2012年 Wild Card PlayOff |
年末年始 あれこれ |
過日、アラバマ大とオーバーン大のライバル関係のドキュメンタリー番組「アイアンボウル」を見ていたら、ボー・ジャクソンが「オーバーン史上最も有名なプロスポーツ選手は」という質問だか自問だかに、ちょっと考えて、「チャールズ・バークリー。次は俺かな。」と答えていたのには、笑った。いきなりアラバマに負けてるやん。 2011年のレギュラーシーズンも無事(?)終了した訳であるが、我等がコルツも無事(?)ドラフト全体1位をゲット。2012年幸先の良いスタートである。しかし、地区内最終3連発で、テネシー、ヒューストンに連勝。ジャクソンビルに敗戦という結果は予想だにしなかった。その逆は予想していたが。スポーツって分からんもんですな。 で、そのコルツとシーズン中盤、全体1位を争っていたマイアミは結局6勝10敗でAFC東地区3位。ドラフト順位は、コイントスがあるらしいが、とりあえず8位である。分からんもんだのお、スポーツって。 とまあ、結局今年も戯言から文章を始めた訳であるが、正月、実家に帰って、食べたくも無い餅を食べている間に、コルツ的には大事件が発生していた。ポリアン親子の解雇である。レギュラーシーズン終了翌日の月曜日、両者の解雇が発表された。子はともかく、親のビル・ポリアンの解雇は、コルツにとって一時代の終わりのアナウンスと同じい。 唐突な発表という感もなくは無いが、言われてみれば、当然かなとも感じもする。形の上では「解雇」「FIRE」ではあるが、実質的には「辞任」、というより「引退」であると思う。これはあくまで私の憶測であるが、スーパー制覇の後あたりから、ポリアンは引退を考えていたのだと思う。そうして、タイミングを見計らっていたら、ダンジーが先に引退し、「おいおい、お前、先にトンズラこいちゃうの。俺、辞めづらいじゃん。」みたいな感じでタイミングを失い、適当に見繕ったコールドウェルがまさかのスーパー進出で、辞める時宜を失っていたのだと思う。その間のドラフトやFA、コーチ人事が、どこか「やっつけ仕事」的なのは、その辺のポリアンの心理を表していたものだと思う。 それが今年、まさかの2勝14敗で最下位、んでドラフト全体1位をゲット。辞めるタイミングとしては絶好である。ポリアンは天の声を聴いたであろう。次のGMもドラフト全体1位から始められるとなれば、この上ない環境である。しかもその候補はQBアンドリュー・ラックである。最高のスタート地点というべきだろう。まあ、絶世の美女を許嫁にされたようなもので、逆にやりづらいとも言えなくは無いが。 ポリアンのコルツでの実績について云えば、これはもうほぼ満点と言って、異論の余地は無いであろう。ここ10年のGM稼業でも、NFLナンバーワンといったら言い過ぎかもしれないが、オジー・ニューサムや、A.J.スミス、スコット・ピオーリらと並んでトップレベルの仕事をしてきたと言って良いだろう。更にスパンを広げて、ここ20年となれば、彼以上、あるいは彼に並ぶ仕事をしたGMは他にいないのではないだろうか。唯一挙げられるのは、これはGMではないけれど、パーセルズぐらいではないだろうか。他に強いて挙げれば、ショッテンハイマーぐらいか。 パーセルズに関しては、例のスーパーボウルを抜きにしても、そのフットボール観に於いて、当人達が意識しているかは知らぬが、ポリアンの対極に位置する、すなわち宿命のライバルだったと思う。ポリアン、パス(フィールドポジションでも良い。)、パーセルズ、ボールポゼッション、これらを私は勝手に「4つのP」と呼んで、珍重している。ここに、ペイトン・マニング、フィル・シムズ(チャド・ぺニントンでもよいかな。)を加えれば、「6つのP」と言っても良い。この「4つのP」あるいは「6つのP」については、いずれ時宜を見て、記事を書いてみたい。 パーセルズとの一件はともかく、ポリアンが殿堂入りか、それに近い実績を残したGMであることは異論の余地の無いところだと思う。また、私個人にとっても、初めて好きになったチームのGMという事で、私のフットボール観のベース、基礎がポリアンのフットボール観のそれであることは間違いない。でも、これは本当にポリアンで良かったと思う。もし、これが訳の分からないチームのGMのそれだったら、私のフットボール観は訳の分からないものになっていただろう。そういった意味ではポリアンに感謝している。まあ、あくまで偶々だけど。 また、私個人より何より、インディアナ州、そうしてインディアナポリス市にとっては、何と云ってもフランチャイズの大恩人と言ってよいだろう。もしポリアンがコルツのGMに就任せず、ペイトン・マニングを全体1位で指名しなかったら、今のフランチャイズはまったく別のものになっていたと思う。ポリアンがGMに就任した頃は、リーグの拡張・再編成が盛んに行われていた時期だったから、コルツがインディアナポリスから去っているというシナリオも十分に考えられる。そうなれば、今のルカス・オイル・スタジアムも建設されていなかったかもしれない。そういった意味では、インディアナ州、あるいはインディアナポリス市にとっては、ポリアンはレジー・ミラーと並ぶ大恩人と言ってよいのではないだろうか。 もしコルツがインディアナから去っていたら、私がコルツファンになった理由は、単にインディアナ・ペーサーズと同じフランチャイズだったからと言う理由なので、コルツファンにはなっていなかっただろう。 まあ、もっとも、これらは、仮想戦記物みたいな、全く埒の明かぬ空想なので、何を言っても意味は無い。ポリアンが就任しなかったら、もっと凄いGMが就任して、スーパー5連覇とかしていたかもしれないし。 さて、コルツ話はこれくらいにして、プレイオフ話に移りたい。去年も書いたかと思うが、やはりワイルドカード・プレイオフは面白い。同じプレイオフでも、ディヴィジョナル以上は、各チームの戦力や勢いにほとんど差が無いので、内容的にはともかく、外見的にはつまらぬ試合になることも多いのであるが、ワイルドカード・プレイオフだと、各チームに微妙な戦力差、個性、勢いの違いなどがあるので、内容的にはともかく、外見的には派手になりがちである。去年も書いたかと思うが、高校野球のベスト8に似ている。 で、ワイルドカード・プレイオフ4試合の感想をちょろちょろ書いてみたいと思うのであるが、その前にジェッツについて。昨季のAFCチャンピオンシップでの内容の悪い敗戦から、今季プレイオフを勝ち進むのは難しい、また、しばらく迷走すると私は予想していたのであるが、今季いきなりプレイオフを逃すとまでは予想しなかった。それも、大きなアクシデントがあった訳でもなく、AFC西のデンバーのような強烈なサプライズチームが出て来たわけでもなく、謂わば自力でプレイオフを逃した格好である。ここから再び上昇気流に乗るのか、それともこのまま低迷しチーム解体へと向かってしまうのか、来季は正念場だと思う。王朝を築くだけの条件はほとんど揃えていただけに、旬を逃すというのは本当に恐ろしい。SDのようになってしまうか、それともNEやGBのようになるか、来季は本当に分岐点である。というより、昨季のチャンピオンシップが分岐点だった、かもしれない。 さて、ワイルドカード・プレイオフの感想であるが、まずはHOU@CINから。 ここは、はっきりいって意外な結果だった。私はイージーにCINが勝つと予想していたのであるが、結局、大差でHOUの勝ち。 今シーズン、私は、やれナイナーズだ、やれティーボーだと騒いでいたのであるが、実は最も注目していたのは、このシンシィ、アンディ・ダルトンであった。ただ、なかなかTV放送が無く、彼とシンシィについて記事を書く機会が無かった。つう訳で、この1戦、つうかダルトンに関しては別項を設けますので、ここではパス。 次はATL@NYG。 ここは、まあ予想通りというか何というか、こういう結果も十分ありうるなという結果だった。さすがにこれだけの大敗は予想しなかったけど。このゲームのキーは結局アトランタ、それも何処かで書いているが、OCのムラーキーとマット・ライアンを中心としたATLオフェンス陣の相性の悪さである。その最悪の結果がこのゲームである。 ライアン、マイケル・ターナー、ルディ・ホワイト、フリオ・ジョーンズ、そうしてトニー・ゴンザレスという、ごっつー古典的な布陣に変則的なムラーキーのプレイブックは全く合っていない。最悪の組み合わせといって良いくらいである。全員の才能を、やをら無駄にしていると言ってよい。このゲームでもエンドアラウンドなんかを見せていたが、そんなのはオフェンス力の無いチームのやる事である。例えば、コルツなどはここ5年くらい(勿論、今季は除く。)、そんなプレイはしたことが無い。今のアトランタのようなタレント陣でするようなプレイじゃない。 