インディアナポリス研究会コルツ部

歴史

2012シーズン

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<1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11>

Week17 12月30日
HOU@IND
16−28
 お正月、餅で押し出せ、2年グソ

 はいっ、という訳で始まりました、ビートたけしのオールナイトニッポン。いやいや、違う違う、ビートたけしのオールナイトニッポンじゃない。なんで、こんな書き出しで始めたかというと、昨年最後の記事で書き忘れた事があったからだ。それはラックとクインの比較である。この手の書き忘れは、一週間ぐらいなら、こっそり書き足し、ないし書き直しをしてしまうのであるが、一週間近く間隔も空いたし、年またぎになるので、縁起が悪いと思って、新春一発目の冒頭に付け足してみた訳である。

 その書き忘れは何かというと、ラックとクインの比較である。このKC戦の先発QBはクインだった訳であるが、そのクインも高校卒業時はラック同様、全米トップ評価のQBだった訳である。それが、どうしてここまで差が付いてしまったのかと考えると感慨深いものがある。

 このクインのプレイ振りを見ていて思うのは、何もかもが全くもって見えていないという事である。パスラッシャーの動き、OLの動き、レシーバー陣の動き、DB陣の動き、更にはゲームの流れといったものまで、全くもって何も見えていないのである。で、しょうがないから、プレイブック通り、コール通りにプライマリー・レシーバーに投げ、あるいはセイフティバルブに投げ、失敗を繰り返してしまう。周りが見えていないから、正しい判断が下せないのである。ここがラックとの決定的な違いである。体格、フットワーク等はほとんど変わらない、むしろ、メカニックなどはラックより上にも拘らず、である。

 QBに限らず、いくつかのポジションのスポーツ選手には、全方位視野、専門用語は忘れたが、焦点の合っているところだけでなく、まあ、180°とまではいわぬが、140°くらいの視野に映る全部の動きを捉える能力が必要といわれているが、それがラックにはあり、クインにはないのだろう。そこが両者のクォーターバッキングの決定的な違いの元である。あと、チャーリー・ワイスとハーボーとの違いとも云える。

 ほかにも、なんか言いたい事があったような気もするが忘れちったので、次の話題。

 それは、このKC戦の勝利で今季のコルツは連敗無しという事である。これは地味ながら、なかなかの記録だと思う。ラックの力ともいえるし、エイリアンズの力ともいえるし、チーム全体の力とも云えるだろう。

 いやいや、これくらいの事、KC戦の段階で気付いていたから、書き忘れていただけだから、そのくらいの数理的判断力はあるから、孫悟空じゃないから。元気玉は作れるけど。

 年またぎの書き忘れはそれくらいにして、本題のHOU@INDである。

 ちょうど2週間前、今のコルツとテキサンズの力の差は12点差ぐらいだと私は書いたが、そっくりそのまま12点差でコルツが勝っちゃいました。つー訳で、ヒューストン戦ホーム無敗記録はまだまだ続くのであった。いや、続いちゃダメだろ、ヒューストン的には。ここは勝っとかないと、色んな意味で。

 ただまあ、ゲーム内容そのものは、ヒューストンのゲームだったと思う。フォスターがケガをしていたのか不調だったのが(右だったか、左だったか、どっちかにしかカットが切れない感じだった。)最大の敗因で、あと、コルツ的にはいいところでターンオーバーやキックオフ・リターン・タッチダウンが出たのも大きかった。キックオフ・リターン・タッチダウンはデザイン的に狙っていたのだと思う。
 とはいえ、ゲーム全体的にはヒューストンのゲームだったと思う。

 あとまあ、ヒューストン的に痛かったのはキュービアックの采配か。まあ、これは直接の敗因ではないけれど、キュービアックというのは、このゲームに限らず、追い込まれると訳の分からん采配をしてしまう傾向がある。このゲームで言えば、第1クォーターで12人オン・ザ・フィールドを数え間違えてチャレンジを失敗したり、第4クォーターでタイムアウトを入れてから52ヤードのFGを蹴らして失敗したり、まあそれらが直接の敗因ではなかったにせよ、チーム内外に与える影響は良くはない。数え間違えんなよ、始めから決めておけよ、と言うことになるだろう。浮き足は立つと思う。プレイオフに向けて、テキサンズ最大の不安要素だろう。by田岡茂一

 とまあ、ゲーム内容については、あまり触れる事は無いのであるが、ひとつだけ。マカフィー&セルジオのアホアホコンビによるナイスパントがこのゲームでも出た。マイナス×マイナスがプラスになるみたいなもんだ。

 つう訳で、ゲーム内容に関しては、これくらいにしておいて、今季のコルツファン最大の懸念材料、あるいは期待材料だったラックのルーキーイヤーの結果を軽く総括してみたい。

 4374ヤード、339/627、54.1%、23TDs、18INTs、被サック41、QBRTG76.5、11勝、である。

 4374ヤードは全ルーキー中トップ、全体でも6位のペイトン・マニング、8位のロジャースに挟まれ、7位である。そうして、歴代ルーキー記録でもある。
 もっとも、この記録はパス全盛の現代NFL、ルーキーQBがWeek1からスターターになる昨今では、近い将来破られるであろう。ただ、一コルツファンとしては、マニングに持っているコルツのQBのチーム記録をほとんど全て(一部はジョニー・ユナイタス)の一角を、一年目にして既にラックが崩したという事に或る種の感慨をおぼえる。ちなみにマリーノの保持していたドルフィンズのルーキー・パッシングヤード記録は、今季ようやっとタネヒルが破ったそうである。

