Week15 | 12月16日 IND@HOU 17−29 |
私は先週の記事で、このゲームは心理的に優位なのはコルツの方で、謂わば精神対肉体の戦いになるみたいな事を書いたが、実際のゲームでむしろ気合十分だったのはヒューストンの方だった。タックル一つ、シャウブのパス一つにはっきり現れていた。ゲーム開始まで、精神的に追い込まれていたのはヒューストンの方であり、「勝てば儲けもん。」みたいな気楽な気持ちでゲームに臨んだのはコルツの方であったが、いざ試合が始まってみると、それが逆に作用した。心の動きの面白いところである。コルツ的には「あれよ、あれよ。」という間の第一クォーター0−10だったであろう。 ただ、この手の気合というのは一試合丸々持つものではないので、この反動で、いずれチャンスは来るのではないかと私は見ていた。ちなみにゲームは生で見ています。それが第2クォーターの2度のレッドゾーンであったが、結果的にはここでFGの3点どまり、その後のパントブロックで流れを失い、実力差のそのまま出たスコアになってしまった。 17−29という訳である。第2クォーターに2度あったレッドゾーンでの攻撃のどちらかでタッチダウンを取っていたらとか、マカフィーのパントブロック・リターン・タッチダウンが無かったらとか、いろんな「たられば」はあるだろうが、17−29で敗戦、逆転地区優勝はなくなりました。 まあ、この17−29、12点差というのは、現時点での両チームの力の差を過不足無く正確に表している絶妙のスコアだったと思う。今のコルツとテキサンズとの力の差は、いろんな計算の仕方はあろうが、結論的には17−29の12点差、1.5タッチダウン差であろう。 まあ、これを「12点差も開いている。」という向きもあろうが、私は「もう既に12点差しか開いていない。」と見る。そもそも今季のコルツは再建期といわれ、ラックの修行の年という位置付けだったのが、14試合時点で、すでにAFC南首位のテキサンズと12点差である。来季は3点差でリードする。そうして、首位を返してもらおう。 という訳で、ゲームそのものに関しては、悔しいとかいう気持ちはあまり無いのであるが、以下、愚痴やら負け惜しみやらを並べてみる。 まずは、ウェイン幻のタッチダウン、ウェインの超絶足技の炸裂した幻のタッチダウンであったが、両チームファウルのオフセットってプレイ無効だったのね。プレイ有効と私は勘違いしていて、「両チームファウルか、よっしゃタッチダウン。」って、ぬか喜びしちゃった。 その前のメウェルデ・ムーアのファンブルロストに関しては不問に付そう。 んで、マカフィーのパントブロック・リターン・タッチダウンであるが、これはドェイン・アレンがスコーンと抜かれちゃったのであるが、それはともかくとして、確かに今季はNFLでパントブロックが多い。だいたい、パントブロックなんてプレイは、私はシーズンで50試合ぐらいNFLをゲームを見ていると思うが、それで1シーズン1回見るか見ないかぐらいのプレイである。それが今季はもう5回ぐらい見ている気がする。 解説の松本さんは、新CBAによる練習不足が原因ではないかという説を紹介していたが、練習不足つっても、そんなパントブロックなんか、高校時代から大きく変わるものじゃないだろ。カバー側は複雑なアサイメントとかあるかもしれんが、ブロックをプロテクトするのは単に1on1の技術じゃないの。偶々だとは思うけど、それとも何か新しいパントブロックの技術が発明されたのか。 そのパントブロックの戦犯であるアレンであるが、本職ではボールをキャリー、いよいよGバック化を進めるのね。よしよし。 んで、次はOL。これはこのゲームの大きな敗因であり、シーズン通じての課題でもあるのだが、とりあえず、メンツ固定してくれ。能力的にはともかく、怪我すんな。今季のラックはやり残したことはほとんど無いけれど、唯一のやり残し、つうか課題を克服できなかったのは、このOLのカスタマイズである。まあ、これはラックの責任つうか、OLの責任なんだけど。とりあえず、来季は丈夫なOLを設営してくれ。さすれば、賢いラックはOLをすぐにカスタマイズするだろう。 で、そのコルツOLをボコったJ.J.ワットであるが、思いっきり負け惜しみするけど、あれクスリ使ってんだろ。爆発しすぎだろ。同じ白人DEとしてはジャレッド・アレンという大先輩がいるけれど、アレンがパワー、スピード、テクニックの三者をバランスよく使ってのプレインであるのに対し、このワットは瞬発力、つうか爆発力一辺倒。筋肉増強剤というよりは興奮剤的なものを使ってんじゃねえの。クッシングという先輩もおるし。クレイ・マシューズなんかも同様だけど、白人パスラッシャーはどうしても疑いの目で見てしまう。ちなみに、ジャレッド・アレンには、そういう感じは無い。 んで、負け惜しみついでに、今のテキサンズを非難するが、AFC3強の中では、NE、DENに比べると1ランク力が落ちるという感じがする。プレイオフを勝ち上がるのはなかなか厳しいのではないか。 あと、このゲームでも感じた事であるが、キュービアックは、こういうちょっと追い込まれ感じになると、何かプレイコールが怪しくなってくる。前半の自陣1ヤードからのディフェンスでロールアウトを使ってみたりとか、追い込まれると訳が分からなくなってしまうというのは、昔から変わらない。コルツとテキサンズの力の差を考えれば、普通に攻めていればじわっじわっと点差が離れていった筈なのに、コルツを変に意識して無理なプレーコールをしてしまうというのは、前半多々見られた。ここで、コルツ側にラッキーなプレイがあれば展開も変わっていたかもしれない。上手く自滅に追い込めたと思う。 プレイコールと云えば、現在のコルツのプレイコールは攻守ともに私はかなり気に入っている。