また、このゲームでも4th&ギャンブルで2度スニークをコールして2度とも失敗していたが、このオフェンス陣のメンツなら、そんな事をしなくても、ゴンザレスを縦に引っ張っておいて、ホワイトないしジョーンズへのクイックスラント、さらにはそれらを見せかけてのターナーへのスクリーンないしピッチで楽々ショートヤーデージは取れる筈である。 こういう書き方をすると、「ムラーキーが無能だ。」みたいな印象になるが、私はムラーキーが無能だと云っている訳ではない。ムラーキーの才能や特徴が今のアトランタに全く合っていないと言いたいのである。ムラーキーのプレイブックやコールに合うのは、例えば今のデンバーのようなチームであろう。 シンシィの記事でも同様の事を書くつもりであるが、HCやコーディネーターと選手との相性は本当に重要である。NFLに限らず、トップレベルのプロチームとなれば、コーチやプレイヤーに無能な人はほとんどいない(まっ、例外もあるが、)。皆、何らかの才能や知識を持った人達である。それでも勝ったり負けたりするというのは、結局は彼らの相性、組み合わせ、すなわちケミストリーの問題である事がほとんどである。それがチームスポーツを見る面白さとも云えるのだけど。 このゲームは特に、その点が強烈にフォーカスされたゲームだったと思う。アトランタのプレイヤーに決定的なミスや調子の悪さがあった訳でもなく、ジャイアンツ側に圧倒的な好プレイがあった訳でもなく、特殊な運の良し悪しがあった訳でも無かっただけに、この点のみが強烈にクローズアップされたゲームだった。 アトランタが今後、常勝チームを目指すとすれば、さすがにオフェンス・プレイヤー全員を入れ替える訳にはいかないので、ムラーキーの首を切るしかないだろう。 次はNO@DET。ここは乱戦必至のカードであったが、一日の長という訳でもないがNOの勝ち。 デトロイトというチームは、結局はバールソン次第なので、このゲームのようにバールソンが封じられると、オフェンスは進まなくなり、勝ちが遠のくという結果になる。安定した力を発揮する第2WRタイプが今後のデトロイトの成否を決めるだろう。まあ、獲得そのものは、FAなりドラフトなりで、さして難しくも無いので、あとはGMやHCの眼力だけである。 そして、いよいよ真打ちティーボー登場である。PIT@DENである。「アップセットがあるとしたら、ここかな。」と私は予想していたのであるが、典型的なデンバー、つうかティーボーのゲームでアップセットである。良く似た他チームどおし、つうか、デンバーが将来目指すチームと現在そのチームであるチームの戦いになった訳であるが、ティーボーの分だけティーボーの勝ちといったところか。 ディフェンスの頑張り、パンターおよびキッカーの飛距離、ジョン・フォックスの粘り強い采配、そうしてティーボーの魔力という、今デンバーが勝てる全ての条件が全部出た、今デンバーの勝てる唯一の勝ちパターンのゲームだったとも云える。 スティーラーズサイドから云えば、「なんで12勝もしているのに、ホームで戦わしてくれん。」といったところであろう。仮に、これが@PITだったら、パンター・キッカーに距離が出ず、PITはラン主体で攻める事が出来、ちょうどDEN@BUFみたいなゲームの再現も可能だった筈である。 にしても、最後のティーボーの決勝タッチダウンなんて説明のしようがない。ティーボーの魔力としか言いようが無い。百戦錬磨のディック・ルボウが、あの場面、何故セイフティをディープに置かなかったなんて、それ以外説明のしようが無い。ティーボーの魔力にルボウが魅入られたといったところであろう。 あと、今回ティーボーのクォーターバッキングについての新たな発見としては、ティーボーにショートパスやチェックダウンは無いという事である。スローイング・メカニズム的にショートパス、特にチェックダウンやクイックパスは事実上不可能だと思う。もっとも、だからといって、セイフティをディープに張り付かせとく訳にはいかない。オプションのランがすっ飛んでくるからだ。そう考えると、確かに、攻略しにくいといったら語弊があるが、攻略の面倒なQBであることは間違いないと思う。プレイブックそのものを大きく入れ替える必要があるからだ。外野の声も五月蠅いだろうし。ルボウはしばらく家から出ないんじゃないかな。「うるせー、分かっとるわい。」といったところであろう。 で、そのデンバーとティーボーであるが、次戦は@NE。さすがに厳しいか。ベリチックならばティーボーを仕留める方法はすぐに見つけるだろうし。 ただ、わたしがちょっと気になるのは@NEという点である。コルツとマニングを散々苦しめた悪天候が再来したら、ランオフェンスの無いペイトリオッツは意外に苦しむのではないだろうか。そうなると乱戦になって、ティーボーの魔力が復活という事も十分考えられる。天候が勝負の鍵か。 でも、ティーボーって、ほんと何から何までマニングと正反対だな。同じなのは、フットボールIQの高さくらいか。 予想ついでに他の3試合も。まずはNO@SF。 今のNOのオフェンスを止める鍵は、私はむしろランだと思っている。NOはショートヤーデージでは意外にランを多用してくる。その辺は、アホのマニングとの決定的な違いである。このショートヤーデージでのランをきっちり止めていけば、NOのオフェンスは意外にあっさり崩壊すると思う。 で、そのランを止める術をSFは持っているし、そのことに当然ハーボーは気付いているだろう。SFのオフェンスはゴアを中心にそれなりに進むだろうから、そうすると24−17みたいなスコアでSFの勝ちではないだろうか。ハーボーもプレイオフ1回戦敗退じゃ満足しないだろうし、ここはSFに張る。 NYG@GB。 似た様なチームの対戦だが、全ての点に於いて、ちょっとづつGBの方が上のような感じである。順当にGBの勝ちか。ジャイアンツの勝つシナリオがちょっと思い浮かばない。もちろん勝負事だから、思わぬ形で勝ちが転がってくる事もあるだろうけど。あららGB初戦敗退の目も無くは無いが、やはりGBに張るのが無難か。 HOU@BAL。 ここはマジ分からん。完全に五分五分じゃないだろうか。普通に考えれば、総合力でBALだろうが、フォースターに蹂躙される可能性も無くは無い。フラッコーも信用できないし。DCはウェイド・フィリップスだし。同じ南洋一郎地区(しつこい)の仲間ということで、HOUに張ってみるか。頑張れ、イェーツ、そうしてアンドレ・ジョンソン。 つう訳で、今年一発目はこれにて、おしまい。皆さん、明けましておめでとうございます。最後に言ってみた。 待望の2012年。2012/1/11(水) |
1月7日 CIN@HOU 10−31 |
今、NFL公式ページを見ていたら、「Tebow or Not Tebow」という見出しを発見。何今アメリカじゃ、そんなことになってんの。究極の選択、踏み絵みたいな。 さて、この項では、前回の記事で予告したとおり、CIN@HOUの感想を書こうと思っていたのであるが、コルツ人事的に事件があったので、まず、そちらの感想を書きたい。 コルツの新GMがライアン・グリグソン・39歳・ジモティーに決まったそうである。腰を落ち着けて、じっくり決めるみたいな報道があったので、一ヶ月ぐらい様子を見るのかと思っていたら、意外にあっさり10日程で決まっちゃいました。もう、イーゼイったら、早漏なのね。すいません、ゲスリング部出身なので、つい下衆な事を言ってしまうんでゲス。 イーグルスの人事部で長らく働いていた人らしいが、勿論詳しい事跡は知らぬ。39歳と年齢的に若いのが、ちょっと気になるが、2歳だろうが119歳だろうが、結果さえ残してくれれば、何の問題も無いので、その辺は憂慮していない。ただ、今のコルツは、ン十年負け続けてきたような所謂ドアマットとは違って、前任者の残した、良くも悪くも数多くの遺産、多くは良い遺産が残っているので、そういったものを整理整頓するには、実績はともかく、経験者の方が向いていると思ってたので、初GM職の39歳に任せたのはちょっと意外ではあった。グリグソンを初めから狙っていたのかもしれないが、1,2年くらい、高齢の経験者を挟むのも、ひとつの手だったかもしれない。 とはいえ、結果さえ残してくれれば、一切の問題は解決するので、頑張ってちょーらい、超力ショーライ。 しかし、ここ最近、何か知らぬがイーグルスとの人材交流が盛んである。イーグルスは元コルツを集めてみたり、コルツはコルツで元イーグルスを集めてみたり、ただ惜しむらくは両チームともに華々しい成功は収めていない。どういうこっちゃ。 前年の最後の記事で、コルツにはビッグ・イースト出身者が多いと書いたが、イーゼイ、あるいはチーム関係者が、あのあたりの地域に大きな人脈を持っている事は確かなようである。まあ、ファンにとっちゃ、どーでも良いことだけど。 さて、人事といえば、私が前回の記事で腐したマイク・ムラーキーが、我等が南烈地区(とことんやる覚悟で御座います。)のジャクソンビルのHCの就任した。ギャバートがムラーキーに合うかどうかは分からんが、とりあえずアトランタとマット・ライアンにとっては慶賀すべきことであろう。 