 そのほかのスタッツは、正直平凡であろうが、特筆すべきは11勝である。11勝って。マニングのルーキーイヤーは3勝、である。全盛期のマーヴィン・ハリソンとマーシャル・フォークがいて、尚である。まあ、チーム内外の状況が違うので、一概に比較は出来ないが、3勝と11勝である。

 しつこいようだが、今季のコルツはデッドマネーが4割近く、すなわち単純な戦力、たとえばMADDENのようなテレビゲームの数値的な戦力ならば、リーグ最低ダントツ最下位である。事実、そういう顔ぶれである。ノーネーム・チームと言われてもおかしくはない。
 で、スケジュールは、厳しくもないが、決して易しくもない、まあ平均的なスケジュールである。それで、11勝、最低の戦力と平均的なスケジュールで11勝、謂わば、この11勝が最低ラインのQBという事になる。11勝が最低って。しかも、来年のコルツは、実情はともかくとして、表面的顔触れ的には大幅に戦力アップする事がほぼ確定的である。だから、今年勝っとけって言っといたのに、テキサンズ。

 ちなみに、ドラフト全体1位のQBで翌年いきなりプレイオフに出場したのは、このラック以外では、同じスタンフォードの大先輩で、同じくコルツに指名されたエルウェイのみだそうである。いやいや、エルウェイはコルツで出場していないから。
 それはともかく、デンバーでもエルウェイは全試合先発という訳では無いので、実質的には。この全体1位いきなりプレイオフ出場はラックが始めてといってよいだろう。これからは増えるかもしれないけれどね。しかし、このラックを廻っては色んな因縁があるのお。コルツ、スタンフォード、デンバー、マニング、エルウェイ、ハーボー等々が複雑に絡んどる。

 ラックに関しては、これからもドンドン書く事になるのでこれくらいにして、プレイオフ一回戦の予想と洒落こみたい。

 まずはNFCから。

 MIN@GB
 戦力的には互角だろうが、冬のランボー・フィールドを考慮すればMIN有利か。GBの難しいところは、今のチーム構成が全然冬のランボー向きでは無いという事である。プレイオフを勝ち上がるためには、2011年(2010年シーズン・プレイオフ)のように第6シードの方がむしろ有利か。NFC決勝は冬のソルジャーだったけど。

 SEA@WAS
 似たようなチーム同士の戦いであるが、運動力豊富なSEAディフェンスにWASのゾーンブロック・スキームは手を焼くと思うので、SEA有利と見る。ただ、WASがシーズン中盤以降封印していたかのように見えるオプション攻撃をここで炸裂させれば、WAS有利か。シャナハンのゲームプランに注目の一戦だろう。

 次はAFC。

 CIN@HOU
 昨年と同カード。昨年も同じようなことを書いたと思うが、戦力的な面のみを考慮すれば、CINがイージーに勝つであろう。去年と違って、シャウブが健在であるにせよ、である。それくらい、今のCINは戦力的には充実している。つうか、SFがQBに難を抱えている点を考慮すればリーグ最強であろう。攻守特、それぞれのポジションにオールプロ、プロボウル級をゴロゴロ抱えており、スーパーボウル最右翼といっていい。

 でも負ける。HCがマーヴィン・ルイスだから。でも、ルイスを更迭しちゃうと、ルイスが集め、調教、もとい更正させてきた、特にディフェンスの悪童たちが機能しなくなるので、難しいところではある。

 まあ、でも、ヒューストンには勝つかな。上述したように、キュービアックの土壇場での采配に不安を感じるし、またゾーン・ブロックというスキームの、純正WCO同様、終わっていると私は考えているからだ。普通にやれば、バーフェクトを中心としたCINの運動量の前に為す術は無いだろう。

 で、おまっとうさんのIND@BAL
 まあ、普通にやれば、普通にやらなくとも、INDのルーキー・オフェンス軍団はBALのおっさん・ディフェンス陣に歯が立たないであろう。
 唯一の優位はパガーノ、エイリアンズの両者がBALの事を嫌っていう程よく知っているという点だけであろう。ゲームプランは容易く作れるだろう。あとは、そのゲームプランが当たり、それをラック以下が実行できる事を願うだけだ。あと、BALに対しては、これまで非常に非常に相性がいいというのも、INDにとっては心強いといえるか。まあ、おまじない程度の心強さだろうが。その主因だったマニングは抜けちゃっているし。さすがに、敗勢か。

 最後に、2097ヤードに終わったエイドリアン・ピーターソンについて一言。

 まあ、確かにあそこで、あそこでピーターソンの為にタイムアウトを取って、ボールキャリーさせたら、しこりは残るわな。ファンブルの危険性もあるわけだし。

 でも、聞き返しちゃうよな、「9ヤード、あと9ヤード。」って。いくら、来季以降があるとはいえ、こんなチャンス、そうは無いだろうし。でも、このインタビューは最高。私のスポーツマン・インタビューではベストかも知れぬ。

 9と云えば、9インターセプトで、懐かしのティム・ジェニングスがINT王になっているのね。

 そう云えば、アロマシュドー(MIN)もしぶとく頑張ってんな。

 そう云えば、タケオ、またプレイオフ行けなかったな。記事書かないと。
                                                    2013/1/5(土)
WildCard
Playoff
1月6日
IND@BAL
9−24
 いや、風邪って。んな、ピンポイントで入院されても。

