インディアナポリス研究会

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戦評 '11シーズン

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<1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11>

2010年
Week6
10月16日
IND@CIN
17−27
 つー訳で、今週もテレビ放送はない訳であるので、スタッツだけの感想。

 ここ最近似たような展開のゲームが続いているが、これは先週にも問うたのと同じく、「頑張ったけど、勝てなかった」のか、それとも「もう一頑張りが足りず、勝てるゲームを落とした」のか、その辺は、スタッツだけからではいまいち良く分らぬ。

 ただ最近気が付いたのは、ペインターというのは、確かに60%マニングだという事である。私がこの言葉を使った時、特に深い意味もなく、特に科学的根拠もなく、単に勢いだけで使ったのであるが、どうも正鵠を得ていたようである。申し訳ない。って、謝る意味が分らん。

 マニングだと一試合平均30点前後の得点が見込めるが、ペインターだとその60%、20点前後になるようである。今のコルツのディフェンス陣に敵オフェンスを常に20点以下に抑えるというのは、なかなか難しいだろうから、こんな感じの煮え切らないゲームが続くのであろう。

 マニングとペインターの10点分の差を埋める事ができるコルツ唯一のプレイヤーが、私はドナルド・ブラウンだと思っているのであるが、アダイ不出場の今週もあくまで2番手、デプスチャートに対する異常なこだわりを見せている。スターターは、3ヤーダーこと、デローン・カーターである。で、このゲームも14回45ヤードで、きっちり平均3.2ヤード、3ヤーダー振りを遺憾なく発揮している。しかも、このカーターの場合、「あのゲームは5ヤードだったけれども、このゲームは1ヤードだったので、平均すると3ヤード。」というのでは無く、どのゲームもほぼきっちり3ヤード平均である。対KC1.8、対CLE4.2というのは、あるけれども。

 技術的に見ても、スクリメージなりブロッカーなりを抜けてから、カットバックや馬力、デイライト能力といった、何らかの個人の力でタックラーをかわす能力は、私の見る限り、ほぼ皆無であるから、この平均3ヤードというのは、その能力に対するスタッツ的裏付けといってもよい。

 なんで、このカーターを優遇するのか。シラキュース枠はロースター枠であって、スターター枠ではなかった筈だが。コールドウェルが抱いてんの。

 まあ、選手起用というのは、外側から見ただけでは絶対に分らない、内側から見なければ絶対に分らない部分というのは確かにある。もしかしたら、ドナルド・ブラウンの練習態度は最悪で、携帯でメール打ちながらテレンコテレンコやっているのかも知れぬ。カーターには、私には見えぬ光るものがあるのかもしれない。ただ、とりあえず、私が外部から見る限り、カーター優遇ブラウン冷遇の意味がさっぱり分からぬ。

 あと、この試合も同様であるが、今季はファンブルロストでゲームが決着する事が多い。これはあんまり特筆されない事であるけれども、マニングのボールセキュリティーは素晴らしかった。あと、アダイも。なんか、マニングのクォーターバッキングが見たくなってきた。いい時のビデオでも見るか。

 で、これで0−7、いよいよシーズン全敗も現実味を帯びてきたか。私は、開幕当初は、弱いとこじゃないと勝てないかなあと思っていたが、むしろ最近は逆に勝てるとしたら強豪かもしれんと思うようになってきた。
 弱いところは、「ここ数年の恨みを、ここで返さずでおるべきか〜〜〜。」と怨み骨髄で向かってくるが、強いところは、これとは逆に「マニング抜きのコルツに勝っても、意味無いんじゃなくなくね。」的な気持ちで来るように思う。「ここで、コルツが全敗して、ラック獲得とかなったら、まずいんじゃなくなくなくなくね。」みたいな気持ちで来ると思う。

 という訳で、今季唯一の勝利は第13週のNE戦と見た。いや、それはねえか、さすがに。まあ、いいや全敗でも。とりあえずマイアミよりは下に行かなきゃ。いや、上か、どっちだ。ややこしいの〜。

                                                    2011/10/22
10月16日
SF@DET
25−19
 第7週が数時間後に近づきつつある中、第6週の観戦レポートを書くという前回と同じパターン。

 というのも、このゲームは私が前半戦で最も注目していたカードであるからだ。圧倒的なタレント力で勝ち進むデトロイトと昨シーズンと実質的にほとんど同じメンバーながらHCだけを変えただけで勝ち進むサンフラン、実に対照的な両チームによる好カードである。しかも日本放送の実況陣はタージンと板井さん、パーペキである。