つうか新鮮に感じる。DBブリッツやディープボールを入れるタイミングなどは絶妙だと思う。ランブロック・スキームなんかも多彩である。今季のコルツが例年よりランが出るようになったのは、はっきりプレイコールのおかげであろう。 マニング&ダンジー時代はノーハドル&オーディブルとカバー2という事で、良くも悪くも変化の無いスキームだったので、その辺は新鮮に感じる。カバー2・スキームなんて事実上プレイブック無しみたいなもんだし、ノーハドル&オーディブルだって理想的にはプレイ数3つぐらいあれば十分なのだから、今とはえらい違いである。ランなんか、今から考えるとダイブみたいなプレイしかなかったように思う。 あと、そういえば、ヒューストンが地元という事でラックの高校時代のフィルムが紹介されていた。当たり前ちゃあ当たり前であるが、投球フォームは今と全く同じなのな。QBの投球フォームに限らず、あらゆるフォーム、スポーツに限らず、人間の運動メカニックが個々の体格に制限されるという事の証左である。逆に云えば、フォーム改造が如何に愚かな事かというのも良く分かる。フォームは作るのではなく、活かすものなのである。 さて、このゲームの話はここまでにして、前回の記事でプレイオフレース的には有利ではないかと書いたジェッツがマンデーナイトのテネシー戦でまさかの敗戦、今季終了である。その責任を取らされる形で、次戦からサンチェスはサイドライン、先発はティーボー、じゃなくてマッケロイが務めるそうである。いやなんかもう、支離滅裂だな。昼飯、ラーメン食うか天丼食うかで悩んで、結果ハンバーグ定食食っているみたいなもんだろ。 同じく、つっても、こちらはレベルの高い意味で2QB問題で悩むSFであるが、こちらはサンデーナイトでNEに快勝。スーパーボウル本命に躍り出た。 まあまあ、それは喜ばしい限りであるし、昨季から私はハーボーのやる事にはほとんど異論は無いのであるが、でもこのアレックス・スミスに対する扱いは酷いと思う。さすがに、スミスに同情する。単純に、QBとしてどちらが良いかと云えば、私もケーパーニックを取るけれど、でもスミスには辛すぎる。昨季からのハーボーのスミスに対する態度を見ていると、これ完全に二人目の女に対する態度だもん。とりあえずセックス目的でキープしておいて本命が出るのを待つみたいな。でも、本人の前では誠実な態度を採ってるみたいな。 契約状況はよく分からんが放出してやった方が良いと思う。扱い的には屈辱的だ。しかも、今、契約を調べたらサインボーナス無しなのね。何らかの代替的なものは用意してあるんだろうけど、ハーボー、酷すぎ。あなたって、酷い人ね。 ただ、そのスミスに対する態度はともかくとして、これでハーボーはキャリアで、ジョシュ・ジョンソン、ラック、スミス、ケーパーニックと悉くQBを成功に導いている。QB製造工場といって良いだろう。自信があるだけに、マニングに対する態度も煮え切らなかったという訳か。 次のKC戦は必勝だかんな。 2012/12/19(水) |
12月16日 SNF SF@NE 41−34 |
過日、CSの囲碁・将棋チャンネルを見ていたら、第36回NHK杯一回戦福崎文吾七段対羽生善治四段(!)の一局が放送されていた。何でも、羽生の始めてのNHK杯戦登場の一局であり、将棋ファンならお気付きかと思われるが、羽生が四段を名乗っている非常に珍しい映像である。ちなみに羽生は六段を最後に、以後20年近く段位は名乗っていない。 そうして、この放送の解説は、知る人ぞ知る石田和雄九段。将棋界では有名な名解説者(迷かな。)である。「これは見るっきゃない。」と噛り付きで1時間半見てしまった。面白かった。 ちなみに、将棋の名解説者の系譜としては、この石田和雄から先崎学、木村一基と続く。藤井猛も入れてよいかな。 将棋の、囲碁も同様だが、TV解説の面白いところは、現役棋士が解説するところにある。ほかのスポーツ放送では、洋の内外を問わず、あまりない。日本シリーズやオールスターなどの特殊な舞台では現役選手がゲスト解説のような形で登場するが、その多くは引退選手である。レギュラーシーズンのゲームを現役選手が解説する事は、まず無い。ところが、現役選手の解説というのは、やはり生々しいので、聞いていて非常に面白い。現実的にはなかなか難しいと思うが、ケガをして長期離脱中の選手を解説に呼んでみるのは非常に面白い試みだと思う。集音マイクで現場の声を聞き取るよりは、遥かに有益だろう。 ちなみに、私は、スポーツ放送における解説は非常に重要な仕事だと常々考えている。ある意味、現役選手より重要な職務ではないかと思っている。単なるプレイだけでは分からないものも、そこに解説書の言葉が付け加えられる事により、はっきりとした意味を持ってしまうからだ。まあ、それが正しい言葉、正しい解説ならば良いが、私が「HCの仕事」の記事で書いたダウンスウィングのように誤った解説をすれば、全国津々浦々に誤ったスポーツ理論が広がってしまうからだ。 私が先に「現役選手の解説は面白い。」と書いたのは、現役選手のほうが、現場にいるだけにより正しい解説が出来るからである。また、現役引退後1年目くらいの解説は、やはり同様の理由で面白い。ところが、それが5年も経つと、もうダメである。そこらのおっさん、飲み屋でクダを巻いているとオッサンと同じになる。引退後5年経過した解説者は、よほどの力量が無い限り、ドンドン首を切るべきだと思う。日本のプロ野球放送は、そういう無意味な解説者が多すぎる。具体名を挙げれば、江本、江夏、堀内、豊田、関根等々、ほとんど全部である。アメリカのスポーツ界でも事情は同じであろう。明らかに、現役引退後の腰掛け的な気分で解説している。そうしてそれを30年近く継続するのである。