 まあ、エイリアンズがプレイコールを担当したら勝っていたというつもりは毛頭無いけれど、そんあピンポイントでいなくなられても困るんだが。OCとして優秀な人だと思うが、齢60までHCになれなかったのは、こういう所(どういう所?)にも原因があるんか。

 ゲームそのものは、まず完敗かな。ラック以下、ルーキープレイヤーに、ブリッツひとつ、パスカバーひとつに一工夫も二工夫もしてくるBALディフェンスは、なかなか荷が重かったという結論である。ターンオーバーを2度貰い、3度進んだレッドゾーンで何も出来なかったというのが、その象徴だろう。
 せめて、シーズン中に一度対戦があれば、賢いラックのことなので、何らかの対策を打てたと思うが、いきなりプレイオフで初対戦して勝利をもぎ取るには、ちと難しい相手だっと思う。もっとも、全盛期のレイブンズ・ディフェンスを解けるのはマニングしかいなかったのだから、一時の力は衰えたとはいえ、ボルチモア相手にこの結果は当然だろう。

 つう訳で、このゲームに関して、喜びの無いのは勿論だけど、不満も無い。そもそも、最下位予想が多勢を締めていた2012コルツで、ここまで来た事に感謝したい。ありがとう、ラック。ありがとう、その他の面々。

 あとまあ、このゲームにおける個々人の感想はというと、アンゲラー。先週、先々週のゲームでは持病のブロック巻き込まれ病が再発して難儀していたが、このゲームではまずまずの出来だった。来季に向けて、いくらか首の皮をつなげたか。まあ、レイ・ライスがオープンランナーではないというのもあるだろうが。

 一方、コルツのRB、ヴィック・バラード、スクリメージまではいい、ファンブルも無い、ただし、スクリメージを抜けてからも、無い。今ドラフトの一巡でエッヂさん以来の本格的なRBというのも、ひとつの手か。

 あと、ドニー・エイブリー、もう完全に信頼失っているな。よほどWR補強に失敗しない限り、コルトでは無いだろう。
 このエイブリーに限らず、今季のFAの多くは正直期待外れだったと思う。エイブリー、ウィンストン・ジャスティス、サテーラ、怪我もあるだろうが、出来はいまいちどころか、いまふたつだった。
 彼等に共通しているのは、運動能力重視、体格重視の選考であったという点である。FA成功組のレディングやズビコウスキーは完全にパガーノ人脈だし。フリーマンは、自分から勝手にキャンプにやって来たようなもんだし。この運動能力重視、体格重視というのが、グリグソンの基準だとすると、一抹の不安を感じる。今オフの戦力補強で、それは明らかになるだろうが。イーグルスの傾向を考えると、運動能力重視、体格重視というのがグリグソンの基準であるようにも思う。あと人気重視か。

 このゲームについての感想は以上かな。

 じゃ、他のワイルドカードの感想をば。

 CIN@HOU。

 まっ、予想通りの展開。ルイスじゃなければ、CINが勝っていただろう。あの攻撃陣で13点というのは、有り得ん。しかも、うち7点はインターセプト・リターン・タッチダウンなので、実質FG2本の6点のみ。ますます有り得ん。まあでも、HCは替えないだろうが。ドルトンに愛想を尽かされないかが、これから数年の最大の懸案事項になるだろう。

 SEA@WAS。

 開幕早々、奇襲のオプション攻撃で14点先制したまでは良かったが、その後は得意のゾーンブロックで守りに入ったものの、グリフィン三世の怪我もあり、WAS敗北。

 世間的には、グリフィンの怪我が論議されているが、私にはむしろ、オプションとゾーンブロックの関係について考えさせられたゲームだった。
 QBが良く走ると言う事で、一見似ている両スキームであるが、よく考えてみると正反対のスキームであることが良く分かる。

 まず、その分かりやすい相違点は、ゾーンブロック向きのRBはオプションには向かないという点である。周囲にブロッカーがいて走るゾーンブロックと事実上ネイキッドで走るオプションではRBに求められる能力が全然違う。ゾーンブロックだと、どんどん走れるアルフレッド・モリスがオプションだと全然走れなくなる。オプションだと、デイライト能力なり、パワーなり、クイックネスなり、すなわち自力で走路を切り開かねばならないからだ。こうなると、シアトルのマーション・リンチのようなドラフト上位指名のRBでなければ、なかなか厳しいだろう。
 そのオプションからのリンチのランに決勝点を奪われたのは、WASというか、シャナハンにとって、大きな皮肉だったと思う。

 また、ゾーンブロックが5ヤード、5ヤード、5ヤード、40ヤードみたいなヤーデージを理想としているのに対し、オプションが、15ヤード、15ヤード、15ヤード、と常に15ヤードの前後のヤーデージを理想としているのも対照的な点であろう。
 それ故、ゾーンブロックのQBには足と強肩が必須なのに対し、オプションには足はともかく、強肩はさほど求められていない、むしろ求められるのは短中距離のパスであるというのも対照的である。

 また、ゾーンブロックがキャッチアップには向いておらず、オプションが、昨年のデンバー、つうかティーボーが極端な事例であろうが、キャッチアップ向き、逆転勝利向きのスキームであるというのも対照的である。