 この両チームに関しては、今季ここまでの好成績から、シンデレラチームという呼び声もあるが、私はそうは思わない。意外性は無いからだ。デトロイトがやるのは分かっていた事だし、サンフランは、シンデレラという程、昨シーズンの成績チーム状態は悪くない。今季ここまでの好成績をシンデレラやサプライズの一言で片付けてしまっては、失礼だろう。

 特にサンフランシスコは、私は個人的にはかなり興味津々であった。サンフランというよりはジム・ハーボーと言った方が良いかも知れぬ。カレッジのヘッドコーチとしては、ほぼ完璧な実績(2チームの強化・建て直し、QBの育成)を挙げ、NFLに乗り込んできた。しかも、あのビル・ウォルシュ以来のスタンフォード上がりのナイナーズのHCという、ある意味非常に重い十字架を背負ってのHC就任である。兄のジョン・ハーボーのように強豪チームのHCに収まるのとも、ピート・キャロルのように比較的気楽なチームのHCに収まるのとも違う、非常にプレッシャーのかかるHC就任である。私ならずとも、興味津々であろう。

 そして、就任早々という訳でもないが、私をまず驚かせたのは、メンバーをほとんど代えない、特にQBのアレックス・スミスをそのまま留任させた事である。
 だいたい、HCというのは就任時にはQBを変えたがるものである。しかも、スミスは実績らしい実績も無く、変えたところで誰からも文句の出ない、しかも、もうそろそろ契約切れであろうから、キャップ的にも文句の無いQBである。むしろ、変更する方が自然なくらいであろう。それをそのまま留任。それ以外のメンバーも、契約上の理由による最低限の変更以外は、ほとんど同じである。戦術的な理由によるロースタームーブは皆無といってよいのではないだろうか。前任者のシングレタリーに対する当てこすりじゃないかというぐらいロースタームーブが無い。「あんたと同じメンバーでも、俺なら勝てる。」と言いたげである。

 まあ、シングレタリーに対する当てこすりというのは無いだろうが、ひとつには、1年間、自分の目で見て、選手の良し悪しを判断したいというのもあるだろう。ただ、それらより何より、私がそこから猛烈に感じるのは、「どんなメンバーでも、俺なら勝てる。」という強烈な自負である。自らを恃む力の強さである。
 そのHCの経歴がサンディエゴ大という無名カレッジから始まっている事から察しても、自らの手腕に絶対的な自信を持っている事の現れである。ハーボーぐらいの知名度があれば、強豪校やNFLチームのアシスタント・コーチになることも十分可能だった筈である(実際、引退当初はレイダースでACをしている。)。何処にでも捻じ込めたであろう。それをわざわざ、無名大学のヘッド・コーチから始めたということは、それだけの自信を持っていたという事である。実際、そこでたちまち頭角を現し、スタンフォードにリクルートされている。

 という訳で、ハーボーがどんな采配を振るうのか、私は興味津々であったのであるが、それを見た最初のゲームは第2週のダラス戦であった。このゲームではSFは敗戦したのであるが、その内容の詳細は省くが、両チームともにQB上がりのHCらしい、捻じりあいのゲームであった。頭脳戦という言い方も出来るかもしれないが、高度な知的ゲームというよりは我慢比べの戦いだった。高度な知的戦いの事を、解説の河田さんなどは良くチェスマッチといったりするが、スポーツに於ける高度な知的戦いは、チェスというよりはむしろポーカーに近い。チェスや将棋などは、結局は互いの読みや知識の戦いになるが、ポーカーは、結局は単なる根性だけの戦いである。スポーツの高度なゲームというのも、むしろそれに近い。お互いのやりたい事が分っているので、結局は何も出来なくなり、我慢比べ大会になってしまうのである。このダラス戦などはその典型だった。

 その後、SFのゲームは見ていないのだが、コルツを破ったシンシイやタンパなども軽く葬っている。特にタンパには48−3の圧勝である。TBというのは、私の見た限り、典型的な勝ちパターンを持っているチームであるから、逆に云えば、研究次第で簡単に勝てるチームであるとも云える。その勝ちパターンを逆利用すれば良いのである。実際の映像を見ていないので断言は出来ないが、その点差から察すると、ハーボーはそれをしてきたのではないだろうか。