被害は物凄く大きい。野村克也が偉かったのは、今の耄碌した野村はともかく、ヤクルトの監督をする前の野村は、真面目に男子一生の仕事として野球解説者に取り組んでいた点である。それだけに、聞き応えがあった。聴く価値があった。聞く価値のある解説をしていたのは、この野村と落合、あと西本幸雄ぐらいのものである。もっとも、世間はそれらを優秀な解説者を、野村はパ・リーグの暗いオッサンと理由で、落合は巨人贔屓をしないという理由で嫌っていたのではあるが。もっとも、その両者が監督として実績を残すと、手のひらを返して賞賛をするのだから、何をか況やである。 日本の、あるいはアメリカでも同様かと思われるが、目の前のプレイの良し悪し、ゲームの勝ち負けについて云々するのも、それはそれで勿論結構であるが、そのスポーツの大きな流れ、そのリーグの大きな流れ、すなわち歴史をもっと勉強して欲しいという事である。先日、高津巨吾の本を立ち読みしていたら、「80年代はヨコの変化、すなわちスライダーの時代、90年代はタテの変化、すなわちフォークボールの時代」と定義していた。私も、細部の理由付けは異なるが、同様の見解を持っている。その見解はともかくとして、こういう視点を他の解説者にも持ってほしいと思う。現在は過去の結果であり、未来は現在の結果なのだから。 思わぬ方向に話が飛んだがNHK杯に話を戻す。この一局は今から見ると、いろいろな事が分かって大変興味深いのであるが、まず冒頭、名解説者石田和雄がいきなり「羽生さんの将棋は、感覚が新しすぎて、私には全く分かりません。」と、いきなり解説を投げちゃったのが、非常に印象的だった。それは、この一局のみならず、後の将棋界を暗示する言葉である。 そうして、対局後、感想戦で、司会の永井さん(懐かしい)に「福崎さん、NHK杯では、初めての一回戦敗退ですが、どうしましたか。」と問われた福崎がボソッと「相手が悪かったんですかねえ。」と答えていたのも非常に印象的だった。 まあ、羽生というのは、始めから「名人間違いなし」という鳴り物入り、それも鳴り物入り中の鳴り物入りで将棋界に入ってきた、謂わばスーパールーキー中のスーパールーキー、プロ野球の松坂やNBAのレブロン以上のスーパールーキーであったのであるが、それにしても、一年目にして既に別格のオーラをまとっていたという事になる。 実際、この一局も、元来奔放な将棋を得意とする福崎が非常に慎重な差し回しをしていた。羽生に対する意識過剰、コンプレックスの現れであろう。それも、何回か戦って苦手意識が生まれた上でのコンプレックスではなく、初手合いで既に抱いているのである。異常というか、特別としか言いようが無い。そうして、これは、後々、全ての棋士が抱く事になるものだ。最近の若手はちょっと違うかな。 このコンプレックスの根拠はいろいろあるのだけれど、ひとつには冒頭で石田の述べた「感覚が新しすぎる」という事もあろう。それ以前の将棋と、羽生以降、所謂羽生世代、チャイルド・ブランド以降の将棋の違いの一つは、将棋がより重層的になっている事、言葉を換えれば、駒の効率を重視する将棋に大きく変わったという点が挙げられると思う。それ以前の将棋は、駒効率という考え方も、勿論あったけれども、手の面白み、切った張ったの面白みに重点が置かれていたと思う。いかにもプロらしい鮮やかな手順を発見する事が棋士の仕事の様に思われていた。そうして、それが将棋の強さだとされてきた。その頂点が、所謂谷川の光速の寄せである。それが、羽生以降、一つの駒をなるべく効率的に使う、効果的に使うという考え方に変わってきた。圧倒的な駒得なんてシチュエーションは、ほとんど無い、とりわけプロの世界ならば、ほとんど無いのだから、両者の駒の数はほぼ同数という事になる。だとしたら、一つの駒をなるべく有効的に使った方が有利になる。羽生の将棋が「持ち駒をきっちり全て使い切る。」とか「盤上の駒全てに意味がある。」と評される事の多いのは、そうした思想の現れであろう。現代の将棋が、序盤・中盤重視なのは、当然この流れの中にいるからである。そうしてその潮流を作ったのは、羽生世代、とりわけ羽生善治その人であることは論を待つまい。どんなに優れた思想も結果が伴わなければ、世間は理解できないのは、先に述べた野村や落合の解説と同様である。 ただ、羽生の功績は、もとよりそれだけでは無いだろう。それは、この一局でも度々出てくるが、羽生の将棋というのは、素人が見ても玄人が見ても感心するような、そうして言葉の正しい意味で感動するような将棋が多い。石田が「ここに打ったらダメですね。」と解説しているところに平然と打ち、それが十手先ぐらいではっきり活きてくるなんていうのは典型的な羽生将棋、後年、それもこの時点からほとんど直後に言われる、所謂羽生マジックである。こういう書き方をすると石田和雄がボンクラみたいな感じになるが、石田は立派なA級棋士である。このような恥のかき方は、後の解説者がみな一様に経験するもので、石田が特別にボンクラな訳では決して無い。むしろ、冒頭に羽生の将棋を予見するような一語を発したところに石田の鋭さがあるといってよいだろう。外見からは想像つかないけれど。 しかし、このような素人が見ても玄人が見ても唸るような手というのは、普通はなかなか打てない、というか一部の選ばれた人間の特権であろう。無理矢理、NFLで例えるが、例えばティーボーのクォーターバッキングというのは典型的な素人受けするものであり、昨オフのエルウェイの態度に象徴的に見られるように玄人受けは悪い。また、逆にマニングのクォーターバッキングというものは、今でこそ明確な結果を残したので世間も認めているが、本質的には素人目には分かりづらい玄人好みのものである。