 更に、それらを封ずる為の敵ディフェンスが、ゾーンブロックは運動能力型、オプションには知性型であるというのも対照的な点である。

 以上、何から何まで対照的なスキームがひとつのチームに共存しているというのが、今のワシントンの面白さでもある。なるほど、そう考えてみると、無理してロバート・グリフィン三世を獲りにいった理由も分かる。彼は、確かにオプション、ゾーンブロック、両者のこなせる数少ないQBだろう。マグナブには短中距離のパスが無い。純然たるゾーンブロック・スキームのQBである。

 私は、WASがグリフィンを指名したのはマグナブの後継者として、純然たるゾーンブロック・スキームのQBを欲していたのかと思っていた。ところがシーズンが始まると、意表をついてオプションの多用。それが上手くいかないと見るや、ゾーンブロックへの回帰、しかし、シャナハンの心は両者の融合にあったのだろう。そう考えて始めて、グリフィン獲りの無茶なトレードアップの合点がいく。

 そう考えると興味深いのは、シャナハンのスキーム遍歴であろう。もともとはWCOだったのがゾーンブロックに。これは最も複雑なオフェンススキームから最も単純なオフェンススキームへの移行である。そうして、そのゾーンブロックに限界を感じオプションへの移行。そうして、それだけでは勝ち切れないと思ったのか、再びゾーンブロックの導入。それが今のワシントンの、謂わばゾーンブロック・オプション・ハイブリッド・スキームである。

 考えてみると、シアトルも似たようなオフェンススキームなので、このゾーンブロックとオプションの混合というのは、ひとつのトレンド、ゾーンブロックスキームの最終的な結論なのかもしれない。ピート・キャロルがそれを意図しかまでは不明であるが。
 ピート・キャロルの意図はともかくとして、この対照的であるが故に相互補完的な組み合わせがゾーンブロック・オプション・ハイブリッド・スキームという事になるのだろう。もっとも、それを展開できるグリフィンやラッセル・ウィルソンのようなQBはなかなかいないだろうが。また、それ以上に、両者をこなせるRBは少ないだろう。力のあるRBほどゾーンブロックは嫌がるし、オプションすら嫌がるだろうからだ。

 ラッセル・ウィルソンについて、ひとつばかし。
 
 ここに来て、評価が鰻登りであるが、正直なところ、私の率直な感想は若いデビッド・ガラードである。しかし、それより何より興味深いのは、その深い深いドロップバックである。ブリーズを更に深くした感じである。この問題をどのように解決するのか、私は興味津々である。ブリーズも同様であるが、クイックヒットのパス、なにより3〜5ヤードを獲る為の必殺の武器クイックスラントが使えないのは、何より痛いと思う。

 ここで、もう一度グリフィンに話を戻して、その怪我について。

 G+の解説で松本さんが「この怪我を知っていて、グリフィンを使い続けたのなら、シャナハンの責任問題だ。」みたいな発言をし、また同様の見解もアメリカでもあるようであるが、そんなのは完全な結果論だと思う。
 試合前には、こういう結果になると分からなかったのだから、医者の許可があり、本人の意志があり、そのパフォーマンスで勝てるとシャナハンが踏んだのなら、起用は当然であろう。試合終了、または試合中にゲーム続行不可能な怪我をするかどうかなど、誰にも、医者にも、当人にも、まるで分からないからだ。その試合で怪我するかどうかなど、試合前、健康体であったものと、怪我持ちであった者と、その蓋然性は変わらないからだ。

 まあ、確かに、このゲームでは、インターセプトを喰らった時点で、パフォーマンス的には交替すべきであったと思う。あのプレイは、典型的なゾーンブロックからのロングパスであり、本来なら、もう少しグリフィンがロールアウトして、セイフティを引き付け、それからディープに放る、もしくはセイフティが引っかかってこなかったら、そのままグリフィンがスクランブルしてロングゲインを狙うプレイだった筈である。ロールアウトが足りず、そのまま投げてしまった為に、アール・トーマスのカバーが間に合いインターセプトとなったのである。

 もっとも、この状態のグリフィンでも、カズンズより上とシャナハンが判断したのなら、その判断は、HCなのだから、当然尊重されるべきであろう。
 結果的には敗北したのであるから、この判断は間違っていた事になるだろうが、それはあくまでグリフィンのパフォーマンスをどう見るかの問題であって、怪我に配慮するものとは違う。

 この手の問題になると、必ず決まって、「HCが勝利の為に選手生命を犠牲にした。」というような、上の松本さんのような論調が生まれるが、そんなのはお門違いも甚だしい。上記したように、ケガ人も非ケガ人も、キャリアエンド級の怪我を負う蓋然性に於いては変わらないからだ。もし、キャリアエンド級の怪我を負うのが嫌ならば、もうそれはフットボールそのもの、更にはスポーツそのものを諦めるしかない。もちろん、可能な限り安全対策は施すべきだろうが、どんなスポーツでも、とりわけそれがフットボールならば怪我は付き物である。生きていれば、いついかなる時でも死の可能性があるのと同じ事である。そうして、「死ぬのが恐いから、死ぬしかない。」という事になってしまう。

