である。強いチームというのは、ライオンズが良い例であるが、ドラフト上位選手でスターターが占められるものである。 とまあ、その弱い筈のバッファローが勝ち続けているので、その秘密を探ろうと思って観戦したのが、このゲームなのである(ようやく、ゲームの話に入った。)。しかも、その相手は、ある意味、そのバッファローと対照的であり、またある意味相似的であるイーグルスである。格好と思った。 で、ゲームを見た率直な感想はというと、そんなに強いチームかなあというところである。一方で、フィラデルフィアの方は、勝敗数的には苦戦しているけれども、ちょっとしたきっかけで勝ち進む可能性も十分にあるように思う。 このゲームでも、またその他のゲームでも、勝敗を分けたのは結局はターンオーバーなので、バッファローは実力で勝ったとは言いにくいのではないだろうか。ターンオーバーというのは、確かに戦術・戦略的に奪う事も可能だろうが、とはいうものの、大部分はは運に左右されるプレイである。特にターンオーバーからどれだけリターンできるかなんていうのは、戦術・戦略的にはどうしようもない。完全に運である。まあ、その運が1年間持つという事も十分ありえるけれど。 では、気になった選手を1人2人。 まずは、シンデレラチームのシンデレラ、フィッツパトリックであるが、さすがにフランチャイズを背負って立つというレベルではない様な気がする。オフェンス・ディフェンスともにチームに恵まれて、初めて成立するレベルの選手だと思う。 そのクォーターバッキングは典型的な決め打ちプレイヤーで、スナップ前にここに投げると決めたら、カバーされていようがされまいが何が何でも投げるというタイプである。謂わばキップのいいQBである。典型的な決め打ちQBなので、ポケット内でマゴマゴする事も無く、被サックも少ない。 とはいうものの、敵ディフェンスからすれば決して攻略しにくいタイプではない。投げる所が決まっているという事は、あとはそこに対応すればよいだけの話である。では何故、そのフィッツパトリックが、ここまで良い成績を上げているのかといえば、それはひとえにプレイブックが良いからである。珍しいとも云える。素人目に見ても、珍しいプレイが多い。バッファローのオフェンスを上から見れば、なかなか楽しいのではないだろうか。そういった意味では、今時珍しい典型的なWCOとも云える。 ただ、このような典型的なWCOは、それだけ研究がしやすい、研究成果が出やすいとも云える。で、それに対抗する為にさらにプレイブックを厚くするという事になるのだろうが、この辺が典型的なWCOの弱点であるように思う。プレイブックのイタチごっこに陥りやすいのである。なんだかんだ言って、ナイナーズ以降、典型的なWCOがほとんど無いのは、これがその大きな要因だろう。プレイブックを改良するといっても、さすがにそれには限度があるからだ。際限なくプレイブックを作り続けるというのは、物理的には可能かもしれないが、精神的には難しいだろう。 NEがスーパーボウルを勝ちまくっていた頃は、純粋なWCOだったのが、後にランディ・モスを入団させ、WCOから距離をとるようになったのは、それが大きな要因のひとつだと思う。 WCOのもうひとつ大きな弱点としては、大量点がとりにくいというのもあると思う。 フットボールというスポーツは野球やバスケットボールと違って、接戦を確実に勝っていくという戦略がとりづらい、というか、とれない。なぜなら、フットボールというスポーツは、偶然的な要素、審判の笛や、時間の残り具合、ボールの転がり方等々、自分達の力ではどうにもならぬ要素が、他のスポーツに比べかなり多い。これが例えば野球だと、ピッチャーが絶対的なアドバンテージを持つスポーツなので、投手陣、特にリリーフ投手陣の力があれば、1点差2点差で勝つという戦略がとりやすい。 