ノーハドル&オーディブルやプレスナップ・リード、ポケット内でのフットワークなどは今でこそ常識であるが、キャリア3,4年目、私が見始めた当初でも、かなり批判されていた。「ノーハドル&オーディブルみたいなゴチャゴチャしたのは、害の方が多い。」なんて声は非常に多かった。結果を出したので認められたけれども、ノーハドル&オーディブルやプレスナップ・リード、ポケット内でのフットワーク等々、マニングの技術を本当の意味で理解している人は存外少ない。 素人目にも玄人目にも唸るようなクォーターバッキングといえば、モンタナぐらいであろう。ここで、察しのいいコルツファンなら気付いておられるかと思うが、私はライオンズ戦の記事で、ラックを、この羽生に比し、モンタナに比した。まあ、現時点ではどうなるか分からないが、2ミニッツ・オフェンスの上手さなどを見れば、ラックがこの羽生やモンタナ級のプレイヤーになる可能性は大いにあると思う。 という訳で、無理矢理NFLに話を戻したところで、この長い長い前置きを終える。コピペの間違いかと思った皆さん、ゴメンナサイ。ただ、こういう昔の試合、将棋に限らず、昔のスポーツの映像は、いつかも書いたけれども、後々が分かっているだけに、昔の新聞・雑誌を読むような面白さがある。単純に面白いだけでなく、勉強になる。どしどし放送して欲しい。グレーテスト・ゲーム・エバー・プレイドなんて、放送された絶対見る。 さて本題、SF戦である。去年はなにかつうとサンフラン事を書いていた印象があるが、今季はラック考察に忙しく、そこまで手が回らない。つうか、コルツ戦以外の記事は今季初だと思う。と思って、調べてみたら第1週のPIT@DENがあった。 っでまあ、NEに完勝した訳である。前半大量リードし、終盤追いつかれながらも、その直後にキックオフリターンと一発タッチダウンパスの2プレイで決勝点を奪い、そのまま勝利、謂わば横綱相撲である。シーズン序盤の調整段階のNEならともかく、シーズン終盤で臨戦態勢を整えたNEにここまで完勝した例は、この10年くらいで初めてでは無いだろうか。ちょっとした勝負の綾とか、運不運とかで敗れる例はあったが、これほどの完勝、NE側から見れば完敗だと思う。雨というのが、一つの大きなファクターにはなったと言えばなったけれど、それはいい訳にはなるまい。それもホーム、ジレット・スタジアムで、である。 なんつうか、このゲームを見て、強く印象に残ったのは、なんつうか「ハーボー、隠し持ってやがんなあ。」という事である。戦術にしても、プレイ・デザインにしても、プレイヤーにしても、まだまだ色んな武器を仕込んでいやがるという感じである。シーズン序盤ならともかく、シーズン中盤でこれは異常だと思う。ゲーム中、フットボール分析の権化ベリチックが「分からんなあ。」という表情を再三見せていたのが、私には印象的だった。 しかも、100ぐらい持っている武器のうち、まだ30ぐらいしか使っていないんじゃないかという雰囲気すらある。この試合に限っても、ヴォーノン・デービスは、ことレシーブに限っては、ほとんど使っていないのである、昨季の主武器であったにも拘らずである。昨今話題のケーパーニックだって、私は単なるワイルドキャット要員かと思っていた。そしたら、いきなりスターター・クラスのQBになっとるし。ジェッツファンが泣くよ。 この武器の多さの一つの証拠としては、今季のSFの対戦スコアが挙げられると思う。今季のサンフランは、昨季と違って、つぶさに観戦していないので、断言はしかねるが、非常に多種多様な戦い方をしている。その結果、スコアが非常にまちまちである。大量得点ゲームあり、大量失点ゲームあり、接戦あり大差ありと、最終スコアが非常に多種多様である。総じて、失点が少ないのが特徴と云えば特徴といえるけど、思わぬチームに20点以上奪われたりもしている。 この対戦スコアというのは、大概似たような数字が並ぶのが普通である。今季のコルツで云えば20点台の接戦が多く、マニングのチームならば10点差以上の勝利が多いのが特徴であろう。昨年のパッカーズだったら大量得点大量失点が多いという風にである。 ところが、今季のサンフランは、それがまるで一定しない。逆に云えば、どんな戦い方にも対応できるとも云えるであろう。実際、このゲームを見ていても、パスディフェンス、ランディフェンス、パスオフェンス、ランオフェンス、そうしてスペシャルチームにスペシャルプレイと攻守特に隙が無い。レギュラーシーズンなんていうのは、単なる調整期間としかみていない印象すらある。勝負に徹するプレイオフで、サンフランというか、どんな戦い方を見せるか、私は大いに楽しみにしている。 それとは別に、これはチームの強さとはあまり関係がないが、人事異動の少なさというのが、このハーボーのチームの一つの特徴かと思われる。 今季はハーボー2年目という事で積極的に動いてくるかと思いきや、結局、モスとマニングハムをとっただけ、それはジョシュア・モーガン離脱による、謂わば最低限の人事である。他はほとんど同じ顔ぶれ。ジェイコブスの加入も、そんなに深い意味は無いだろう。単なるデプス強化である。私の知る限り、この2年間で、ハーボーの行った積極的な人事は、昨季の開幕早々のテイラー・メイズ放出のみである。メイズはSとしては厳しいと私は見ていたので、「なるほどな、」と思った記憶がある。 あとはほとんど前任者と同じ。体制が変わると、今季のコルツがその典型であるように、人事をガラッと変えるのが普通である。また、サラリーキャップという制度も考え合わせれば、先手先手の人事の非常に有効だし重要である。ベリチックやスティーラーズはその代表格であろう。そういった意味では、このハーボーのやり方は、非常に時代に逆行しているともいえる。