 ましてや、スポーツである。まあ死ぬ可能性も無くは無いけれども、キャリアエンドの怪我を負ったところで死ぬ訳ではない、人生は続くのだ。そんなに恐れる事は無いだろう。

 また、このゲームで怪我しなければ華々しいキャリアが待っているかといえば、そんなことはまるで分からない。良いと言うか、悪い例が、数年前のトムリンソンである。同じと言うか、敵がパーフェクトシーズン継続中のNEであることを考慮すれば、この日のグリフィンより価値の高いゲームであり、しかもトムリンソンはキャリア晩期である。なのに、「怪我していて、走れません。」で欠場。怪我の状態は全く分からないが、私は激しく非難した。

 で、その後のトムリンソンが、どのようなキャリアを送ったかと言えば、翌シーズン、翌々シーズンはSDでポンコツ扱い、その後、ジェッツに移籍したものの、「ロートルの割には頑張ってるね。」程度の評価に終わり、スーパーボウルにも届かず、通算ラッシングヤードの記録もエミット・スミスに遠く及ばず、引退である。温存の結果は、そんなもんである。これは、トムリンソンに限らず、温存の結果というのは、大概そんなもんである。逆に、怪我を押しに押して出場したアイザイア・トーマスの方が、翌シーズン、チャンピオンになっていたりする。

 何事によらず、未来の為に現在を犠牲にするというのは、過去の為に現在を犠牲にするのと同様、愚かな事である。だって、我々は現在しか生きられないのだから。よく、老後の為にと、貯金のみならず、本やプラモデル等々を買い溜めている人がいるが、そんなのは何の意味も無い。だって、年をとったら、目が悪くなって、読書もプラモデル作りも出来なくなるのだから。読みたいのなら、今読むべきであるし、作りたいのなら、今作るべきである。

 まあ、翌日や翌々日の事を考えないで生きるというのも愚かな事だろうが、同様に十年後二十年後の事を考えて生きるのも愚かな事である。だって、翌日や翌々日の事が分かるのと同じ程度に、十年後や二十年後の事は分からないからだ。翌日や翌々日の事は7割がた予想できるだろうが、十年後二十年後の事なんて誰も分からない。せいぜい生きているとか名前が変わらない、性別が変わらないぐらいであろう。いいや、それらだって危うい。
 20年前、今の自分を予想できる人なんていない。だいたい、私だって、20年前、今こうしてWEBサイトにコルツの事を書いているだなんて予想だにしなかった。コルツなんて、その存在も知らなかったし、WEBサイトに至っては、その概念すら知らなかった。つーか、無かった。いや、既にあったのかもしれないが、少なくとも私の身の回りには無かった。パソコンなんて一般家庭には全然普及していなかったのである。

 「全盛期は今なんだ。」というのは、そういうことだと私は思っている。

 なんか話が逸れたので、無理矢理グリフィン3世に話を戻すが、あの3世とかジュニアとかは男性には付けられているが、女性には無いの。それに当たる女性用の言葉とか、あんの。無知を晒す。

 次はMIN@GB。

 ここはおもいっくそ、私の予想に反した結果。ますます、GB@ロジャース嫌いになった。絶妙のタイミングで敵の主力が怪我すんだよね。

 負け惜しみついでに、おもいっきり云っておくが、ジョー・ウェッブはQBじゃねえ。いくらワイルドキャット要員とはいえ酷すぎる。完全にRBじゃん。あれだったら、アダイの方がまだマシだわ。他にいねーのか。いかなる勝算があってウェッブを起用したんだか。
 あと、ポンダーもポンダーで、怪我の状態は皆目分からんけれども、プレイオフなんだから出て来い、出てきやがれ。グリフィンとえらい違いだわ。

 怪我を押して出るのが、なんでもかんでも正しいと言うつもりは毛頭無いけれど、今が全盛期だろーが。

 最後に、ディビジョナル・プレイオフの予想をば。

 さすがに、AFCは両ゲームとも、それぞれ第1シード第2シードが順当に勝ちあがってくると思う。すなわち、デンバー対ニュー・イングランドのAFC決勝、つうかマニング対ベリチックの既視感バリバリのAFC決勝になる。つっても、プレイオフで当たるのは結構久し振り、2006シーズンのAFC決勝以来かもしれんが。

 ズッコケる可能性が高いのはデンバー・マニングであろう。今年のデンバーは後半のスケジュールが緩いので、ここに来ての絶好調は多少差っ引いて考える必要がある。とはいえ、BALはマニングの大のお得意さんなので、まず問題ないだろう。

 次はNFC。

 GB@SFは、これはさすがにSFか。唯一の懸念材料はケーパーニックだけだろう。ケーパーニックが負傷退場して、アレックス・スミスが出てきたら、いろんな意味で、チョー面白くなるが。

 SEA@ATL。力的には互角かと思われるが、アトランタは、もはや負けられる状況ではないので、意地でも勝ちに来るだろう。その意地に一票という事で、ATLに乗った。ここで負けたら、アトランタは解散であろう。

 つー訳で、両カンファレンスともに上位シードが順当に勝ち上がると思う。SEA@ATLは、それくらい力的に差がある。

 あと、一コルツファンとしては、ここに勝ちあがって、マニングと決着を付けたかったという気持ちもなくは無い。一方で、決着を付けたくない気持ちもあったという、なかなかに複雑な心境でもある。ラック対マニングは夢のままで終わらせるべきカードなのかもしれない。