ところが上述した理由から、フットボールの場合、1タッチダウン差や1FG差で勝つという戦略は、どうしてもとりにくい。上述した偶然的な要素で簡単にひっくり返ってしまうからだ。 したがって、シーズン10勝以上を安定して挙げる為には、どうしても2タッチダウン差3タッチダウン差をつけられる、すなわち偶然的な要素があっても、尚且つ勝てるための爆発的な得点力が必要になってくる。NEがWCOを捨てモスに奔ったのは、ひとつにはこの理由もあろう。ただ、結果的には、それ以降、スーパーを獲れなくなったのは皮肉な話ではあるが。ただ、その方向性は間違っていないと思う。 WCOは抜きにしても、接戦で勝つ事を狙うチーム、例えばディフェンスで勝つ事を狙っているテネシーやシカゴが安定して勝てないのは、明らかにこれが理由だと思う。ツキのあるシーズンや、爆発的な得点力のあるプレイヤーの活躍したシーズン(クリス・ジョンソン、デビン・ヘスター)などは12勝13勝挙げながらも、それが無いと8勝前後で終わってしまう。フットボールの場合、毎シーズン10勝以上挙げる為には、どうしても一定以上の力のある得点力が必要になる。 なんか、今回は長いな。まだ書く事がある。ちょっと疲れてきたし、もうそろそろ第6週も始まるので、続きは次回。週をまたぐパターンは初めてか。まあ、コルツのゲームのTV放送もないので、来週もお付き合いください。 何か暑い。また夏が来るんじゃないだろうな。2011/10/17 第6週のゲームも終わってしまったが、第5週のゲームの話。 前回の最後の方の内容はつまり、ビルズとフィッツパトリックがやっているような、謂わば古典的WCOの弱点としては、どんどんプレイブックが厚くなる事、あるいは更新していかねばならぬ事、そうして大量点がとりにくい事の二つがあるという話だった。 で、今回そこから続けるのは、そういったWCO的オフェンスの対極にあるのが、マニング式オーディブルのオフェンスであるという話である。 「マニング式オーディブルのオフェンス」というのは、極端な話、ウラ・オモテ2種類のプレイがあれば足りてしまう。QBがプレスナップリードで敵ディフェンスの反対をやれば良いだけの話であるから、煎じ詰めれば、そういうことになる。 更に云えば、マニングクラスの守備リードになると、実質1種類でも何とかなってしまう。マニングの大好きなルートであり、スロット殺しのルートでもある、アンダーニースにTEを置き、その後ろをポストパターンでスロットに走らせて、空いている方に投げるだけという単純なプレイなどは、その一例だろう。こんな単純なものでも、QBがマニングクラスならば、敵が周到なディフェンスをしない限り、大概通用してしまう。 もちろん、実際には、時間や点差、フィールドポジション等々のシチュエーションがあるので、1種類2種類のプレイで事足りるという事は有り得ないだろうが、いずれにしても、コルツのプレイブックが他チームより、特にWCO系統のプレイブックより薄い事は間違いないと思う。もしかしたら、厚いかもしれんけど。少なくとも、私がコルツのゲームを見る限り、見た事あるプレイがほとんどである。見た事の無いプレイはほとんど無い。昨年のプレイオフでの最後のロールアウトなんかは、その数少ない事例かもしれん。 そもそも、そんなにプレイ数があったら、オーディブルできん。現場でのサインはそんなに複雑には出来ないからである。あんまり複雑にしたら、誰も覚えられないし、複雑な分だけ伝達ミスが増えるからである。原則的に、口頭で伝えられるハドルとは、その辺が決定的に違う。 総プレイ数が少ない分、敵には簡単に研究されるだろうが、現場で自由にプレイが変えられるので、それを研究されても恐れる事は無い。グー・チョキ・パーの三つしか無い事は分っていながら、必ず勝てる訳ではないジャンケンと理屈は同じである。