ただまあ、とはいえ、アトランタとマット・ライアンにとっては、ムラーキーとの4年間は、はっきり云って無駄だったと思う。以前、河田さんがライアンの言葉として「僕は自分のリズムを作る為にノーハドルをやる。」というコメントを紹介し、河田さんは「こういうノーハドルの使い方もあるのか。」とコメントしていたが、この言葉は、はっきり云って、暗にムラーキーのプレイブックを否定した言葉だったと思う。平たく云えば、「俺はムラーキーと合わぬ。」という意味である。 これで、ムラーキーのプレイブックとはおさらば出来る訳であるが、この4年間を失った意味は、アトランタ、ライアン、両者共にとって大きいと思う。この4年間でスーパー出場、最悪でもカンファレンス決勝ぐらいまでには行っておかねばならなかったし、また、行ける戦力であった。それを、みすみす、ムラーキーのプレイブックとともに、逃したのである。 そうして、これからは間違いなく戦力的には落ちていく。まずは、ルーキー契約の切れる、ないし終盤に入るライアンの契約がキャップを圧迫するであろう。となると、ゴンザレスはカットせざる得なくなるし(実際、来季は1年契約だそうである。)、ホワイトとジョーンズのどちらかを選ぶという究極の2択にも早晩迫られるであろう。ターナーの去就もある。まあ、何かの弾みで安値のプロボーラーを発掘できれば、また話は別だが、いずれにせよ今後数年間、少しづつ戦力ダウンしていくのは必至である。ちょうど、ここ数年のアリゾナに近い形になるだろう。それでも、アリゾナは一番いい時にスーパーボウルまで行けたので、この緩やかな転落も我慢できるだろうが、何も残していないアトランタは、ただ落ちていくだけである。フットボールに限らず、プロスポーツというのは、勝てる時に勝たないと、あとは落ちるだけである。 で、これから本題のCIN@HOUの観戦記を書こうと思っていたのであるが、時間が来ちゃったので、次回。なんだそりゃ。 2012/1/12(木) スーパーボウルが終わって早1週間、NFL業界は完全にオフモードであるのもかかわらず、何で今更、こんなプレイオフの1ゲームを書いてんのかというと、アンディ・ダルトンについて書きたいからである。そのほか、「HCの仕事」やら「俺オールプロ」やら近日行われる「ペイサーズのゲームの感想」やら書かねばならぬ事は色々あるのだが、今回はまず「ダルトンについて」。ひとつづつ片付けていく。 さて、このアンディ・ダルトン、世間的には「ドルトン」が正しい日本語表記らしいが、私は個人的には「ダルトン」という表記が気に入っているので、しばらく「ダルトン」で押す。飽きたら直すので、しばらくお付き合い願います。 さて、そのダルトンであるが、私がこんな時間軸を無視してまで評論したいと思っているのかというと、このQBは、私の見る限り、その第一印象においては文句なしにベストのQBだからである。つうか、第一印象というカテゴリー、ルーキーQBというカテゴリーを抜きにして、単純にQBとしてのカテゴリーにおいてもベストのQBである。私の理想のQB像というのは、このアンディ・ダルトンと思ってもらって差し支えない。なんなら、今年のコルツの全体1位をこのダルトンと交換しても良いくらいである。それくらい、私は気に入っている。解説の河田さん改め河口さんが「将来殿堂入りするかも。」という様な事を言っていたが、まあさすがに将来殿堂入りするかどうかまでは分からぬが、只今現役のQBの中で最も才能豊かなのは、このアンディ・ダルトンであると思う。 フットワークとそこから生まれるリズム、フィールドビジョン、コントロール、そうしてクイックリリースと、ほぼ理想的なクォーターバックだと思う。私は現時点でトップレベルのクォーターバック、マニングレベルだと思っている。あと、分からないのは頭の中身、心の出来であるが、さすがに、これは1シーズン、数試合見た程度では何とも云えぬ。評価を下すのは、もう少し先の話であろう。この「頭の中身、心の出来」次第では、それこそモンタナの再来といってよいほどの逸材であると思う。ドラフト一巡指名で無い事も含めて。 実際、何故昨年のドラフトで全体35位だったのか不思議なくらいである。というか、ドラフト前の評価では、確か3巡4巡クラスに評価されていたQBだった筈である。それを現OCのジェイ・グルーデンが大層気に入って、2巡で強行指名、それでもリーチだといわれていたと記憶している。こんな、誰の目にも分かる逸材をNFLのスカウトが見逃してたとも思えないから、何か明白な欠陥を抱えているのだろうか。 身長が6−2なので、確かに理想的とは云えないけれど、ブリーズのように特別低いという訳でもない。十分、NFLでやっていける身長だと思う。技術的には欠陥は見当たらないので、先ほど私が未だ不明の部分と書いた、精神面に何か重大な欠陥を抱えているのだろうか。それとも私生活。女遊びが激しいとか。超絶倫とか。 そんなゲスリング部的な話はともかくとして、彼が大学時代、圧倒的な成績を残せなかったというのは、なんとなく分かるような気はする。圧倒的な成績では無いと書いたが、ローズボウルMVPだし、QBとしても十分な成績は残している。ただ、ラックやニュートンのような3000ヤードや30TDsは残していない。ただそれは、私が見る限り、ダルトンの責任というよりは、カレッジレベルでは彼に対応できるレシーバーがいなかったのではないかと推察する。カレッジ時代のダルトンは全く見ていないので、これはあくまで推察にすぎないが、シンシィのプレイ振りを見ていても、グリーンやグレシャムといった一線級のレシーバーでも彼のボールを捕るのには苦労しているようので、カレッジ・クラスのレシーバーでは、なかなか対応できなかったのではないだろうか。 この試合でも、あわやタッチダウンのエンドゾーンへのパスがあり、解説の村田さんは「完全にドフリーだったので、ダルトンのコントロールミスだ。」みたいなことを言っていたが、私の目にはドフリーにはとても見えなかった。確か、ダブルカバーの結構細いところに投げ込んでいたように記憶している。このゲームに限らず、ダルトンのゲームではこういうシーンが散見される。ダブルチーム、トリプルチームされている、結構細いところ、いわゆるスモールウィンドウに投げ込み、インターセプトやパス・ディフレクトはされぬものの、一方では、レシーバーも追いつかず、結果、パス・インコンプリートのようなシーンである。しかも、そのレシーバー陣はグリーンやグレシャムといった一線級のプレイヤーなので、決してレシーバー陣の力不足という訳ではない。 私の見たところ、どうもダルトンというのは、そういうディフェンダーが届かぬギリギリのところに投げたがる傾向がある。おそらく相当自分のコントロールに自信があるのだろう。ただ、かなりギリギリのところなので、ディフェンダーも届かぬがレシーバーも届かず、結果、パス・インコンプリートになってしまっている。同じパス・インコンプリートでも、アレックス・スミスのはターンボール、いわゆる逆リードが多いのに対し、ダルトンのそれはリードボールがほとんどである。厳しいパスが多い。 かてて、もうひとつ、というか、こちらの方がレシーバー陣にはかなり厄介な特徴なのであろうが、そのハンパないクイックリリースである。 クイックリリースと云えば、現役ではリバースやスタッフォード、ブレイディやフィッツパトリックなどが挙げられる。ただ、後者二人は、スローイング・モーションが小さく早いというのではなく、判断が早い、つーかフィッツパトリックの場合は、判断をしていない、スナップ前に判断をしてしまっているという感じなので、この両者の場合は、判断が早い、あるいは、判断していないという形でのクイックリリースなので、厳密にはクイックリリースとはいえないだろう。 メカニック的な意味でのクイックリリースという意味では、モーションの小さいリバースと、モーションの早いスタッフォードが現役では双璧かと思われる。 ちなみに、このクイックリリース、私がNFLを見始めた7,8年前は、まさしく猖獗を極めていて、とにかくクォーターバックの評価は何でもかんでもクイックリリースで解決していた。数年前のディフェンスリードみたいなもんである。一方で、私はフットボールを見始めたばかりだったので、クイックリリースというものが如何なるものか、いまいちピンと来なかったのであるが、G+のNFLアーカイブ等でダン・マリーノのプレイを見るに至って、初めてそれを了解した。 で、そのダン・マリーノのクイックリリースを彷彿とさせるのが、このダントンのクイックリリースである。ダン・マリーノ級とまでは言わぬが、そのダン・マリーノに次ぐレベルのクイックリリースである事は間違いないと思う。現役では勿論ダントツナンバーワンである。 ただ、このクイックリリースというものは、かつても何処かで書いたと思うが、実戦では意外に役に立たない。