同じカレッジ上がりのHC、ピート・キャロルが、前政権の目玉だったハッシュやアーロン・カリーをあっさり放出したのとも、いかにも対照的である。 ピート・キャロルのやり方は、これはこれで前任者に対する侮辱かとも思われるが、このハーボーのやり方も、これはこれで前任者に対する嫌がらせ以外の何者でもない。「同じ戦力でも、俺なら勝てるよ。」といわんばかりである。ちなみにハーボーもシングレタリーの元ベアーズ。ベアーズ内での地位は天と地ほど違うが。勿論、特別な感情は無いだろうけど。 それはともかくとして、ハーボーが自分のコーチングに相当自信を持っているのは確かだと思われる。プレイオフでいかなる結果が出るのか、非常に楽しみである。 ただ、これでハーボーにスーパーボウルを獲られるちゃうと、ポリアン直系の私のQB至上主義を改めなければならなくなるので、それはそれで困り者なのでははあるが。ケーパーニックでもスミスでも、どっちでもよいという事になっちゃうからな。 また、私が「HCの仕事」というコラムで書いたHCよりGMの方が大事という考え方にも逆行する事になる。どんな選手でも、現場のコーチング次第で勝てるという事になるのだから。 そういった意味では、ハーボーは現行のフットボール観を大きく変える可能性を秘めたHCという言い方も出来るかもしれない。時代を進めるのは、常にそういう人達である。ナイナーズ、そうしてスタンフォードの大先輩、ビル・ウォルシュが、かつてそうであったように。 ウォルシュとまではいかなくとも、ハーボーが、ベリチックと並んで、コーチングで勝負できる、NFLでは数少ないHCだといえよう。 KC戦は必勝。 2012/12/23(日) |
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Week16 | 12月23日 IND@KC 20−13 |
んで、コルツは10勝、プレイオフ出場確定っと。は〜い、今季のコルツ最下位予想したひと、全員メリコミ土下座。3時間、メリコんどけ。 つー訳で、今季のコルツのプレイオフ出場が決定した訳であるが、ゲーム自体は、この時点でまだ見ていないし、しょっぱい内容だったらしいので、このプレイオフ出場について、あれこれ感想を書いてみたい。 まあ、私も開幕直前の記事で、「プレイオフ出場も夢でないで〜。」みたいな事を書いたわけであるが、その可能性はかなり低いと見ていた。10%以下、せいぜい5〜7%ぐらいと見ていた。ちなみにそれ以外の勝ち星の可能性は、 8勝前後 30% 5勝前後 50% 3勝前後 12、13% んで、10勝以上でプレイオフ出場が5〜7%だった訳である。まあ、この数値は、特に何の根拠もなく、単なる感覚的なものであるが、ラックの期待度のパーセンテージといったところである。あれだけ、騒がれたのだから、さすがにクインやクロウセンという事も無いだろうし、過度の期待も出来ないだろうから、5勝前後が妥当と見ていた訳である。 その手の賭け事があったら、コルツファンとして「コルツのプレイオフ出場」にも100円200円ぐらいは賭けていたかも知れないが、1000円以上は絶対に賭けない。ここに全財産(妻子含む)を賭けるのはアカギ級のギャンブラーだけだろう。 でも、結果はプレイオフ出場。ディフェンスも良く頑張ったし、その他の新人や新加入選手もそれなりに頑張ったが、結局のところは、ラックに尽きる。ラックの2ミニッツが無ければ、この結果はとても望めなかったろう。 その割にはみんな静かじゃね。大変な偉業だと思うんだけど。不人気地区の不人気チームという点を割っ引いてみても。 ここ最近はルーキーQBがスターターを獲得して1年目から活躍するのは当然みたいな空気になっているが、でも全体1位のQBが10勝してプレイオフ出場って、珍しくね。 そう、思って調べてみると、ここ最近ではブラッドフォードの7勝が最高である。惜しむらくは、7勝で地区首位のシーホークスと並びながら、プレイオフ出場はタイブレークで逃した点である。でも、実質的には地区優勝でプレイオフと見てもよいだろう。でも7勝。 そのほかは、みなケンもホロロは状況である。ヴィックですら7勝どまりである。プレイオフ出場は無い。 で、QBという括りを取り去って、単純に全体1位からプレイオフ出場を過去10年で調べてみると、2度あった。意外に多い。 最近では、2008年シーズンのドルフィンズで、全体1位でジェイク・ロングを指名し、そのシーズン、11勝でプレイオフ出場を果たしている。 もっとも、このシーズンのドルフィンズは、例のファーブ騒動で、玉突き的にジェッツを放出されたぺニントンをQBに据えているので、非常についていたとも言えなくは無い。そうして、もうひとつ忘れてはならないのは、同地区のライバル、NEのブレイディがケガをして、ほとんどシーズン全休だったという点である。 とはいうものの、これが偉業である事に変わりなく、GMっぽい職に就いていたパーセルズの、NFLへの数多い貢献の内の最後の大仕事といってよいであろう。 んで、もうひとつは2004年のチャージャーズのイーライ・マニングである。はて、チャージャーズのイーライ・マニングと聞いて、不思議に思う方もいるかと思うので少々解説しよう。 今となっては忘れてしまっている人も多いだろうが、この年のドラフトの目玉はイーライ・マニングだったのであるが、そのイーライ、つうかマニング一族は、その年の全体1位の指名権を得たチャージャーズに対し、「チャージャーズになんか、うちのイーライを行かすか、バーカ。」と発言しちゃったのである。 で、いろいろ、裏取引があったのであろうが、結局、チャージャーズは全体1位でイーライを指名し、その後全体4位でフィリップ・リバースを指名したジャイアンツと両者をトレードした訳である。