そうしてジャンケンと同様、何を出すか、すなわちマニングのディフェンス・リードがどれだけ正確かに全てが懸かっているのが、すなわち「マニング式オーディブルのオフェンス」である。 ここで唐突にMADDEN話になって恐縮なのであるが、私もMADDENでどうしても勝ちたい時は、この単純な「マニング式オーディブルのオフェンス」で勝ちまくっていた。ウラ・オモテ二つのプレイを、敵ディフェンスの状態を見ながら、オーディブルで変えるだけという単純なオフェンスである。相手は、所詮コンピューターなので、これで大概勝てた。全くの初心者の時はなかなか難しいだろうが、初心者から中級者への移行期には、この作戦を多用していた。さすがに上級者になると、この方法では飽きてくるので、わざと滅多に使わないプレイを選択して、新発見を探していた。まあでも、面倒臭くなってくると、「マニング式オーディブルのオフェンス」を多用しちゃうのであるが。 閑話休題。この「マニング式オーディブルのオフェンス」が大量点を奪い易いというのは、これはコルツのゲームを見れば一目瞭然だろう。 とまあ、今のビルズのオフェンスがコルツのオフェンスと対極に位置するというのは、以上説明した通りなのであるが、昨今のNFLの全体的な流れとして、「マニング式オーディブルのオフェンス」の方が主流にはなってきていると思う。10年前大流行していたWCOが、上記のような理由から、壁にぶち当たった事に対する反省だろう。 もっとも、実際のところは、何事も中庸が肝心という訳でもないが、WCOとオーディブルの混合型、ブレイディやロジャースのやっているオフェンスの方が結果は残しているのであるが。 ただ、そういった意味では、今時珍しい純正WCOを採用しているビルズのオフェンスが今後どうなるのかは見物である。かつてのWCOのように行き詰ってしまうのか、ブレイディやロジャースのようにオーディブルを混ぜ込むのか、それとも全く画期的なWCOの発展形を提出するのか、興味津々ではある。まあブレイディ型が無難か。フィッツパトリックの力量から考えても。 ちなみに、このWCO型の強烈な発展形としてマイク・マーツ型オフェンスがある。これはWCOの弱点のひとつ「大量点が取りにくい」の解決を目指したものであるが、これは皆様ご存知の通り、オフェンスにもの凄くタレントを強いるという事で、なかなか実現の難しいオフェンスである。只今ジェイ・カトラーがこれに苦労しているが、今現在この「マイク・マーツ型オフェンス」が可能なチームとしては、私が思うにダラスしかないと思う。マーツはダラスに移籍した方が良いのじゃないだろうか。 なんだかビルズvsイーグルスの話は全然していないが、基本的に両チームの事は詳しくないので、個々のプレイやプレイヤーについてというよりは、戦略的なものに傾くのは許してちょ。 そこで、ひとつ、申し訳程度に1人の選手評をひとつ。それはセイフティのジャイラス・バードである。バードといえばルーキーイヤーに9Intsを挙げて名を馳せた選手であるが、このゲームではもの凄く目立っていた。年齢的な面を考慮すれば、もはやリーグ・ナンバー1セイフティといって良いのではないだろうか。リードやポラマルといって連中に加齢臭が漂い始めているだけに。 さて、選手評はそれくらいにして、次はイーグルスの話。 イーグルスといえば、シーズン前、派手な補強から「ドリームチーム」ともてはやされ、ここまでいまひとつの結果にみんな「それ見たことか。」と快哉を叫ばれているチームであるが、私がこのゲームを見た限り、ここまでちょろちょろとそのゲームを見た限り、そんなに悪くはないんじゃないかなあという印象である。 ここまで不調の要因のひとつと云われているSとLB陣も、私の見る限り、そこまで悪いというイメージではない。確かに、このゲームでもフレッド・ジャクソンにオープンをぶち割られ、その絶対的なスピード不足を露呈している。