まあ確かにディフェンス側にとって、厄介な代物であることに違いないが、それと同等、ある意味、それ以上にレシーバー陣にとっても厄介なのが、このクイックリリースかと思われる。勿論、パスプレイというのは基本的にタイミングで成立させるものであるから、QBのモーションは直接関係ないかもしれぬ。とはいうものの、やはりレシーバーもQBの送球モーションを見ながら、レシービング体勢に入るのだと思う。そのモーションが、もの凄く小さく早かったら、やはり獲りづらいだろうと思う。常にレシーバー第一のパスを放るマニングがクイックリリースでないのは、敢えて採用していないところもあるのではないだろうか。 というのが、現時点での私のダルトン評である。その中で、モンタナやマリーノの名前が出てきたとおり、技術的には、もう既に殿堂入りレベルである事は間違いないと思う。ただ、その技術の高さに、現時点ではチームメイトやコーチが付いていけていないというのが私の印象である。シンシィというチームがこの稀な才能を活かしきっていないという印象である。 プレイヤーに関して云えば、直に慣れてくるだろうが、コーチ陣に関しては、正直私は不満である。具体的に、何処をどうとは言えないのであるが、印象として、特に、マーヴィン・ルイスが彼をまるで活かしていないという感じである。並みのQBの様に扱っている感じである。もっとも、ダルトンを活かせるのなら、カーソン・パーマーで既に結果を出していただろう。シンシィが一時代を築く気があるのなら、ルイスを更迭して、それこそベリチッククラスの勝つHCを連れてくるべきだろう。もし、そういうHCを連れて来れ無かったならば、パーマー同様、ダルトンにも愛想を付かされて、チームを出て行ってしまわれるのでは無いだろうか。上にも書いたように、ダルトンは、文句なしにパーマー以上、まさしく王朝を作れるだけのQBであると思うので、それは何としても避けて欲しい。 さて、そのダルトンの相棒となるA.J.グリーンとジャーマイン・グレシャムであるが、こちらも文句なしに素晴らしいプレイヤーである。 まずは、グリーンであるが、技術的身体能力的に先代のカルビン・ジョンソンと比べられる事は多いだろうが、ルートランにやや甘さのあるジョンソンと比較すると、私にはむしろグリーンの方が上の様に思う。スピード、ジャンプ力、クイックネス、ハンド、ルートラン、何をとっても文句を付けるところはひとつも無い。まさしくコンプリート・パッケージといった感である。ランディ・モスの再来といって良いだろう。あと、性格も、モスと違って、マジメ君らしいが、WRというポジションの性格上、これが凶と出るか吉と出るかは微妙なところだろう。 そして、もう一人の相棒、ジャーマイン・グレシャムであるが、こちらは同期のライバル、ジミー・グラハムに些か差を付けられてしまった感があるが、才能、TEとしてのプレイの質は、文句無しにグレシャムの方が上だと思う。というか、ゴンザレスやゲイツといったおっさん連中を除けば、現役ではナンバーワンTEだと思う。つうか、ゲイツやゴンザレスを入れても、生産性はともかく、技術や才能といって面では、間違いなくナンバーワンだと思う。ただ、惜しむらくは、その技術や才能というものが、TEというポジションは、WRやRBと違って、あまり正確に生産性に反映されないんだよなあ。 グレシャムの切れ味鋭い、美しいルートランニング、そうして、ギリギリまで捕球体勢に入らぬ事で象徴される高度なレシーブ技術、まあブロック能力はつぶさに観察している訳でもないので、よく分からぬが、そのルートランとレシービング能力は、TEというポジションでは勿論、TEというカテゴリーを取り去っても、現今のレシーバーの中ではトップクラス、あるいはナンバーワンと言っても良いかもしれない。グタグタのグレハムとは全然違う。フットボールを好きな人が見たら、惚れ惚れするような動きである。ただ、惜しむらくは、何度も書くが、TEというポジションの性格上、直接スタッツに結び付かないんだよなあ。TEのスタッツというのは、どっちかというとQBが作るものなんだよなあ。しかも、シンシィのQBは、上にも書いたように、ダルトンという職人気質、名人芸の男であるから、簡単なTEへのパスは、なんとはなしに軽蔑、敬遠してしまうだろう。ブリーズのように、その身体的特徴から、どうしてもTEに投げがちなのとは、あまりに対照的である。今季のブレイディの場合は、これはもう戦略的なものであろう。 グレシャムとグレハムの関係は、ちょうどウィンスローJrとゲイツの関係に似ているといって良いかもしれない。技術的にはウィンスローだが生産性や栄光はゲイツという関係に良く似ている。ホント、因果なポジションだのう、タイト・エンドって。 グレシャムの栄光はともかく、このグレシャムにA.J.グリーン、アンドレ・コールドウェル、そうしてシップリーが復活すれば、シンシィのオフェンス陣はまさに磐石であろう。セドリック・ベンソンのRBにやや不安を感じるが、RBなんていうのは何とでもなる。あとは、かつてのコルツのように、スキーム込みのHCを連れてくれば、AFC北のみならず、王朝を作る事も夢ではないのではないだろうか。グルーデンを、そのままHCに昇格させるのも、ひとつの手だろう。いずれにせよ、もう既に手駒は揃っているといってもよい。現時点でも、ワイルドカード・プレイオフ」敗退なんてチームではない。あとは、経営陣のやる気ひとつだ。 2012/2/15(水) |
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2012年 Divisional Play Offs |
1月14日 DEN@NE 10−45 |
ブレイディってパントも蹴れるのな。マニングも蹴れるのかなあ。 さて、DEN@NEの観戦記である。前回、つうか前々回ぐらいから、CIN@HOUの観戦記を書くといいつつ、民主党政権のように先送りしているが、そのうち書きます。このままだと、「書く書く詐欺」になってしまうので。「書く書く詐欺」って、誰も損してないけど。 CIN@HOUの観戦記といっても。実質的にはダルトンとA.J.グリーンとグレシャムについて書く予定なので、観戦記という感じにはならないだろうけど。プロボウル頃を目途に。 その前に、今回はティーボーの結末を。 まあ、さすがに厳しかったか。唯一期待した天候もピーカンとまではいかないが、十分普通の天気だったし。しかし、5,6年前まで、この時期のフォッテンボローといえば、何かつうと雪だ吹雪だの印象があったが、NEがパスオリエンテッドのチームになるにつれて、好天候になりやんのな。あいつら、天候も操作できるんか。何年前だったかは忘れたが、NEとコルツとのプレイオフのゲームで、TV放送のファーストシーンが猛吹雪だか強風だかの空を映していて、それを見た瞬間、「終わった。」と思ったのを、懐かしく思い出す。懐かしくねえわ、苦々しい思い出だわ。 話をデンバー戦に戻すが、天候のサポートでもなければ、どうしてもこういう結果になるわな。今のデンバーは接戦での勝利か大敗しかないので、その後者が出たのがこのゲームになろう。ベリチックが出させたとも云える。 このゲーム、デンバーの敗因はいろいろあり、ティーボーやディフェンス陣を初め、いろいろと責められるだろうが、何より痛かったのは、寒冷地という事でキッキング、特にパントの距離が思うように伸びず、デンバー陣に張り付け状態だったという点だろう。ディフェンスの頑張り、パンターおよびキッカーの飛距離、ジョン・フォックスの粘り強い采配、そうしてティーボーの魔力というデンバー必勝4つの条件のうち、最も大事だったのは、このパントの飛距離だったという事だろう。これが、デンバーの数多くの欠点を隠していてくれていたのだ。レギュラーシーズンのBUF戦は、その格好の見本だったという事になる。 そういった意味では、このゲームがマイルハイで行われていたら、また違った結果になっていたかもしれない。また、PITの面々からすれば、「何で、ハインツでやらせてくんねえかなあ。」といったところだろう。 ティーボーのクォーターバッキングについては、前々回の記事にも書いたが、ショートパス、すなわちタイミングパスやスクリーン、チェックダウンが無いというのが一番の欠点だと思う。このゲームは、それが大きく露呈した試合だったと云えるのではないだろうか。ベリチックが浮き彫りにしたとも云えるが。 あれだけ、露骨なパスラッシュやブリッツを受けて、スクリーンひとつ掛けられないというのは大きな問題だと思う。スローイングのメカニズム的に改善は難しいと思うが、来季に向けての大きな宿題だろう。守備リードは正確なだけに、何とも惜しい。何か上手い解決策は無いだろうか。自身のスクランブルだけでは限界がある。 話はちょっと変わるが、ティーボーというのは高校までホームスクール、すなわち自宅学習をしていたみたい。それで、高校には、その辺の法的根拠はよく分からんが、あくまでフットボールをするために通っていた、あるいは高校のフットボール部に混ぜてもらっていたみたい。