指名直後のトレードはNBAでは珍しくないが、NFLでは割に珍しい。 つう訳で、公式記録的には全体1位はチャージャーズのイーライという事になっているが、事実上は、ジャイアンツのイーライ、ないしチャージャーズのリバースという事になる訳である。 で、そのシーズン、ジャイアンツは6勝でプレイオフを逃す結果になるのであるが、チャージャーズは12勝で地区優勝してしまうのである。ただし、スターターQBはドリュー・ブリーズだったりする。リバースはシーズン丸々サイドラインである。 つうか、そもそも、その全年、ブリーズにトムリンソンがいて、HCがショッテンハイマーで何で全体1位引いちゃってんだつう話である。まあ、全体1位といっても、4勝はしていて、タイブレークの末の全体1位なのではあるが、にしてもである。所謂、チャージャーズ。クオリティではある。 もっとも、当時のブリーズは、評価の確立した今現在と違って、まだまだチンチクリン野郎であり、また、その投げまくるスタイルが本質的に、所謂マーティ・ボウルのショッテンハイマーとは合っていなかったという側面もある。だからこそ、そのブリーズと正反対のQB、リバースを1巡で指名したわけである。 まあ、いずれにしても、この2004年のチャージャーズは特殊な例外といって良いであろう。 という訳で、全体1位のQBがルーキーイヤーに10勝してプレイオフ出場というのは、ここ10年で初めてといってよい。 そもそも、全体1位を引いちゃうようなチームなんていうのは、形はどうであれ、チームが根本的に壊れているので、ルーキーQB一人では、なかなか手に負えないのが普通である。 実際、全体一位という括りを取り除けば、ルーキーイヤーからプレイオフ出場というQBは数多くいる。パッと思いつくだけでも、サンチェスやフラッコーである。でも、彼等の場合は、そもそも元からチームは強かったので、参考にならない。 ラックと比較できる例と云えば、2巡ではあるが、チームは全体3位だったドルトンがそれに近いであろう。ただ、あくまで彼も3位である。1位では無い。 また、もっとも近い例は、全体3位であるが、アトランタのマット・ライアンであろう。前任者が思わぬ形でチームを去った、根本的にチーム改造の年だった、ディフェンス畑の無名の新HC等々、今季のコルツと共通項も多い。 ただし、決定的に違うのは、RBに成功間違い無しのマイケル・ターナーがいた点であろう。そういった意味でも、今季のラックの方が価値は高い。そうして、やはり3位は3位である。1位では無い。 つう訳で、ここまでくだくだ書いてきて何が言いたいのかというと、もっとラックを褒めてくれつう事である。なんかもう、ラックなら出来て当たり前みたいな空気になっているけど、これって偉業でしょ。しかも、デッドマネーが4割近くあるんだど。デッドマネー4割つうのは、感覚的に言えば、−10点ぐらいのハンデだよ。0対−10から、全試合始めているようなもんだぞ。そこから10勝なんだどー。凄くない、これって凄くない。「もっと褒めてくれ、もっと褒めてくれ、ぷるぷる」by福田吉兆 今季のカンバック・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーがマニングになるかエイドリアン・ピーターソンになるかで、よく議論になっているが、リアル・カンバック・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーはラックじゃねえ、ラックじゃなくなくね。ほとんどのゲームが逆転勝ちだし、2勝から10勝って、グレート・カンバックでしょ。 ちなみに、逆カンバック・オブ・ザ・イヤーは勿論ライオンズ。去年10勝から、今季既に16勝終了時点で11敗って。 私も、今季始めてライオンズのゲームを見た時点で、「今季は、これじゃあ期待できないな。」と思ったものであるが、それでも8勝前後はすると思っていた。今季のライオンズに期待できないと思った理由は、何と云っても、チーム全体が弛緩していた。油断がHC以下全員から感じられたからだ。「とりあえず、プレイオフには行けるだろう。」みたいなムードが漂っていた。はっきり云って、今年のライオンズは「とりあえずプレイオフ」レベルにはとても見えなかったので、危ないなと思っていたら、案の定、勝てるゲームを悉く落とし(コルツ戦は、その際たる例)、11敗である。 もっとも、気持ちだけで、チームは勝ったり負けたりするものでは勿論無く、構造的な欠陥も抱えていた。第2レシーバー不在である。ケガでシーズン全休のバールソンを予定していたのだろうが、昨季を見た限り、バールソンにそこまでの力は無い。バールソンがいても、1,2勝の上積みはあるにせよ、似たような結果だったのではないだろうか。テイタス・ヤングも本質的にはスロットである。 私がライオンズのGMだったら、いかなる犠牲を払っても、レジー・ウェインを獲りにいっていた。いかなる犠牲といっても、スタッフォードやカルヴィン・ジョンソンを代償にしたら、勿論無意味だけど。でも、そういう姿勢を全然見せなかったというのは、油断ないしチームの構造的欠陥が見えていないかのどちらかである。 WRの仕事というのは、大きく分けて2つある。ファーストダウンを取る事と出来るだけヤードを稼ぐ事の2つである。で、その2つの仕事を役割分担して完全固定してしまう例もあるが、状況によって使い分けるのがワイドアウトのふたり、SEとFLの関係である。スロットとTEは、その補佐的役割となろう。 ところが、今季のライオンズは、それら全部をカルヴィン・ジョンソンが担っている。それどころか、3ヤードや5ヤードといったRB向きの仕事までカルヴィン・ジョンソンが任されている始末である。