それが単純に足が遅いだけなのか、それとも判断が遅いからなのかはよく分らないが、この真の要因は、明らかに4メンラッシュを敷くDL陣にある。4メンラッシュを敷くDL陣のしわ寄せが全てSとLBに来ているのだ。 このフォーメンラッシュ、両DEを8テクニックの更に外側、9テクニックに置く事から、ワイド9とか謂われて、マスコミの格好の材料になっているが、1コルツファンとしてはっきり言っておくが、このワイド9、一番最初かどうかは知らぬが、5年位前から、とっくの昔に、コルツが採用している。つうか、フリーニー&マシスが勝手にそこにセットしている。 あと、ちょっと話が逸れるが、NEやGBがタイト・エンドをSEやFLの位置にセットしていて、それを彼らの発案のように報道するマスコミが、まま見られるが、それも数年前にコルツがダラス・クラークでやっとるつの。 もっとも、この両者ともに、最近のチームが意識的に戦術として採用しているのに対し、コルツの場合は、フリーニー&マシスは彼等の能力的特徴から、クラークはチーム事情から、やっていただけという大いなる相違点はあるのだが。 さて、このワイド9であるが、コルツファンなら誰もがその特徴と弱点と弱点を知っている。オフガードである。ここにランなりスクリーンなりを突っ込まれると、もうどうしようもない。ボブ・サンダース級のSがいれば、また少しは違うだろうが、そう入っても決定的な構造的弱点である事に変わりは無い。強烈なランサポートを誇るSと優秀な状況判断力を誇るMLBがいて、初めて成立するスキームだと思う。 というか、それがいても、個人的には、かなり厳しいオフェンススキームだと思う。ワイド9という以前に、4メンラッシュは幻想だと思う。 4メンラッシュというのDL4名全員がペネトレイトに成功して初めて成立するスキームである。4人の内3名しかペネトレイト出来なかったら、そこにギャップが生じてしまうので、もう終わりという儚いディフェンススキームである。しかも、それを10スナップ中9回ぐらいは成功させて初めて成立するスキームである。10回中5回ぐらいでは意味が無い。OLだって、当然、手を変え品を変え抵抗する訳であるから、現実的にはなかなかそれは厳しい。DL4名全員がオールプロどころか、殿堂入りクラスで初めて成立するディフェンススキームだと思う。DLは原則的にローテーション制という事を考え合わせると、DL6人ぐらいが殿堂入りクラスである必要があろう。そんなことは、事実上不可能だろう。つうか、歴史的に見ても、70年代スティーラーズだけだったのではないだろうか。あとは優勝した時のバックスか。 つう訳で、コルツファン的には終わっているディフェンスを採用し、コルツファン的には懐かしい光景を見せてくれているイーグルスであるが、何でそんな事態になったのかはよく分からん。とりあえず云えるのは、ジム・ジョンソンの死以降、イーグルスは、ジョンソンのブリッツ・ハッピー・ディフェンスから猛烈に反ブリッツ・ディフェンスに移行しているという事である。そもそも私がイーグルスを気にしだしたのも、これが由来である。マーリン・ジャクソンとか、アーニー・シムズとか、ブランドン・グラハムとか、といった元コルツ、あるいはコルツ色の強い選手を集め出して、なんでかな〜と思ったのがきっかけである。愛しのクレッコーさんもいた筈である。 ジョンソンの死以降、何でこうも急速に反ブリッツ化、すなわちカバー2化コルツ化したのかは全く以って不明である。ブリッツ・ハッピーに決定的な弱点を発見したのか、それとも単にアンディ・リードがジム・ジョンソンの事を大嫌いだったのかは全く以って不明であるが、ブリッツ・ハッピーとジム・ジョンソンから遠ざかるほど、カバー2にコルツに近づいてくるのは自明の理であろう。ヴィック入団も、その後見人であるダンジー狙いかと、私は邪推してしまったぐらいである。 