 来季はスーパーボウル獲るでええ〜。

                                                    2013/1/10(木)
Divisional
PlayOff
あれこれ  ディビジョナル・プレイオフについての感想を書きます。

 と、その前に先週、ちょっち書き忘れた事の付け加え。

 それは、やっぱプレイオフの緊張感って、いいなあという事である。ここずっと、コルツはプレイオフに連続出場してきて、それが昨季止まった訳であるが、ファンのチームの出ないプレイオフは第三者的に気楽に見れていいなあ、3年くらいはプレイオフに出ないのも有りかもと思っていたのであるが、やはり、プレイオフは出た方がいい。再確認した。

 ゲームの前々日くらいからの緊張感、「負けたら、今季終わりだなあ。」みたいな緊張感は、やはりプレイオフ独特である。出ないことで、その緊張感がなく、第三者的にプレイオフを観戦できるというのも悪くはないが、スポーツ観戦において、やはり、この緊張感に勝るものは無い。

 という訳で、まずは土曜日のゲーム、BAL@INDもといDENから。

 長年、コルツファンの味わってきた、この独特の感覚を、今季はデンバーファンが味わったという訳である。
 レギュラーシーズン絶好調でプレイオフに臨み、その初戦、マニングはそれなりに結果を出しながらも、大事なところでドライブ不発、敗戦という典型的なマニング的結末である。このやり場の無い怒りを何処にぶつけたらいいの。

 確かに、残り41秒からラヒーム・ムーアのあのプレイは無い。しかし、オーバータイムに入って、マニング、無得点って、FG1本も無しで、挙句ほぼオートマチック決勝FGのインターセプトって。

 そうそう、この感じこの感じ、長年コルツファンが味わってきたこの感じですよ。レギュラーシーズン中盤の記事で、何の根拠も無いが、マニングはプレイオフでズッコけるみたいな事を書いたけれど、いきなり初戦とは。

 でもまあ、今季のBALには問題なく勝てると思っていた。前回、そう予想した。ディフェンスがイメージより良くなかったというのもあるけど、それを差っ引いても、勝てた試合だったと思う。マニング得意のBAL戦だし。ちなみに、コルツファンとして言わせて貰いますと、デンバーファンの方には大変申し訳ないんですけど、この展開でラックなら楽々勝っていました。オーバータイムであっさり決勝ドライブ決めていたと思います。思います、つうか、決める。

 つう訳で、ティーボーを追い出し、マニングで臨んだ今季のエルウェイ・デンバーであるが、結果は奇しくも同じディビジョナル・プレイオフ敗退。これを成功と見るか、失敗と見るかは意見の分かれるところであろう。ただ、売店のおばちゃんは売り上げガタ落ちでブーブー言っとる。ティーボー饅頭、もっかい作らせろ。マニング・チョコは全然売れん。

 売れ行きといえば、サッグスとレイ・ルイス、あいつらTシャツ売る気、全然無いだろ。ブロマイド売る気全然無いだろ。あのフェイスマスクじゃ、誰だか分からん。北斗の拳のキャラかと思ったわ。あやうく、ケンシロウ探しそうになったわ。完全にコンビニ強盗する気満々だもの。深夜襲って、3万円奪う気マンマンだもの。

 次はGB@SF。

 このゲームを見て思ったのは、ハーボーはこの期に及んで、まだケーパーニックに実戦練習させとんのかという事である。レギュラーシーズンのゲームをハーボーは調整&実戦練習の場に使っているみたいな事を私は書いたが、それをディビジョナル・プレイオフ、しかもロジャースのGB相手にやるって、どこまで自信過剰なんだ。

 このゲームの前半、明らかにランシチュエーションでもSFはノーバックを使っていた。ケーパーニックの失敗が敗因になるだろうと予想されたこの試合で、いきなりインターセプト・リターン・タッチダウンを喰らう。それでも、呑気な調子で、ケーパーニックにロングパスやオプションを試みさせ、後半はおもむろに得意のランアタックでGBを粉砕。完全に前半は遊び、といったら大袈裟だけど、ケーパーニックの実戦練習の場に使っていた。ハーフタイム・レポートでハーボーの「ケーパーニックには驚かされた。」というようなコメントが紹介されていたが、この発言が何処まで本当かは軽々しく信用できないが、確かにケーパーニックを試していたという雰囲気はありありとある。それもプレイオフで、である。GBも舐められたものである。屈辱的な敗戦といっていい。

 つっても、それはゲームに臨む態度的な意味で屈辱的であって、ゲーム内容的には、それを裏打ちするような完敗であったと思う。後半の内容が現時点における両者の力関係そのままであろう。

 もともとランに弱いGBディフェンスが、今季どころか、ここ数年、下手すれば、ここ10年で最強の呼び声も高いSFラン・オフェンスに対峙すれば、こういう結果もやむなしであろう。その多彩極まるランブロックにゴアというだけでも凶悪なのに、そこにオレゴンから来たバカッ速のラ・マイケル・ジェームズが加わり、更にケーパーニックのオプションまであるというのだから、止まらなくて当然だろう。エイドリアン・ピーターソンの個人技だけ注意していれば良いワイルドカードのMIN戦とは違う。
 解説の水野さんは59番のブラッド・ジョーンズを酷評していたけれど、彼ひとりに責を負わせるのは酷というものであろう。このランを止めるとしたら、シンシィやシアトル並みの運動量とパワーが要求されると思う。