とにかく何でもかんでもカルヴィン・ジョンソンカルヴィン・ジョンソンである。その結果が、ジェリー・ライスのシーズン・レシービング・ヤードの記録更新になる訳だが、その一方で、タッチダウン数は5と非常に少ない。一方、抜かれたライスのその年のタッチダウン数は3倍の15である。そこには、大きな隔たりがあると云わざる得ない。 ライオンズに強烈なレッドゾーン専門家がいる訳でもない。では、その隔たりは何故かというと、それは結局、疲れだと思う。コルツ戦に顕著であったが、シリーズ終盤やゲーム終盤になると、カルヴィン・ジョンソンのパフォーマンスは明らかに落ちている。それは、おそらく疲れから来るものであり、その結果がタッチダウン数の少なさやライオンズの接戦での弱さにつながっているのだろう。最近のライオンズは、それを知ってか知らずか、シリーズ中でもカルヴィン・ジョンソンをちょこちょこサイドラインに下げて休ませているが、すると当然オフェンスは停滞してしまう。これは、去年から見られた特徴だけど、ライオンズは昨オフなんら手当てをしていなかったのである。 WRというポジションは、あまりテレビ画面に映らないので、一見楽なポジションのように考えられがちであるが、よく考えてみると、意外に最も疲れるポジションである。 まず、当然パス・プレイの際には、ボールが来ようが来まいが自分のルートを走らねばならない。それも3ヤード・フックやアウトならたいしたことはないが、ポストやコーナーなら30ヤード以上走らねばならないし、同じ3ヤードでもインやスラントならば、曲がってから20ヤード30ヤードと走らねばならない。 そして、もうひとつ、これは意外に忘れられがちなのであるが、走った後、ボールを捕球すれば、そのままその位置にいれば良いが、パス・インコンプリートに終わった場合、元のスクリメージまで戻らねばならない。 そうして、もうひとつ、これは完全に忘れられているが、1プレイごとハドルまで戻らねばならないというのがある。テレビで見ると、横からの映像なので実感しにくいが、ワイドアウトの位置からハドルまで20ヤードくらいはある。全速力でないにせよ、往復で40ヤード近くである。しかも、これはラン・プレイの際でも同様である。 ボールに触る機会が少ない、テレビに常時映らないという事で、盲点になりがちであるが、フットボールで最も運動量の多いポジションはWRであろう。次いで、それに対するCBであろうが、CBの場合はゾーンで守る事もあるので、運動量はWRに比べるとやや減る。QBやRB、フロント7などは激しいポジションなので、疲労の多いポジションの様に思われがちであるが、試合全体を通じての運動量はWRより低い。最も疲労するのは意外にWRなのである。バスケットボールにおけるセンターみたいなものである。常にボールを持つ、テレビ画面に映るガードより、両サイドを行ったり来たりせねばならないセンターが意外に一番運動量が多いのに似る。 と考えると、ノーハドルの隠れた効用のひとつに、WRの疲労軽減もあるのかもしれない。特にマニングのノーハドル&オーディブルはWRガチ固定だし。 と、最後に軽くマニングを褒めて、今回の記事は終わりにしたい。 2012/12/27(木) 前々回の記事で触れた羽生のNHK杯初登場であるが、先日、2回戦の米長邦雄戦が放送されていた。将棋は羽生の勝利、羽生以前の棋士としては、先日物故された米長邦雄はもっとも羽生に近いタイプであったろうが、問題なく寄り切ってしまったという印象である。デビューした段階で、事実上、実力ナンバー1の棋士だったといってよいだろう。強いて云えば、ライバルが谷川浩司だろうが、むしろ真のライバルは羽生と同世代の佐藤や森内、郷田、村山、そしてやや遅れてくる藤井や丸山といった面々であったろう。 師匠の二上達也がちょうど解説を担当していたが、羽生に関しては、プロ棋士としての生活や常識といったものを教える事はあっても、教えることは無い、というか教えられないといった様子だった。羽生としても、将棋に関して、二上から学ぶものは何も無かったろう。 さて、IND@KCであるが、実際のゲームを見た。 まあ、ゲーム内容そのものより、何より印象的だったのはアローヘッドのガラガラっぷりである。アローヘッドというと、年がら年中満員、真っ赤に染まっているみたいなイメージがあったが、このゲームはそれに反して、ガラッガラ。試合中盤はそこそこ客が入っていたゲーム終盤は、またもガラッガラ。不人気チームのコルツ戦という事情もあるだろうが、やはり、何と云ってもここ数年のチーム成績が反映されているのだろう。プロは勝たな、あかん、である。 チーフスというと、常勝チーム、AFCのエリートチームみたいな印象があるが、トレント・グリーン、プライスト・ホームズ以降は、ポツポツとプレイオフには出るものの目立った成績は無い。一時代を築くには至っていない。やっぱ、プロは勝たな、あかん。 あとまあ、体制がコロコロ変わるので、フランチャイズ・プレイヤー的な選手がいないのも痛いところであろう。FA選手のQBが20年近く連綿と続いているというのも地味に効いている。 さて、肝心のゲーム内容であるが、スタッツ的にはしょっぱいゲームかと予想してTV観戦したのであるが、内容そのものはコルツの完勝だったと思う。ゲームそのものはコルツが支配していた。仮に、ゲーム終盤、チーフスにリードされても、ラックがもう一度突き放して勝利を収めていたと思う。それくらいの信用、つうか信仰が今のラックにはある。 ジャマール・チャールズに226ヤード、ペイトン・ヒリスに101ヤード走られた訳であるが、その原因は色々あろうが、ひとつにはアンゲラーであろう。