んで、更には、自分に合う、あるいは自分の好きなフットボール・スタイルの高校を求めて、あちこち転々としていたみたい。「転々」は大袈裟かもしれないが、何回か所属チームを変えている。彼の、今時の選手には珍しい、荒削りなスタイルは、そういうところにも原因があるのかもしれない。なんというか、基本的な、あるいは教科書的な指導を受けていないというのは、もの凄く感ずる。 それはともかく、これで今季のティーボーは終了であるが、私個人的には、そのマニングの対極に位置するクォーターバッキングには非常に楽しませてもらった。そうして勉強させてもらった。素直に感謝したい。また、NFLサイドも興行的に非常に感謝している事であろう。これだけ人気のある選手というのは、モンタナ以来、エルウェイ以来、下手すれば、それこそNFL始まって以来の選手ではないだろうか。スポーツ界という括りでみても、それこそジョーダン以来じゃないだろうか。それ以外に、比較対象はちょっと思い浮かばない。 来年以降、今の人気が維持する、そうして結果が上昇するかは分からんが、デンバーは彼の為に凄腕のレシーバーを用意して欲しいと思う。多少無理して、デショーン・ジャクソンなりブラックモンなりを獲りにいっても良いだろう。そうして、ディフェンスをちょっとづつ改善していけば、いまの西地区の状況からいって、向こう5年くらいはティーボーを中心にプレイオフコンデンターであり続けられるのではないだろうか。 さて一方、ニューイングランドであるが、これで久方振りのAFCチャンピオンシップ進出である。久方振りっつても3年振りだけど。とはいっても、それより先はなかなか厳しいのではないかなあ。あのディフェンスでは、フォスターが出てくるにせよ、レイ・ライスが出てくるにせよ、なかなか止まらないんじゃないかなあと思う。それを補うだけの得点を、ウェイド・フィリップス相手、ボルチモア相手に出来るかというと、これまた厳しい様な気がする。もうすぐ行われるHOU@BALが、事実上のAFC決勝になるんじゃないかなあ。 最後に、話はちょっと変わるが、今季のスーパーボウルは、コルツファンなら周知の通り、インディアナポリスでの開催である。そこで、ニューイングランドが登場するというのは、コルツファンにとっては何とも苦々しい。地元が荒らされるというのは、まさしくこの事である。んで、ボルチモアが来ると、「因縁のインディアナポリスでスーパーボウルつうのもなあ、」という事になるだろう。で、ヒューストンが出場すると、「未だ勝った事の無いインディアナポリスか。」という事になる。何処が出ても、上手くいかんのお。 ジレット・スタジアムで「ベリチックを大統領に」つう、もの凄く有りがちなプラカードを掲げているファンがいたが、ベリチックの大統領はかなり厳しいと思うぞ。ある意味、つうか、どういう意味でも、全米有数の嫌われ者だし。49州で落選すると思う。 もうひとりのボーについては、すぐ書きます。これはホント。 2012/1/16(月) |
1月15日 NYG@GB 37−20 |
ハーボーについてはひとまず措いといて、とりあえずそのほかの2試合についての感想を少々。 さすがにディビジョナル・プレイオフになると、外見的にはともかく(一試合、例外はあるが、)、内容的には非常に面白い、考えさせられる試合が多い。 で、NYG@GB。負けちゃいましたね、GB。 負ける時はこんなもの、という典型的なゲームだったと思う。ターンオーバーが全てだったという典型的なゲームだったと思う。3つのファンブルのうち、どれかひとつでもロストしなかったら、GBに勝利が転がり込んでいたかもしれない。もっとも、正確には、4つの内のひとつが、誤審に近い形でロストにならなかったのであるが。 煎じ詰めてしまえば、一昨年末から昨年にかけて長々と続いていたGBのツキが一気に失われたという事だろう。昨季のスーパー制覇、そして今季の開幕14連勝で、GBとロジャースは無敵みたいな論調が数多くを占めたが、そこまでの力は無かったという事である。一時期のNEやコルツだったら、このゲームのように多少のターンオーバーがあっても、押し返して勝ってしまっていた。今のGBは、そこまでのチームではなかったという事である。 特にロジャースについての異常な高評価は、これで大分落ち着くと思う。一時期は、モンタナやマニング以上、史上最高のQBみたいな事までいう議論まであったが、私の見たところ、ロモより上、イーライより下、ぐらいである。特に、このゲームでも多く見られたが、スクランブル癖は修正しないと、もう一ランク上のQBには絶対なれないと思う。スクランブルの多さは、それこそティーボーより上かもしれぬ。パスラッシュやパスカバーを正確に読み取り、もう少しポケットに留まる事を覚えないと、いつまでたっても1,5流のままだと思う。スクランブルというのは、最も安易な解決策である。 と、負けた途端にいきなり酷評してみたが、そのGBが昨年、スーパーを勝ち、今季、開幕14連勝をしたことも、これまた事実である。いくらなんでも、ツキだけで優勝は出来ない。不可欠な要素だとは思うが、無論全てではない。必要条件であって、絶対条件ではない。 では、GBの強さって何なのだろうと考えてみると、それは選手個々、そうしてチーム全体の平均点の高さだと思う。ここが飛び抜けて素晴らしいという所はひとつもないけれど、ここが特別悪いというところもひとつも無い。ディフェンス、オフェンス、パス、ラン、ゾーン、マンツーマン等々、どのカテゴリーにおいても皆平均点以上70点、80点である。国語は100点だが、数学は30点、理科は90点みたいなバラつきは無い。英国数理社、全5教科皆75点みたいなチームである。それはチーム全体にも云えるし、選手個々にも云える。何か特定のジャンルがもの凄い選手は一人もいないが、強烈な欠点を抱えている選手も一人もいない。WR陣を例にとれば、皆それぞれ、ハンド、ルートラン、RAC、ランブロック等々を平均点以上にこなすが、特別足が速いとか、ミラクルキャッチ連発みたいな選手は皆無である。他のポジションでも同様の事が云える。強いて例外を上げるとすれば、TEのジャーマイケル・フィンリーぐらいか。チャールズ・ウッドソンも、かつてはともかく、現在は平均点組だろう。 何というか、将棋で云えば、全ての駒が「銀」みたいな布陣である。全ての駒が「銀」だと、かなり強くなってしまうか。「歩」以外全部「銀」、いや「歩」以外全部「金」みたいなチームであろう。 ここで、面白いのは、こういう平均点の高さで勝負するチーム作りというのは、洋の東西を問わず、否定されてきた考え方であるという点である。チームというのは、フットボールで云うところのプレイメーカー、なにか圧倒的な力を持った数人、もしくは一人の選手を中心に、その選手の長所を活かし、短所を隠すようなチーム作りが理想とされてきた。 数年前のSDのディフェンスを例にとれば、メリマンという強力なパスラッシャーを中心に、その反対側に彼の補助として同じパスラッシャーのショーン・フィリップス、そうして彼等をパスラッシュに専念させる為にNTジャマール・ウィリアムズを中心にランストップに長けたDL陣、そうしてILBにはパスカバーの上手いドニー・エドワーズ、両コーナーはマンツーマンCB、そうしてSは、まあいいか。という感じに凸凹をいかに上手く組み合わせるかというのがチーム作りの常道だった。 コルツファンは薄々感づいているかもしれないが、この常道を、あまりにも極端な形で実践したのが、申す迄もなく、ここ10年のコルツである。マニングという不世出のタレントを中心に据え、このマニングの能力を最大限に活かす為だけに、オフェンス陣どころか、ディフェンス陣も、スペシャルチームはともかくとして、コーチ陣まで、このマニングの為だけに構築した。その最悪の結果が今季である事は言うを待つまい。ロジャース欠場ながら、控えQBのマット・フリンで、今季の最終戦、ライオンズ相手に45得点したGBとは、あまりに対照的である。 と、こんな書き方をすると、こういうコルツ的なチーム作りは時代遅れみたいな論調になるが、私は決してそうは思わない。コルツやSDのようなチーム作りが、これからも常道だと思う。実際、このゲームでも、極端な例を出して申し訳ないが、GBにティーボーのような選手がいたら、奇跡の逆転勝ちもあったかもしれない。GBが14連勝中、一度も逆転勝ちが無い(確か。記憶だけで書いているので、違うかもしれません。)、常にリードして、そのまま逃げ切ったゲームだったというのは、その辺の事情を暗示していると思う。 という訳で、私はあくまでスーパースター中心派なのであるが、ここでちょっと面白いのは中日の前監督、落合博満が「チームってのは、走攻守全てにバランスの取れた選手を集めた方が強いんだ。俺はそういう選手を集めてきた。足だけ速いとか、飛距離だけがあるとか、そういう選手は俺は要らない。」