 という訳で、このデトロイトの一戦である。選手のタレント的には完全にデトロイト有利であろうが、デトロイトにも弱点はある。そのひとつが、最近流行りのワイド9の際のオフガードである。

 話はちょっと逸れるが、このワイド9というネーミング、私は8テクニックの隣だから9だと、どこかの記事で書いたのであるが、後から冷静に考えてみると、センターの正面が0だとすると、タックルの横が5で、TEの横が7、9はSEの横になってしまう。そんな遠くでいいのか。遠すぎね。それとも、これはネーミングの由来じゃないのか。すっげー遠くって言いたいだけなのか。

 ネーミングはともかくとして、そのワイド9、弱点はオフガードであり、しかもそこを衝くには格好のランナーがサンフランには居る。フランク・ゴアである。もちろん、そこはデトロイト側も百も承知であるから、なかなかワイド9は使えない。でも、使いたい。で、つい使ってしまったシーンでは、すかさずゴアに衝かれてロングゲイン。このゲームでは、2回ほどゴアのロングゲインがあったが、いずれもそのプレイであり、得点に繋がっていたと思う。ハーボーの我慢勝ちといったところであろう。むしろ、それを出すように仕向けていったというべきか。

 そうして、このワイド9を使いにくくした最大の効用は無論、ンダマコンやニック・フェアリー、コーリー・ウィリアムズ、バンデンボッシュ等々、ライオンズ自慢のDL陣の身動きを封じた事であろう。特に、ンダマコンは、このゲームではほとんど目立っていなかった。どんな動きをすれば良いのか分からなくなってしまったのだろう。
 実際問題、4−3のチームでUTというのは、その働き場所を失いつつあると思う。両エンドにパスラッシャーを置いたら、DTはNTタイプを二人並べざる得ないだろう。マリオ・ウィリアムズやペッパーズのような万能型のエンドがいないと、なかなかUTタイプの使い道は無いのではないのだろうか。フェアリーがどんなタイプかはよく分らないが、スーやコーリー・ウィリアムズの才能を十分に活かす為には、3−4に移行して、彼らをエンドとして使った方が、ライオンズの為には、より良いのかもしれない。
 そういった意味では、ハーボーは、そのプレイコールでライオンズの構造的欠陥・戦略的欠陥を衝いてきたとも云えるだろう。

 まあ、このプレイコールに限らず、ハーボーの采配というのは、タイムアウトひとつとっても実に嫌らしい。嫌なタイミングでタイムアウトをとってくる。この試合も勿論そうだし、ダラス戦でもそうだった。また解説陣が感心していたチャレンジの出し方も然りである。単純に、タイムアウトを取ったり、チャレンジしたりする以上の効果を狙ってくる。

 決勝のタッチダウンになったデレニー・ウォーカーについても然りである。あの土壇場でウォーカーをスロットにセットしてクイックスラントさせるなんて実に心憎い。
 まあ、あの場面では、恐らく本命はその後ろにいたクラブツリーで、アレックス・スミスが慌てて投げちゃったら、結果的にタッチダウン、それも決勝タッチダウンになったというものであろうが、あの位置にウォーカーをセットさせている事自体が、心憎い。しかも、そのウォーカーは第3クォーター中盤で、ドフリーのタッチダウン・パスをポロリしている選手である。エンドゾーンでドフリーだったという事は、そもそもデトロイト側はさほどマークしていなかった選手だったという事である。そういう選手を、試合を決めるような場面で、囮なのか本命なのか分らない感じで使う、なんて実に嫌らしい。ライオンズの選手は「もしかしたら、こいつもあるかも。」と思った筈である。しかも、そう思いながら、「やっぱり、本命はクラブツリーだろうなあ、さっき、ウォーカーは落としてるし。」と考えた筈である。そう迷わせる段階で、サンフランの勝ちであるし、実際勝った。

 また、これはディフェンス面にも同じ事が言えて、SFのパスラッシュは基本DL3人+LB1人の4メンラッシュなのであるが、ただ必ずしも4メンラッシュしている訳ではなく、その4名の内、3名ないし2名がラッシュしているというパターンがほとんどである。そこにたまに、セイフティのウィットナーをブリッツさせる程度である。要するに、パスラッシュはほとんどしていないのであるが、そのやり方が非常に巧妙である為に、QBのスタッフォードは、それ以上にプレッシャーを受けている、というか混乱していた。