ただまあ、如何なる理由であれ、カバー2ディフェンスというのは、よほど人材を得ない限り、なかなか成立しないディフェンス・スキームだと思う。これは1コルツファンというよりは、全コルツファンの率直な感想だろう。少なくとも4メンラッシュは捨てねばならぬと思う。ワイド9を成立させる為には、中のDT2人は、今のコルツがそうであるように、NTタイプを二人並べるべきだろうし、おそらくそうなる。つうか、ならざる得ない。 ただまあ、このワイド9というセットは、いろいろ批判も多いが、中にNTタイプを二人並べれば十分通用するフォーメーションだと思う。パスに対しては、両エンドにオープンラッシュさせ、QBがステップアップしたところをDTが仕留めるという図式である。また、ランに対しては、オープンのランは両エンドの力次第で防げるし、中央もNTを二人並べれば抑えられる。スクリーンがくれば、いよいよLBの出番である。満遍なく守るという点では、まさにカバー2の進化形だろう。両エンドがプロボウルクラスというのが絶対条件であるが、それがクリアできれば、まずまずのディフェンス・スキームだと思う。あとはまあ、LBのパスカバー能力か。これがコルツには欠けてんだなあ。 LBのパスカバーと云えば、ノーネームといわれるビルズにあって唯一ネームバリューのあるLB陣に、このゲームでは試合を決めるインターセプトを決められていたのは、「ドリームチーム」のイーグルスには何とも皮肉な話だった。 とまあ、ディフェンス面ではコルツ色の強いイーグルスであるが、オフェンスにもコルツ色の強い、つうか元コルツがいる。ハワード・ムードとその愛弟子カイル・デバンである。ムードといえば、コルツファンなら誰もが知っている、ここ数年のコルツでは、最も優秀と言われているOLコーチである。コルツを辞めて、半引退同然だったムードをイーグルスは引っ張り出してきた訳であるが、このゲームに限らず、ムードは右に左に真っ直ぐにと、ありとあらゆるブロックキングスキームを披露して、ファンを楽しませている。このゲームでも、OL陣に渋いダウン・フィールドブロックをさせて、デショーン・ジャクソンのTDを演出していたが、こういうのを見ると、これこそムードのやりたかった事なのだなと思う。マニングの元では、こういう縦横無尽なブロッキングというのは、なかなか使用しづらかったであろう。上述したように、プレイブックが薄いからである。オーディブルで複雑華麗なブロッキングは、さすがに無理。 伝統的に、ジョー・ギグスやパーセルズに代表される重量型パワー型OLの多いNFC東地区に、ムードのような軽量型機動力型のOLは新風を吹き込んでくれると思う。 さて、イーグルス話の最後を飾るのはもちろんこのひと、マイケル・ヴィック様である。私は、シーズン開始前、ヴィックがこけてイーグルスは終わると予想していたのであるが、幸いココまで無事なようである。 で、ここまで、そのプレイ振りを見た印象はというと、もう少しランを増やしてもいいんじゃねえかなというものである。まあ、これはヴィックに限らず、この手のモバイルQBの多くに云える事であるが、どうしても「パスが下手」みたいな批判を受ける事が多い為、逆に意地になってパスを通そうとして自滅するパターンが非常に多い。このゲームでも、後半パスを諦めて走り出したシリーズではTDやFGを生んでいる。実際、QBスクランブルというのは、防ぎようの無いオフェンス・プレイなのであるから、それをヴィック・クラスが走ったら、事実上無敵であろう。ラン・パス比率を5:5にしろとは云わないが、「投げれなかったら、走る」式の指導をすべきであろう。その成功例がバックスのジョシュ・フリーマンである。ヴィックにあの割り切り方をされたら、手に負えない。少なくとも、走る事は恥では無いと教示すべきだろう。なかなか難しい事だろうが。そうして、怪我するだろうが。 こんなとこかな。って、長すぎるわ。史上最長かもしれん。 2011/10/19 |