 で、最後にロジャースの悪口を言って、今回は終わりとしたい。ロジャースへの悪口は、おそらくこれで最後になるであろう。

 私の見たところ、ロジャースというのは、QBといったら大袈裟であるが、一流QBのやるべき事が10あるとしたら、その内の6つぐらいしかやっていない。ロジャースのクォーターバッキングというのは、手っ取り早く云えば、スナップを受け、レシーバーを探し、それがきっちりカバーされていたらスクランブル、そうして走れなそうだったらサックされてしまうという、只それだけの単純なものである。ただ、その一つ一つの技術や判断の完成度が高い為に、一見、一流QBのように見える。ただ、私のQB判定では、それではロモと同じ、完成度の高いロモ止まりである。

 1流QBというのは、そこから更に自身でオフェンス、更にはゲームをクリエイトする能力が要求されると思う。だからこそ、一流であり、NFL一の高給取りになるのである。より具体的に云えば、敵ディフェンスを読み、かく乱させ、彼我のチーム力を計算し、自軍が勝利するようにゲームを組み立てる。それがQBのリーダーシップであるし、チームを勝利に導くQBになると思う。コルツファンなので、手前味噌になるがラックにはその能力が濃密に備わっているし、イーライも完成度が低いながらもそれに取り組んでいる。10の仕事をやろうとしている。ところがロジャースにはそれが無い。あくまで6の仕事をきっちりやっているに過ぎない。

 このゲームの終盤、3TDs差、残り3分34秒、自陣23ヤード地点からのオフェンスでショートパスやスクランブルで進み、タッチダウンまで持っていったドライブはその象徴だと思う。あの場面で、ショートパスをつなぐ事は何の意味も無い。むしろSFを助けているようなものである。この場面では、無理を承知でディープに放り込み、仮にインターセプトされても、フィールドポジションを回復し、ディフェンスのターンオーバーに賭ける方が得策であろう。あのドライブは単に自分のスタッツを作る為だけのものである。最もパスの成功率の高いというだけのクォーターバッキングである。

 勿論、高確率・高効率のクォーターバッキングは重要である。しかし、それでは自分の力で、QBの力で勝利を手繰り寄せる事はできない。格下相手や、ターンオーバーや運等の自分以外の力がなければ勝てないクォーターバッキングである。

 勿論、それで、すなわちチームに迷惑を掛けないクォーターバッキングで十分だという説もある。QBだって、あくまでチームの部品のひとつに過ぎないという考え方もある。不良品でなければ良いという考え方である。実際、NFLでも、半分と言ったら大袈裟だが、1/3ぐらいは不良品、チームに迷惑を掛けるQBである。ロジャースぐらいできれば上出来の部類である。

 このQBの仕事を単純化する、マニングの登場で複雑化する一方だったQBの仕事を、本質だけ残し単純化するというのは、マッカーシーかフィルビン、どちらの仕事なのかは分からぬが、とにかくGBの示したひとつの方針、QBに対する新しいアプローチであり、その傑作がロジャースという事になろう。それに対し、私は不満は無い。ただ、そのロジャースを、マニングやブリーズ、ブレイディやラックと並べて一流だとする見解、つうかノリには、私は不満があるし、異を唱えたい。つうか、さんざん唱えてきた。私の見たところ、ロジャースはあくまで完成度の高い凡庸である。ユニクロやサイゼリア、マクドナルドみたいなものである。

 また、ロジャースというか、ロジャースのクォーターバッキングというのは格下相手、モメンタムを失った相手には、その完成度ゆえに猛威を発揮し、スタッツ的には素晴らしくなるので、数字だけでものを判断する人達を大いに惑わすのである。そうして、そういう数字や結果だけで判断する人達に限って、眼前のパスに「素晴らしい、さすがロジャース、芸術品のようなパスですね。」とか曰うのである。やれやれだ。

                                                    2013/1/13(日)

 大谷翔平&チップ・ケリーの今週の一言、「気が変わったんだヨ。」(大西元風に、)。

 さて、残り2試合の感想の前に、先日偶々見た2009シーズンのAFC決勝コルツ対ジェッツについて。

 わずか3年前のゲームだけど、その内容が今とは随分違う事に驚く。感慨深くすらある。例えば4th&ショートからのハードカウントなど、今では、どのチームでも行うごく普通の戦術であり、その対応策もバッチリ決まっているが、このゲームではジェッツがあたふたしていた。そのほか大小色々あるけれど、このフットボールというスポーツの進歩の速さ、変化の速さを再確認した。バスケットボールや野球では、5年前どころか10年前でも、大きなルール変更の無い限り、戦略や作戦が大きく変化するという事はまずないが、そのあたりはフットボールはまるで違う。まだまだ発展しているスポーツなのである。

 また、選手の顔ぶれが大きく変化しているのにも驚き、感慨深くした。細かく数えたわけでは無いけれど、印象として1/3ぐらいの選手は、今や引退、ないし引退同然ないだろうか。NBAなどは、「あれっ、コイツまだ現役やってたんだ。」みたいな驚きの方が多いが、その辺もNFLではまるで逆である。

 しかし、その人事面において、何より驚き、というか衝撃的なのは、このゲームから3年後にはマニングがコルトでは無いという事であろう。この3年前の時点で、それを予想していた人は、まず皆無と言ってよいだろう。サンチェスがジェットでは無いという事は、もしかしたら予想していた人はいたかもしれないが、マニングのコルツ退団を予想していた人は、まず皆無であったろう。ほんと、予想だにしなかったよ。ほんと、上の記事にも書いたけれど、未来は何が起こるかわからない。