 特に、ゲーム中盤でアルドン・スミスがインターセプトしそこなったシーンがあったが、このインターセプト失敗はともかくとして、そこに根本的にパスラッシャーであるアルドン・スミスがいたという事にスタッフォードはかなり驚いていた。パス自体もスミスの胸元へのどストライクだったので、そこにスミスがいることは全く考えていなかったのだろう。よく、LBやDLがOLやDLの影になっていて、QBによく見えず、結果的にインターセプトされてしまうシーンはよくあるが、これはそれとは明らかに違っていた。インターセプト失敗直後、「なんで、そんなところにいるの。」という顔をスタッフォードはしていた。そして、明らかにそれ以降、スタッフォードのパスは悪くなった。ディフェンスのカバーが読めなくなったのだと思う。

 また、実際、ナイナーズのカバーは非常に巧妙かつ複雑なものであったらしい。ここ最近のNFLのディフェンスのトレンドとして、ブリッツを複雑にするというのが大変流行っているが、それとは逆に、パスカバレッジの方を複雑にするというのは、意外に盲点だったと思う。これからのトレンドになるかもしれない。

 ことほどさように、ハーボーの采配というのは、非常に巧妙なものが多い。いかにもQB上がりらしい目端の利いた采配である。私はかつて、「気の利いた采配」と表現したが、「こましゃっくれた采配」といっても良いかもしれない。
 ショーン・ペイトンあたりから始まって、ジム・ゾーンやキュービアック、ジェイソン・ギャレットと最近はQB上がりのHCの成功が続く。このジム・ハーボーはその極みかもしれない。
 前にも書いたとおり、私はこういうQB上がりの「気の利いた采配」が大好きである。ただ一方では、今ここで「こましゃっくれた采配」と表現したように、その采配に危うさも感じている。どこかで、足元をすくわれるような予感もする。まあ、ショーン・ペイトンは本当に実際にすくわれちゃったけど、それはともかく、彼らの采配に一抹の不安を感じるのも確かである。知に勝ちすぎている。最終的には、それこそ今回の相手の(いや他意はないです。)ジム・シュワルツのようなLB上がりのHCの方が成功するのではないかとも思う。

 ただ、いずれにしても、QB上がりのHCというのは、これから数年のNFLのトレンドになるように思う。10年位前、NBAでガード上がりのHCがトレンドになったようなものである。キトナあたりは、マジで狙ってそうだ。デルファーとか。ちなみに、キトナがスカイルズと被るのは私だけか。

 なんか又長くなってきたので、先週同様、次回に持ち越しまーす。次回は一応、個人評編を予定しています。

                                                     2011/10/24

 という訳で、個人評編。第8週が近づいているのに第6週のことを書くというのも、オツなもんである。まあ別にコルツについて書くことも無いので、いいんじゃなすかね。

 個人評編の第1弾は、まずパトリック・ウィリス。
 
 パトリック・ウィリスのランストップ能力がハンパない事は前々から知ってはいたが、この試合で見せたパスカバー能力もハンパないとは知らなかった。TEに関して、あそこまで完璧にマンカバーできる選手は初めて見た。しかも、そのTEはペテグリーであり、十分プロボウル級のプレイヤーである。そのプレイヤーを完封とは。間違いなく、このゲームのMVPであろう。

 このパスカバー能力にランストップ能力、レイ・ルイスやアーラッカーに大きな衰えは見えないとは云うものの、もはやウィリスが現役ナンバー1MLB・ILBといってよいであろう。オールプロ級ではなく、オールプロである。

 次は、問題のアレックス・スミス。

 このQBに対しては、いろいろな同情論もあるが、結局のところ、バスとではないかと思う。このゲームを見た限りで云っても、明らかに2流のQBである。プレイアクションからスクリーンとかしちゃってんだもの。一種の捨てコールかもしれないが、捨てコールにしても意味無いと思う。プレイアクションからスクリーンって。プレイアクションでディフェンスを引き寄せて、バックフィールドに投げちゃあ、駄目だろう。ドロー・フェイクからスクリーンなら分らんでもないが。プレイアクションの時は、ディープに放り込むのが普通であるし、ディープに放り込む為のテクニックがプレイアクションと云うべきだろう。