というような、今のGBを支持するような発言をしているという点である。まあ、落合の言う事なので、そのまま鵜呑みには出来ないだろうが、こういうGB的な、あるいは落合発言的なチーム作りもこれからは有りなのかもしれないと、このNYG@GBを見つつ思ったのも、また事実である。特に、スポーツ指導、スポーツ教育が全世界的に洗練されてきた昨今では、このGB式落合発言式チーム作りの方が合理的なのかもしれない。かつての不良少年の延長でプロスポーツマンになりました的なベーブ・ルースや金田正一の時代は、もう既に終わってしまっているのかもしれない。まあ、そういう中でも、ティーボーみたいのが出てくるのが、世の中の面白いところだけれど。 一般論だけではつまらんので、個人評を少し。 まず、イーライ・マニング。これで2度目のスーパー制覇、すなわちペイトン越えにまた一歩近づいた訳であるが、このひと、なんつうか、下の名前がスミスとかジョンソンとかワールド・ピースとかだったら、もっと高く評価されている選手だと思う。家族が有名人という事で、異常に過大評価される人間は、古今東西、後を絶たぬが、家族が有名人という事で過小評価されている人は、この人ぐらいだと思う。他に例を挙げるとすればIMARUぐらいか。いや、違う違う。 IMARUはともかく、チームをプレイオフ・コンデンターに導き、毎年3000ヤード以上20タッチダウン以上し、スーパーボウルを1度制覇しているQBに対し、世間の評価は低すぎると思う。マニングって、因果な名前だのう。改名すっか、ワールド・ピースに。 個人的に今年一押しの、ビクター・クルーズ。彼にギャルソンと同じ匂いを感じているコルツファンは私だけではあるまい。中米出身のWRというのは、ちょっとしたトレンドになるかもね。 あと、そのクルーズとマニングハムとニックス、背格好似過ぎ。背番号を見ないと全く区別がつかん。そういえば、スティーブ・スミスも似ていた様な気がする。ジャイアンツの戦略か。似たような背格好のWRを集めてDB陣を混乱させるという。あんま効果なさそうだな。 あと、ドナルド・ドライバー。敗色濃厚のゲーム状況下で、ただ一人、ベストパフォーマンスを見せていた。これは忘れず書き添えておきたい。さすが、リーグ1の人格者。 2012/1/17(火) |
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1月15日 HOU@BAL 13−20 |
コールドウェル、解雇されちゃいましたね。遅かれ早かれ解雇はされるだろうが、私は個人的にはこの人事には反対です。勿論、コールドウェルが有能なコーチであると強弁を振るう心算は毛頭無い。お世辞にも有能なコーチではないだろう。無能といっても良いかも知れぬ。でも、その無能にはひとつの長所があって、少なくともチームに迷惑は掛けていないという事である。チームを勝たせる力は無いが、チームを負けさせる力も無いと思う。一口に言ってしまえば、人畜無害である。そうしてそれが、彼の唯一の処世術であろう。こういう人畜無害な人って、意外に少ないからである。そうして、そういう人畜無害な人が必要な人事状況の時というのが、どんな組織にもあるからだ。そうして今のコルツがそういう時期だと思う。 今のコルツは、よく一口に「再建期」「Rebuilding」と言われるけれども、私の思うに、今のコルツは「再建期」のひとつ前の段階「解体期」であり、それも相当の難物であると思う。前DCのコイヤーが手を焼いていたのと同じ、あるいはそれ以上のことがオフェンスに、そうしてチーム全体に起こると思う。しかも、その中心には難物中の難物ペイトン・マニングがいる。ブレット・ファーブ級とみて、まず間違いないだろう。低く見積もっても、1〜2年懸かるのではないだろうか。オフシーズンだけで、ちょろちょろっと済ませてしまえるような建造物ではない。 そういう難しい時期に新HCでは、却って、というか非常にやりづらいのではないだろうか。おそらくチーム成績も思うように伸びないだろうし、その責任の鉾先は、どうしても新HCに向いてしまう。彼の能力や真価を発揮できぬまま終わってしまう可能性が高い。ちょうど10年近く前のジム・モーラのような感じになるのではないだろうか、直接見ていたわけではないが。というより、当時より実績があるだけに、よりやりづらい状況だろう。ひとつ間違えれば、それこそバッファローやマイアミのようになる事も十分考えられる。 というような難しい時期だからこそ、人畜無害のコールドウェルが適任であるように私は思っていたのだ。コールドウェルを矢面に立たせて、その裏でコソコソと、そうして確実にチームをグリグソン色に染めてしまうのがベストなやり方のように私は思っていた。そうして、チームが固まってきた所で、コールドウェルにはお慰み程度のボーナスを与えてお役御免、満を侍して勝つHCを連れて来る。これがベストだと思う。広島や西武での根本陸夫のやり方である。つうかまあ、ポリアンも10ン年前のコルツでは同様の事をしたのかも知れぬ。 でもまあ、初GM、39歳じゃ、新HC連れて来ちゃうよね。自分色に逸早く染めたいよね。新婚気分だよね。家具を新調しちゃうよね。アレックス・スミスで押し通すハーボーみたいな訳にはいかないか。まして、ドラスティック大好きなイーグルス出身だしね。腹芸は苦手とするところです、か。 という訳で、これから2,3年、グリグソンは苦い薬を飲むことになると私は予想する。まあ、私の予想なんていい加減で当てにはならぬものなので、一コルツファンとしては、良い結果が出ることを期待しています。 という訳で、本題のHOU@BALに入りたいのであるが、その前に前回の記事NYG@GBの補足。 前回、私はこのゲームのGBの敗因はツキの無さだと書いたが、究極のツキの無さを書くのを忘れていた。前半終了間際の「んなアホな」的なヘイルメアリーである。 残り6秒GB陣37ヤードタイムアウト無しというシチュエーションである。私は駄目元でFGを蹴るかなと予想していた。おそらく、GB側もそのように考えていただろう。ところが、オフェンスチームが出てきてショットガンフォーメーションである。私は、この時点でも、サイドライン際に速いパスを投げて、距離を縮めるのかなと考えていた。GBもそう考えていたに違いあるまい。そしたら、まさかのヘイルメアリーである。私は慌てた。GBも慌てただろう。「おいおい、ヘイルメアリーかよ。」っていうような追い方だった。 で、それが決まってしまうのである。ツイていないとしか言いようが無い。 だいたい、ヘイルメアリーなんていうものは普通は決まるものではない。私も8年近くフットボールを見ていて、決まったのを見た記憶は昨シーズンのHOU@JAXのあれしかない。あれも不運としか言いようの無いプレイだったが、今回のはそれ以上、究極の不運である。純粋なヘイルメアリーが決まったのは、私は今回初めて見た。 だいたい、ヘイルメアリーなんていうのは普通決まるものではない。まず、単純に考えて、オフェンス側はキャッチ、確保しなければならないのに対し、ディフェンス側は獲らせなければ良いだけである。個人の技術的に考えても難易度は全然違うし、それ以前にディフェンス側は落下地点に自チームを密集させるだけで、既に勝ちである。 しかも、オフェンス側はOL5人にQB1人がレシーブに参加できない、すなわち5人で獲りに行かねばならぬのに対し、ディフェンス側は、極端な話、11人全員でパスカバーに行ってもよい訳である。5:11、この時点で既に勝負はついていると言っても良い。 でも、この場面、このゲームでは2:2、そりゃ獲られるわ。前記したように、意外なタイミングで出したので、GB側は対応が遅れたのだと思う。そういった意味では、ギルブライトのコール勝ちとも云えるか。いや、云えねえわ。それでも追いつくわ。とりあえず、レシーブだけはさせないわ。 ただ、いずれにせよ、このプレイが決まった瞬間、ランボー・フィールド全体に「こりゃ、今日は駄目そうだな。」というムードが蔓延したのは間違いない。後半、真面目にやっていたのはドナルド・ドライバーだけだったと思う。 さて、いよいよ本題のHOU@BALであるが、実を云うと、このゲームに関しては、あまり書くことが無い。ディビジョナル・プレイオフ4試合中、最も考えさせられるところの無いゲームだったとも云える。 シンシィ戦の様子から見て、イェーツがもう少しやるかなと思っていたのであるが、さすがにシンシィとボルチモアではディフェンスの質が違うか。完全にルーキー君だった。この結果を何より喜んでいるのは、ほんとの話、シャウブだろう。シンシィ戦ではベンチにもたれかかっている姿がTVカメラに捕らえられていたが、あの時は確実に頭の中で、「こりゃ、俺、来年ヤベーな。」と思っていた筈だ。この結果に、ほっと胸をなでおろしている事だろう。 あと、もうひとつ意外だったのは、HOUが得意のゾーンブロックをあまり使わなかったという事だ。