カベル・コナーの不出場を受け、アンゲラーがスターターに返り咲いた訳であるが、昨年完治したとみられたブロック巻き込まれ病がぶり返した。4−3だと対応できても、3−4になると、また別なのね。 その結果が、オープンを走られまくった訳である。それを受けてか受けずかは知らぬが、ゲーム終盤はアンゲラーを引っ込めて、フォコウを起用、するとオープンのランはスッと止まった。 ちなみに、このオープンのラン、ゲーム終盤2ミニッツ直前3rd&10で、それまでぜんぜん使っていなかったコルツ側が意表をついて使用、結果13ヤード前進&ファーストダウン獲得でゲームセットになったのは、何とも皮肉な話である。エイリアンズのプレイコールはホント硬軟自在である。江南スタイルで踊っているだけでは無いのだ。 さて、アンゲラーに話を戻すと、私はプレイスタイル的に3−4向きかなと見て、シーズン前、ブレイクを予想していたのであるが、完全に予想が外れた。ブロック巻き込まれ病も致命的であるが、タックルも下手なんだよな。飛び込むようなタックルなので、このゲームでも1回引きずられて、3〜5ヤードのエクストラゲインを許していたけれども、ああいうのも印象が悪い。 ちなみに、タックルというと、現役ではやはりパトリック・ウィルスが一番上手い。タックルというと、それこそボブ・サンダースのような肩から突っ込んでいくミサイルみたいなタックルの方がファン受けは良いだろうが、しかしやはり、理想的には、両腕を大きく広げて包み込むようなウィリスのタックルだろう。激しさが無いので、ファン受けは悪いだろうが、このウィリス方式の方が確実かつ安全(タックラー、キャリアー双方にとって、)にボールキャリアーを仕留められる。 以上のような考察から、来年、アンゲラーがコルトでいる確率は低そうだのう。う〜む、意外な展開。 来季微妙という意味では、フリーニーも同様だろう。パスカバーは出来ないのか、マシスと違って、全然カバーには下がらない。3−4OLBとしては失格かもしれない。 ただ、来季コルトであるかどうかは、コルツ側の事情というよりは、フリーニーの気持ちひとつという感じもする。給料下げても、生涯コルトを選ぶか、適正な給料を求めて、どっか4−3のチーム、例えばニューヨーク州のチームに行くかは、本人の気持ち一つだと思う。マニングと並んで、コルツの象徴だったフリーニーに、コルツサイドとしてもそんなに厳しい態度はとらないだろうし。 同じく、来季微妙、というか絶望に近いのはエイブリーだろう。流石に落球が多過ぎる。ルートランが甘いので、改善はしないだろう。ラックのからの信用も失っている模様である。それが証拠に、大事な時はエイブリーにはまず投げない。まず、ウェイン、そうしてアレン、それからブラジル、ヒルトンの順番である。それでも、どうでも良い時はエイブリーに投げるのは、ラックのリーダーシップの優れている所以でもあるけれど。エイブリーの来季は、今オフのコルツのWR獲得事情によって変わってくるだろうが、厳しい状況である事は変わりない。 来季微妙という訳では勿論ないが、その起用法が微妙なのは、最近怪我の癒えたコービー・フリーナーであろう。とにかく、デカイ事はデカイ、おそらくNFL歳長身の部類だろうが、いまいちその長身が活きていない。というか、彼を活かすプレイブックが無いといった印象である。同期のドェイン・アレンがエイブリーのプレイブックにマッチして、ドンドン台頭、つうか、ラックと並び新生コルツオフェンスの象徴となっているのとは、あまりに対照的である。 私は、個人的には、この長身というのは、バスケットボールとは違って、あまりフットボールというスポーツには意味を成さないと思っているのであるが、とにかく、このフリーナーを活かすプレイブックを作るのは、今オフのエイリアンズの大きな宿題であろう。 なんか祝ラック・プレイオフ初出場の割には、暗い話が続いたので、最後はアホのセルジオ・ブラウンについて。 このゲームでもカバーチームでは良い仕事をしていた。真っ直ぐ走らせたら活きるタイプのようである。って、それSとしては致命傷だろ。セイフティとしては厳しいかもしれないが、こういうガヤというのは意外に貴重な存在なので、個人的には来季もチームに残して欲しい。 BUF戦でズビコウスキーがINTをした後、ファンブルロストしたシーンで、セルジオがコーチの隣で無茶苦茶悔しがっていた。この映像が、たまにG+やGAORAの中継中、あるいは中継後の時間つぶしの時間に放映されている。いやいや、悔しがるのお前じゃないから。しかも、ズビコウスキーは大学の先輩とはいえ、同じポジションのライバルだから。でも、そこがセルジオ・ブラウンの良いところなのだ。チームメイトの好プレイには真っ先に祝福に行くし。貴重な存在だと思う。今季のコルツ5敗の内2敗の原因とはいえ。 で、来週、つっても本日だが、ヒューストンとのホームゲームである。コルツ的にはほとんど意味は無く、テキサンズ的にもプレイオフ初戦バイが懸かっているとはいえ、そんなに大きな意味は無いゲームである。むしろ、恐いのはケガである。 そうして、それ以外の要素、最も大きなモチベーションは、@INDでの無敗記録であろう。ヒューストン的には、ここらで勝っておかないと、またしばらく続いてしまう公算の方が高い。 コルツ的は、「プレイオフに向けて怪我すんな。」といっても、プレイオフに勝ち進めるような戦力でもないし、むしろ今季ホーム最終戦という事で、「一年間のご声援、まことに有り難うございました。プレイオフも頑張ってきます。あと、来季のシーズン・チケットもお願いね。」的なゲームであろう。 つう訳で、年末年始は実家に帰りますので、次の記事は1/7以降になる予定で〜す。 私が無類のぬれせん好きである事を再確認した。 2012/12/30(日) |