 このプレイに限らず、アレックス・スミスは、プロでやっていく上の、知性も技術も大きく欠けている様に感じた。

 このQBを、来季、ジム・ハーボーがどのように扱うのかは見物である。今季2巡で指名したケーパーニックを使うのか、自分好みのQBを連れて来るのか、それとも引き続きスミスでいくのか。大いに興味がある。スミスでいくというのなら、ハーボーは自身の手腕に過剰と云ってもよいくらいの自信を持っているという事になる。

 で、QBつながりという訳でもないが、次はライオンズのQB、スタッフォードについて。

 スタッフォードの話の前に、マイアミのQBチャド・へニーについて。私がこのチャド・へニーというQBを見るたびに、いつも思うのは、スローイングにしても判断にしても、「重い」という事である。「愚鈍」と言っては言い過ぎかもしれないが、「魯鈍」という感じはする。「重い」というのは、「重厚」なんて言葉もあるとおり、一概に否定は出来ないけれど、クォーターバッキングに限らず、一般的に良い事は無い。あるいは、少ない。「軽快」の方が、総じて、良い面が多い。

 で、この「重い」QBに対して、反対側にいる「軽い」QBが、私の見る限り、マシュー・スタッフォードなのである。彼のプレイは、スローイングにしても判断にしても、総じて「軽い」。で、「軽い」というのは、上に書いた「重い」の逆で、一般的なイメージは総じて悪いかもしれないが、実際には良い面の方が多い。へニーとスタッフォードの成績の差にも顕われていると思う。

 また、「軽い」というのは、一般的にはバカっぽいイメージもあるが、実際は「賢さ」を内包している場合が多い。このスタッフォードも典型的なバカ面、バカボン顔であるが、よはり実際は賢い男のようである。このゲームを見て、それは強く感じた。
 というのも、先の記事にも書いたとおり、アルドン・スミスのインターセプト失敗、すなわちナイナーズの複雑なカバーに対し、「おやっ」という顔を見せたからである。「そんなもの、誰でも見せる。」という説もあるかもしれないが、この「おやっ」という表情を見せない人は、フットボールの世界に限らず、その他の世界にも、意外に多くいる。「おやっ」という表情を見せるというのは、現実に対して何らかの予想をし、それが外れたということを意味しているからである。まず、「現実に対して何らかの予想」をしていない人は意外に多くいるし、また、それが外れたとしても、単に偶々外れたで解決してしまう人も多いからである。

 ただ、スタッフォードはどうもそうゆう人ではないようである。すなわち、「賢い」人であるようである。このゲームでは、その「おやっ」という表情の後、あまり良いプレイは見せられなかったし、これは後日譚になるが、翌週のWeek7のATL戦でも、プレイがいまいちだったようであるが、それは逆に云えば、彼が今まで「考えて」プレイしてきた証拠である。この不調は、次のステージに進むチャンスが来たと見るべきだろう。スタッフォードひとりで自ら解決してもよいのであるが、ここは優れたメンターの欲しいところであろう。そういった人間が、ライオンズにいるのか、あるいは彼の周辺にいるのかは、不明ではあるが。

 私はこれまで、スタッフォードの同期のライバル、マーク・サンチェスとの比較に於いて、スタッフォードの方を下に置いてきたが、このゲームで彼の中に「賢さ」のあることを知ったので、これからはサンチェスと同等と見たい。

 で、そのスッタフォードの相棒、カルビン・ジョンソンであるが、こちらはさすがに素晴らしい。ドラフト時に「十年に一度の逸材」的な評価があったが、全くその通りであろう。
 ただ、解説の板井さんが、スピード、ハンド、ルートランニング、強さ、高さ、性格、何もかも素晴らしいと評価していたが、私の目からすると、スピードとルートランニングにはやや甘さがあると思う。

 スピードに関しては、スティーブ・スミス(CAR)やサンタナ・モスが見せるようなCBを置き去りにするほどは速くない。
 また、ルートランニングに関しても、正確無比とまではいかないようである。もっとも、あの体で、えげつないルートランニングを身に付けようとしたら、一発で膝を壊すと思うので、これはこのままで良いと思う。