これは、件のコルツ戦も含めて、シーズン終盤あたりからこの傾向が見られるが、何か心境の変化でもあったのだろうか。ゾーンブロックあってのヒューストン、キュービアックだと思うのであるが。 あと、そのゾーンブロックの一件も絡んでいるのであろうが、フォースターが、何というか、OCの指示通り走っていないように感じた。確証は勿論ないが、自分の好き勝手に走っている印象である。 これほどの実力者がなんでドラフトされなかったのかなと私は不思議だったのであるが、なるほどそういうことか。彼がドラフトされなかったの、ひとつには怪我、もうひとつは物凄くわがままというのが理由であったそうであるが、怪我だけでは、いくらなんでもドラフトされないまではいかないので、この我儘というのが最大の要因なのであろう。デビューイヤーは、おとなしくOCの言うことを聴いていたが、実績を作った今季は少し自分の好きなようにやらしてもらう。そうして、来季は好き勝手のやるという事か。OCの指示通り走らないWR、OCの指示通り投げないQBにはまだ価値はある。しかし、OCの指示通り走らないRBには何の価値も無い。 BAL側は、今更書くことは無いなあ。もう完全に飽きているし。強いて言えばフラッコーか。大好きなメイソンとヒープがいなくなったら、今度はボルディンばっかり。お前、どんだけ一途やねん。女の子から嫌われるタイプやどー。「あなたの愛は重すぎるの。」とか云われちゃうぞ。もう少し浮気せい。 あと何か変な髭を生やしていたが(なんかの漫画に、あんな髭をしていたオカマキャラがいたのだが、名前が全く思え出せん。)、あれ、完全にキャラ作っとる。フック作ろうとしてる。そのうち、語尾にキュービーとか付け出すんじゃねえだろうな。 そんなしょーもない話はともかく、これでAFC決勝はBAL@NEという、何かすっかり手垢にまみれたカードになってしまったのであるが、勝敗予想は、どっかにも書いたとおりBALで。レイ・ライスが止まらないと思う。BAL相手に、それ以上に点を獲れるとも思えんし。 しかし、これでSFが出て来ると、ホントにハーボウルになっちゃうんだよなあ。BALもジム・ハーボーもインディには因縁があるし。イーライとブレイディが出てくるのもなあ。なんか、インディアナポリスが荒らされるなあ。まあ、いんだけどさ。ジム・ハーボー凱旋試合で。アングル、ありすぎ。 12/1/19(木) |
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1月14日 NO@SF 32−36 |
さて、いよいよ真打ちハーボーの登場である。 このゲームはハーボーにとっては苦笑いのゲームだったのではないだろうか。ゲーム後の表情もそんな感じだったようである。余談になるが、ハーボーというHCは、ゲーム終了後、その感想がそのまま表情に出るタイプだと思う。結構珍しいタイプではないだろうか。 そのゲーム後の表情は、私の見たところ「苦笑い」といった感じだった。そのココロはすなわち、ほぼゲームプラン通りに試合を進めながら、それとは全然違うところで勝敗が決したという点である。ゴアのランが思った程出なかったにせよ、ハーボーのゲームプラン通りに試合は進んでいたと思う、残り7分くらいまでは。しかし、残り7分からの両者2TDsづつ、合計4TDsはハーボーの全く計算外だったと思う。 とりあえずは、ゲームプラン通りいった所から書こう。 このゲーム、SFにとって最も大事な点は何よりNOのランを止める所だったと思う。それはほぼ完璧に達成されたと思う。ランを封じ事により、結果ブリーズは無茶投げを強いられ2Intsを喫する事になった。もっとも、その無茶投げが最後の2TDsも生む事になるのだけれど。 ショートヤーデージ、数字で云えば3〜5ヤードほどのランが封じられると、ブリーズは以外に手詰まりになる。この辺はマニングやブレイディ、スタッフォード、ダルトン等との決定的な違いだろう。 ランを封じられた時のマニング、というかマニングの場合は自ら進んでランを止めているのであるが、それはともかく、ランが無くてもマニングの場合はオフェンスを進ませる事が出来る。それは勿論、ノーハドル&オーディブルで敵のディフェンスを操作することが出切るからである。 ブレイディやスタッフォード等は、ショートヤーデージのランを封じられても、それに変わるプレイ、クイックアウトやクイックスラント等々の所謂クイックヒットのパスでそれを代用できる。 しかし、ブリーズは背が低いので、3歩バックしてのクイックヒットというのがどうしても出来ない。一応ショットガンからは出来るが、この場合はバレバレになる。これがブリーズの決定的な弱点である。まあこれは、彼の身体的欠陥によるものなのでブリーズを責める事は出来ないが、ほかの諸能力がほぼ完璧に近いだけに実に惜しい。実に惜しい。 この身体的弱点を衝いてハーボーはゲームを有利に進め、ターンオーバーレシオ5−1という思わぬ副産物まで得た訳である。ゴアのランが思った程でなかったのは、これもゲームプランのひとつだったのか、それとも完全に計算外だったのかは分からぬが、それにしても完全にSFのゲームだった事は間違いない。ターンオーバーレシオが4である事を加味すれば、アレックス・スミスが平均点以上のQBだったら、45−27ぐらいで勝利してもおかしくないゲーム展開だった筈である。それが、こんな劇的な結末になったのは、ひとつにはスミスのしょぼさ、もうひとつはストロング・セイフティ、ドンテ・ウィットナーのアホさ加減であろう。 スミスのしょぼさは前々から分かっていたのに対し、ウィットナーのアホさ加減に関しては、このままSFが負けていたら完全に戦犯である。サンフランシスコを追放になってもおかしく無いレベルである。ケアレスミスで済むような話ではない。 ウィットナーのアホさ加減というのは、もちろん終盤二つの、ゲームを無駄に面白くしたオーバーパシュート&タックルミスである。あの場面、セイフティに求められるのは確実なタックルだけである。余力があれば、パスカット&インターセプト狙いであろう。それがTDにつながるタックルミス、それも一度ならず二度までも、しかも二度連続である。私がGMならば、彼とは来年契約しない。セイフティ、それがたとえストロング・セイフティであっても、セイフティに最も求められるのは確実なタックル、所謂セイフティ・ファーストであるからだ。派手はインターセプトやハードヒットはあくまで余技である。 あの場面は、それぞれ6点差5点差という事で、タッチダウンさえ奪われなければ良いシーンである。確実にタックルで仕留めておけば良いシーンである。まあもっとも、セイフティに無理してハードヒットやパスカットをしなければいけないシーンなんていうのはほとんど無いのであるが。 ウィットナーは、この2つの致命的なミス以外にも、ゲーム最序盤、自陣レッドゾーンでピエール・トーマスにハードヒットからファンブルフォ−スを奪い、このゲームの勝因のひとつにもなっているが、そのプレイでも、ファンブルフォースのあと、セレブレーションに勤しみ、インプレイ中であるにもかかわらず、ボールをリカバーしにいっていない、あるいはブロックに備えていなかった。まあ、なんというか、そういうレベルの選手という感じがした。 一方では、こういう選手が全体8位でバッフォローに指名されているというのも、なんとなく分かる様な気がした。大学レベルでは、おそらく彼は、常に出足が鋭く、ハードヒットで鳴らした選手だったろう。そうして、常にボールの絡む事から、非常に目立つ選手でもあったろう。また、このゲームのようなオーバーパシュート&タックルミスをしても、オハイオ・ステイトという事でチーム自体が強いので、さほど目立たなかっただろう。どころが、バッファローはチーム自体が弱いので、その長所より短所が目立ち、金銭的な理由もあるだろうが、そのままリリースされてしまったという事だろう。 さて、そのウィットナーのミスはアレックス・スミス&バーノン・デービスによって救われる訳であるが、これはもう完全に結果オーライであろう。後に詳述するが、スミスの駄目さ加減が裏の目で出たという二つのタッチダウン・ドライブだったと思う。SFのプレイオフ終盤でのタッチダウン・ドライブという事で、早速モンタナのそれと比較する記事が出ているが、モンタナのそれには遠く及ばない。というか月とスッポン、月とスッポンのウンコである。モンタナのそれは、モンタナの完璧な計算と技量によって生まれたものであるが、スミスのそれは単なる偶然である。ドサクサに紛れて何とやらである。 スミスのクォーターバッキングを、この試合に限らず、この1年間何ゲームか見てきたが、とにかく感ずるのは、プレイブックに対する理解の浅さである。ひとつひとつのルートの意味、ブロックの意味というのを、全くといったら語弊があるだろうが、浅くしか理解していない。「そこが第1ターゲットだと指示されているから投げました。