 とにかく、あの強さと高さとハンドの三つを兼ね備えているだけで、無敵である。近いプレイヤーとしては、プラシスコ・バレスがいるが、彼の場合は恒常性にやや欠ける所があるので、その点を加味して、カルビン・ジョンソンが現役ナンバー1レシーバーと言って問題ないと思う。ジェリー・ライス、ランディ・モス、アンドレ・ジョンソンときたナンバー1レシーバーの称号はカルビン・ジョンソンに委ねられたといって良いだろう。

 カルビン・ジョンソンに欠ける唯一のもの、っていうかスタッフォードに欠ける、っというかライオンズに欠けるものは、彼等をサポートするNo.2レシーバーとスロット・レシーバーであると思う。テイタス・ヤングとネイト・バールソンも悪くは無いが、私の見たところ、現時点では、あくまでNo.4レシーバー、Xファクターでしかない。

 No.2レシーバーとして、10ヤード・フックの鬼、それこそレジー・ウェインやハッシュマンザーダのようなタイプが欲しいところであろう。といっても、今の若手で誰がいるかといっても、パッと思いつかんのではあるが。コルツのゴンザレスはどう、あいつ、No.2レシーバーとしてなら十分行けまっせ〜。そこそこ若いし。

 スロット・レシーバーも欲しい所であるが、これも今から思えば、ドラフトでサンゼンバッハーを指名して置けばよかったかもしれない。

 サンゼンバッハーというのは、私が今年の年初、何試合か見たボウルゲームで気になった2人のプレイヤーのうちの1人である。
 その後、ドラフトでは指名されず、このまま消えちゃうんかな〜と思っていたところ、ルーキーFAでシカゴと契約、しぶとくロースターに残り、今やカトラーのフェイバリット・ターゲットである。シカゴで彼を発見した時は、自分の鑑識眼が証明された様な気がして、ちょっと嬉しかった。
 ハンドとルートランニングしかない選手なので、ドラフトでは指名しにくかったかもしれないが、結局、WRというのは、この二つさえあれば、何とかなるものなのである。逆に、この二つのどちらかが無いために、苦しんでいる上位指名選手も多い。

 まあ、No.2レシーバーとスロットなんていうのは、トレードドラフトなりFAなりでいくらでも獲得できるのできる、どうにでもなるので、近い将来、簡単に解決するであろう。

 ちなみに、気になったもう1人の選手というのは、ライアン・マレットである。「こりゃ、全体1位じゃね。」と思ったのであるが、その後、ドラフト時には「バカだ。馬鹿だ。」の大合唱で、全体1位どころか、1巡でも指名されなかったのであるが、3巡でベリチックが指名して、私の溜飲を多少は下げた。

 また、コルツファン垂涎のアンドリュー・ラックであるが、こちらは、第1クォーター終盤あたりで寝ちったので、良く分かりません。だって、しょうがないじゃない、お正月気分だったんだもの。だって、その時はまさか、コルツ指名の目があるとは思わなかったんだもの、しょうがないじゃない。まあ、DVDには残しているので、そのうち見て、レポートしたいと思います。

 とまあ、最後はコルツファン好例のラック話になってしまったが、このSF@DETの感想としては、昨季末まで力づくで9連勝と勝ち進んできたライオンズとスタッフォードが初めて、力だけでは勝てない相手とぶつかり敗れたゲームだったと思う。プレイオフ・コンテンダーになるための、ひとつの分水嶺になるゲームだったのではないだろうか。なぜなら、プレイオフというのは、ほぼ全てこういうゲームだからである。お互いの力を出し切るゲームではなく、お互いの力を出させないゲームだからである。

 ここを乗り切れば、ライオンズはプレイオフ・コンテンダーになれると思う。ただ、その力がスタッフォードやシュワルツのあるのか否かは、全く以って不明ではあるが。

 一方のナイナーズであるが、これはもう完全にハーボーのチームである。一体、ハーボーという男にどれほどの力量があるのか、それがすなわちナイナーズというチームであろう。要チェックや〜〜。って、誰の口癖だったっけ。

 あっ、そうそう、もうひとつ個人評を忘れていた。タージンである。あいかわらずの舌好調であるが、このひとって、割にNFLやフットボールの知識も深いのね。最近気が付いた。板井さんとのコンビは、あの至高のター濱コンビに次ぐ、ナンバー2実況コンビといって良いのではないだろうか。しょーもないギャグは相変わらずであるが。
 このゲームでも、確か第2クォーター終盤に、スタッフォードが、何かのサインであろうが、口の前で指を上下する仕草をした際に、すかさず「ラーメン大好き小池さ〜ん」と呟いていた。さすがにこれだけ低レベルな親父ギャグを電波に乗せることに躊躇があったのか、いつもの彼には珍しく小声であったが、私は聞き逃さない。解説の板井さんは奥ゆかしい人なので、優しくスルーしていたが、私なら「藤子不二雄に謝れーーー。」と、全盛期の浜田(ダウンタウンの方ね。)張りに激しく突っ込んで、そのメガネを破壊していたところだ。キックオ〜〜〜フ。

                                                     2011/10/31 あと2ヶ月。
2010年
Week7
10月23日
SNF
IND@NO
7−62って
 最近気が付いたのであるが、ティーボーって、マニングの持っていないものだけを、ことごとく持っているのな。溢るるガッツとか、勝負強さとか、強烈なリーダーシップとか、足とか、男臭さとか、人気とか、根性とか、巨乳の彼女とか、巨乳の彼女とか。んで、マニングの持っているものは一つ残らず何も持っていない。マニングの嫁の乳の大きさは不明ではあるが。

 DEN@MIAのハイライト映像を見ていて思ったのであるが、ティーボーがアメリカ人に人気があるというのは、分かる様な気がする。そのガッツやリーダーシップがアメリカ人の心を震わすという一面も確かにあるだろうけれど、それらより何より、ティーボーのプレイ振りに、多くのアメリカ人はフットボールの原風景、最もオリジナルなフットボールの姿を見ているのではないだろうか。カバーされようがされていまいがガンガン投げる。走りたくなったらガンガン走る。それらは、これだけ高度に発達したQB技術の中にあっては非常に珍しいものである。今時、こんなものがあったのか、といった感じではないだろうか。

 フォワードパスというのがルール上は確立されていながらも戦術的には不明であった時代のフットボールというのは、丁度こんなティーボーのようなフットボールだったのではないだろうか。
 あるいは、私は見たことは無いが、アメリカ人に生まれた男の子なら誰でもやるような、バックヤードで近所の子供達と4人対4人、あるいは4人対3人でやるようなフットボールというのは、丁度こんなティーボーのようなフットボールなのではないだろうか。勝敗や得失点などなきに等しい、勿論プレイブックなど無い、ただただ体を動かしていれば、それだけで楽しいというようなフットボールである。

 モバイルQBというのは、今までも、そうして今でも、たくさんいるが、ティーボーみたいなタイプはいなかったように思う。走るにしても、どこか怯えながら、あるいはファーストダウンを取るためだけに走っていた。エルウェイとかスティーブ・ヤングがこんな感じだったのだろうか。
 向こう2年、デンバーはティーボーにフランチャイズを預けてみても面白いのではないだろうか。もしかしたら、スーパーを獲るかもしれんし。太く短くで、いいんじゃない。

 そういえば、ティーボーって、「北斗の拳」とか「男塾」とかに出てきそうな顔&キャラしてんな。特に「男塾」。

 しっかし、マイアミは勝たねえなあ。そっちがそうくるのなら、こっちだって勝たねえぞ、コノヤロー。負けてらんねえ、いや、勝ってらんねえか。ややこしい。

 つう訳でもないが、7−62で敗戦。7−62って。まあマニングが出たとしても、勝てるかどうかは分からないカードだったので、敗戦自体は別にどうという事も無いが、7−62って。

 しっかし、ニューオリンズも大人げねえなあ。まあ、地区内での立場も危うくなってきているので、余裕ブッコいている場合でもないんだろうけど、スティーラーズを見習えよ。大人の対応しろよ、コノヤロー。インターセプトひとつぐらいサービスしろっつの。NFLの営業の立場も考えろっての。2年前のスーパーボウルのカードをワールドシリーズの週に持ってきて、わざわざサンデーナイトにした理由を考えろっつの。こんな、サンデーナイト史上最低のゲームにしちゃって、どーすんの。云っとくけど、俺ら責任取らないからね。コルツは全然悪くないから。俺ら全然悪くないから。悪いのはブリーズとニューオリンズだから。ちゃんと、営業に謝っとけよ。「こんな無様な試合しちゃって、すんません。」って。「大人の事情も考えずに、子供みたいにムキになって、勝ちにいっちゃって、すんませんでした。」って。