そこが空いていなかったから、良さそうなところに投げました。」みたいなクォーターバッキングである。この場面の最優先事項は何なのか、そのレシーバーがそのルートを走る意味が何なのか、ブロッカーがそのように動く意味が何なのか、まるで理解していない、というか理解しようという意志が感じられない。 その端的なプレイが、以前私が指摘した、そうしてこの試合でも見せて、実況の近藤さんが思わず「えっ。」って言ってしまったプレイアクションからのスクリーンだろう。プレイアクションからのスクリーンなんて言い慣れていないので、近藤さんは思わず「えっ。」って言ってしまったのだ。 こうしたプレイを見ていると、彼が6年もの間、腐っていた理由も良く分かる。この最大の要因は、オフェンス・コーディネーターが毎年変わったことにあるとされているが、確かにそれが大きな要因かもしれぬが、逆に云えば、アレックス・スミスがOCの用意したプレイブック、あるいはOCの意図を全く理解できない、あるいは理解しようとしなかったとも云えるのではないか。大体6人もいれば、1人ぐらい自分と相性の良いOCがいた筈である。そういった意味では、自分と相性の悪いOCの意図を十二分に理解し、それなりの結果を出してきたマット・ライアンとは好対照とも云えるかもしれない。身体的な能力や技術は全く問題ないだけに、ブリーズとはまた違った意味で、実に惜しいQBである。 このハーボーは、そのスミスが初めて出合った、結果を出してくれるOC、つうかHCであるが、そのハーボーは彼の事をどのように評価しているのであろうか。終盤2つのTDの内の一つ目、スミスのTDランなどを見ていると、結局のところは信用していないのかなとも思う。 あの場面、ハーボーが何かやってくるなと感じていたのは私だけではないだろう。1点差・サードダウンという事なら、スペシャルプレイで失敗しても、そんなには痛手にはならない。で、直前でタイムアウトを取っている。そこから、ショットガンで構えてノーバックという事なら、「何かある。」と誰もが考えるであろう。私は誰かをモーションさせて、そこにピッチ、更にはそこからリバースみたいプレイかなと予想していた。NO側も似たような事を考えていたのではないか。ところが誰もモーションしないで(してたかな。)、「あれっ、何も無いのかな。」と思った矢先にスミスがオープンへのラン。ハーボーらしい、またQB上がりのHCらしい虚を衝いた素晴らしいプレイコールだったと思う。ちなみにこのシーン、LTのジョー・ステイリーが炎のリードブロックを見せているが、OLだったら、やっぱ燃えるよね、こんなシーン。 で、このプレイコールそのものは、そのままタッチダウンにつながり大成功を収める訳であるが、その直後の2ポイント・コンバージョンでは、この日。結果の出ていないゴアのパワーランをハーボーは選択、結果は失敗。「やっぱ、スミスを信用していないのだな。」と私は思った。普通、あれだけ派手なプレイを成功させた後なら、その勢いを買って、スミスのパスを選択するだろう。仮にインターセプトされてもリターンは無い訳だし。この瞬間、ハーボーのスミス観がようおく分かった様な気がした。来季はどうするんやろ。 さて、このタッチダウンの後、前述したようにアホのウィットナー二つ目のオーバーパシュート&タックルミスが出て、SFは再度リードを奪われて、残り1分37秒3点差自陣15ヤードからになる訳である。まあ、さすがに私はこのシーンでは終わったかなとも思った。自陣15ヤードだとスペシャルプレイも使いづらいし、FG圏内までとはいえ、スミスには難しい距離だと思った。サイドラインでの表情、その後のプレイコールを見ても、ハーボーも諦め気味かなと思った。 ところが、このシーン、スミスのしょっぱさ加減が奏功してしまうのである。時計の止まらぬインフィールドへのパス二つで自陣33ヤードまで進むと、そこで一発スパイクして残り40秒、そこからまさかのTEバーノン・デービスへのポストパターン、これが結果的に47ヤードのロングゲインになる。この場面、普通はサイドライン際に投げてFG圏内まで進めるのが定石である。タイムアウトがひとつ残っていたにせよ、である。ポストパターンのTEに投げて、20ヤード前後でタックルされたら、事実上終わりである。スパイクすれば20秒ほど使ってしまうし、タイムアウトを使えば、その後のプレイが大きく制約される。「大きなRACからサイドラインに出る」が条件のプレイであったが、結果的にはそれが出た。 典型的な結果オーライのプレイだったと云えよう。今、私が考えた事とそっくり同じ事を、NOとそのDCグレッグ・ウィリアムスは考え、サイドラインを固めたら、その裏をかかれた訳である。サイドラインを固めている分だけ、RACも出てしまったという事だろう。 それを意図して、スミスが投げたという説も無くは無いが、その後のTDパスなんかを見ても、大好きなバーノン・デービスが空いていたので投げたというだけだと思う。プレイブックへの理解の浅さが生んだプレイだったと思う。プレイブックを深く理解していれば、あの場面、TEのポストになんて普通は投げない。 今、チラッと書いた最後のTDも、ひとつ間違えれば、インターセプトイが有り得たプレイだったと思う。そんなにガラ空きでは無かった。FGで同点のシーンで投げるパスではないと思う。まあ、全ては結果論なんだけど。 さて、その、この試合のMVPバーノン・デービスであるが、TD直後はちょっと涙ぐんでいた。今迄気楽にやっていた弱小チームのTEから本物のTEになる為に様々な要求がされたと言われる今季の苦しさ、年下のジミー・グラハムの活躍、そうして勿論このゲームの重大性等々、様々な感情があのシーンで爆発したのだと思う。「NFLナンバー1TEは、俺だ。」みたいな感情だけではなかったと思う。NFLに限らず、あくまでビジネスとしてスポーツをしているプロスポーツ選手が、ゲーム中に泣くというのはなかなか珍しいと思うが、あのハーボーと抱き合ったシーンは、プロスポーツではなかなかお目にかかれぬ本当に良いシーンだったと思う。ハーボーにしても、自分のゲームプランを超えたゲームを救ってくれて、大感謝といったところだったろう。 話はちょっと逸れるが、TEがこれほどはっきりMVPとなる試合というのも意外に珍しいのではないだろうか。ここ各チームのTEが派手に活躍して、TEのスタッツもインフレ気味に鰻登りであるが、これだけはっきりTEがゲームの主役になる試合というのもなかなか珍しいと思う。ゴンザレスやゲイツ、ダラス・クラークがはっきりゲームMVPという試合を私はちょっと思い出せない。QBはともかく、WRやRBがゲームの主役という試合はいくらでもあるのだが。強いて云えば、NYGがスーパーボウルでNEを破った時のTEタイリー(今何処にいる。)のミラクルキャッチぐらいだが、この時も決勝TDはバレスで、MVPはイーライだった。 この辺がTEというポジションの特殊性だと思う。まあ、どうしてもフィールド中央に位置しているので、ここぞという時は、上に書いたような理由で、投げづらいというのがあるのだが。このゲームを機に、TEの職能が変わる、って事は無いか、やっぱ。その辺をまるで分かっていないアレックス・スミスが演出した特殊なゲームというだけか。 さて、これでNFC決勝はNYG@SFという80年代90年代ファンにとっては堪らぬカードになった訳であるが、勝敗予想はというと、ややNYG持ちかなあ。 NOと違って、NYGというのははっきりした型を持っていないだけに、ハーボーのプレイコール頼みのSFではかなり厳しいと思う。GB同様、ディフェンス、オフェンス、ラン、パス、それぞれ満遍なく強い、大きな武器も無い代わりに、大きな欠点も無いNYGに、SFは絡め取られてしまう可能性が高いと思う。 あと、このNO@SFを観ていて、つくづく思ったのであるが、SFは、件のスミス、ウィットナーを始め、弱点が多いなあという事である。本当にハーボーのプレイコールだけでここまで来たという感じである。シーズン中盤だったかな、CLE@SFの記事で、SFは戦力的にはブラウンズとさほど変わらぬと書いたが、それを再認識した。NFC決勝は、優等生のNYGを前に、SFの数々の弱点が露呈してしまうのじゃないかなあ。それを越えるハーボーのプレイコールやスミスの結果オーライが出るのかもしれんが。 話は大きく変わるが、ここまでプレイオフの多くのゲームを見ていて、一コルツファンとして思ったのが、「マニングいたら、勝ててたなあ。」という事である。今年のコルツはマニング以外は、そんなに致命的な怪我人はいなかったし、正直、今のAFCのチームで恐いチームは無いし、NFCはどこが出てきても何とかなったろうし、戦えたし、勝てたなあ。そうすれば、史上初の地元開催スーパー制覇の目もあったと思う。まあ、死んだ子の年を数える様なものなので、何を言っても埒は明かぬが。以上、一コルツファンの嘆きでした。あれっ、本題変わっとる。 2012/1/22(日) |