 ちなみに、このワールドシリーズの週にはもうひとつ、ワールドシリーズ殺しのカードとして、同じくスーパーボウルの再戦カード、PIT@ARIが用意されていたのであったが、こちらもアリゾナがグタグタで勝負にならず。営業の目論見は脆くも崩れ去ったのであった。かつてのNE対INDのような鉄板カードが欲しいところだ。いや、もう俺ら無理っす、そんな力無いっす。

 つうようなゲームなので、今更論評も何も無いが、とりあえず、最初のファンブルロストが出た時点でゲーム終了だった。敵地のドーム球場でノーハドル&オーディブルは無理じゃねえかなあと思っていた矢先のファンブル、&ロスト。とりあえず、目先の1勝を目指すなら、「敵地のドーム球場でノーハドル&オーディブル」はよした方が良いと思う。

 しかし、今季はファンブルロストが多いなあ。ファンブルは技術的な問題なのでともかくとしても、ことごとくロストしてしまうってのは、どーゆー事。ファンブルしたボールがロストになるかリカバーになるかなんて、完全に運だけだもんなあ。今季は完全にツキに見放されとる。天中殺の年としか考えられん。
 また、どっかでも書いたと思うが、今年は個人的にもついていない事が多い。私のン十年の人生でも最悪の年である。これは断言できる。例の大震災も、直接的にはともかく、間接的には被害を被っているし。そこにきてのマニングの怪我。んで、代わりがコリンズ。あと2ヶ月か、はやく年が明けて欲しい。んで、ラック様獲得の吉報を。

 あとゲームについての感想といっても、試合時間全60分中55分がバゲージタイムのゲームについて、今更何も書くことは無いのであるが、やっぱりドナルド・ブラウンは使わないのね。これがブラウンだったらなあというシーンが何回かあったが、全部アダイとカーター。彼らは厳しいカットを切れないから、ロングゲインできねえっつの。
 んで、ブラウンを使ったかと思うと、ゴール前。んなの、意味ねえっつの。ゴール前こそカーターだろうが。カーターの穴に切り込むスピードが活きるんだろうが。

 特にシチュエーションとかも考えずに、単純に「疲れたから交代」みたいな感じで使っているんだろうが、その如何にもアメリカ的な硬直的な人事は何とかならんのか。これはコルツに限らず全てのアメリカのスポーツに云えることだけど。全ての人が、それぞれ自分の権利を主張した結果、こういう硬直的な人事が出来上がってしまう。典型的な民主主義的現象ではある。

 また、わたしがここまで3ヤーダー、3ヤーダーとバカにしてきたデローン・カーターの本日は10回89ヤード、ロング42で立派な9ヤーダー、と言いたいところであるが、今回の活躍は、どっちかというと敵のタックルミスと展開上のランディフェンス軽視によるものだから、カーターの本質的な3ヤーダー振りは変わっていないと思う。つうか、走りのスタイルはそんなに変えれるものでもないし。

 あと、ショーン・ペイトンが例の怪我でブース席にいたが、あいつ、体よえーな。ジョー・パターノが恒例行事のように、毎年サイドラインで選手にぶつかっているけど、あんな大ケガしないもんな。じーさんより体弱いって、恥ずかしい。周囲からさんざんからかわれているんだろうけど、俺もからかう。

 んなとこか。

 ちなみに、このゲームは3試合ぶりにTV放送、しかも御丁寧にG+とNHKBSの2局で放送されたカードなのであるが、ある程度予想はしていたが、こんな結果になるとは。放送前は久し振りの(っつても3試合ぶりだけど。)TV放送、しかも相手は超強力オフェンスのNOという事で、緊張はしていた。10年振りのデートの相手が長澤まさみ、みたいなもんである。せめてクラスメイトの山本さん(仮名)にしてくれと思ったものである。しかし結果的には長澤まさみも山本さん(仮名)も関係なかった。長澤まさみがデートにお母さんを連れてきちゃったみたいなもんである。「お母さん、連れてきちゃった〜〜〜。」みたいな。んません、この喩え、自分でも意味が全く分かりません。

                                                          2011/10/25

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