 つう訳で、マニング話をもうちょい。

 上の記事に既に書いた今季のプレイオフ、BAL@DENであるが、板井さん河口さんの解説のG+で再放送を見た。

 改めて見ても、あれはねーわ。冬のマイルハイの気候、チャンプ・ベイリーの不出来、ラヒーム・ムーアの軽率、ジョン・フォックスの粘り強い采配、等々敗因を探せば、色々出てくるだろうが、あの展開で、デンバーの負けはねーわ。
 試合終了後、レイ・ルイスが感極まっていたが、あれはおそらく、自身の不出来も含めて、ほとんど敗戦を認めていたゲームが、思わぬ形で勝利、引退試合がまた延びた事を神様に感謝していたのだろう。ボルチモア・サイド的には信じられない、アンビリーバボーな勝利だったと思う。

 しかし、あの展開で負けるかねえ、マニング。マニングの勝負弱さは定評のあるところであるし、コツファンとして私も度々遭遇、そのたびにその理由を考えてきたけれど、10年近く考えてきて、いまだその明確な答えが見つからない。マニングも分からないだろう。
 マニングのノーハドル&オーディブルという戦術が接戦になると敵ディフェンスに読まれ易いとは考えているが、それだけでは、この部類の勝負弱さは説明が付かぬ。もうなんか、そういう星の下に生まれてきたとしか説明のしようが無い。レイ・ルイスが神に感謝するのも宜なるかなである。

 そもそも昨季だって、自身のホームフィールドでスーパーボウル開催の年に、まさかのシーズン全休、そうして実弟にそのスーパーボウルを制覇され、オフシーズンはラックに追い出される形でコルツ退団である。そのコルツ退団にしたって、もしこの年の1位が10年に一人の大物と言われるラックでなかったら、コルツ残留の目は大きかったと思う。というか、ほぼ間違いなかったろう。恐るべきピンポイントでラックの年に全体1位になってしまったが為のコルツ退団である。尋常ならざる間の悪さだと思う。

 なんかもう一コルツファンとして、デンバーファン、特に売店のおばちゃんには悪い事をしたって気持ちで一杯です。ほんとスンマセン、ほんとスンマセン。って、私が謝っても意味が無いんだけど。なんか、お歳暮で高級食材を送って、食中毒を出しちゃった気分である。もちろん、経験した訳では無いけれど。

 ちなみに、これで、マニングのポストシーズンは9勝11敗である。「勝負弱い、勝負弱い。」と批判されながらも、5割近い数字なのだから、まずまずと言えなくもないが、これはプレイオフである。トーナメント戦である。リーグ戦ではないのである。すなわち、数理的に言って、初戦突破さえすれば、その時点で5割確定なのである。ポストシーズン負け越しつう事は、しょっちゅう初戦敗退しているという証である。という訳で、マニングのポストシーズン全成績を調べてみた。

 年度  98 99 00  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
 勝敗 不出場  0−1 0−1 不出場 0−1 2−1 1−1 0−1 4−0 0−1 0−1 2−1 0−1 不出場 0−1
 内容    ●TEN ●MIA   ●NYJ ○DEN
○KC
●NE
○DEN
●NE
●PIT ○KC
○BAL
○NE
○CHI
●SD ●SD ○BAL
○NYJ
●NO
●NYJ   ●BAL

 うすうす感じてはいたが、改めて見ると酷いな。プレイオフ初勝利は6年目の03シーズン、マット・ライアンが5年目の初勝利を揶揄されているが、気にすんな、マニングは6年目だ。だから気にする、つう説もあるが。
 で、内訳は、DENとKCに2勝0敗、BALに2勝1敗、NEとNYJに1勝2敗、SDに2敗、TEN、MIA、PIT、NOに1敗、CHIに1勝である。スーパーボウル制覇後の07、08シーズンは、それぞれ1勝ぐらい挙げていたかと思っていたが、それぞれきっちりSD、つうかサイファーズに2戦2敗。

 とにかく、初戦敗退率がハンパない。実に12回出場中8回初戦敗退である。そりゃ、スーパーボウル出場シーズンに勝ち星を荒稼ぎしても、通算で5割切るわ。せめて6回初戦敗退なら5割、5回なら5割越えである。
 調べてはいないが、プレイオフに10回近く出場しているQBで勝率5割切っているQBはマニングぐらいじゃないだろうか。とにかく初戦突破しさえすれば5割以上確定なんだもん。そんなに難しい事ではない。キャリア通算3回出場で3戦3敗というのは有りがちかもしれないが、10回近く出場、すなわちそれだけ強いチームで初戦敗退率が高いというのは、やはり問題だろう。マリーノなんかも近い感じだったのだろうか。

 ちなみに弟のイーライは5回出場8勝3敗である。血筋ではないという事であろう。もっとも、スーパーボウルを制覇した2回以外は初戦敗退なので、ポストシーズンに強いとまでは言えない。
 また、ちなみに、ロジャースは5勝3敗であるし、ロスリスバーガーやフラッコーも調べてはいないが勝ち越していると思う。ブレイディは…、調べねーよ、そんなもん、勝ち越しているに決まってんだろ。

 話を兄のペイトンに戻すが、このBAL戦がその良い例であるように、マニング自体の出来が悪かったという訳ではない。キャリアの初期はともかくとして、それなりに仕事はしているのである。2TDs1INTぐらいの成績である。でも負ける。サイファーズとか、このゲームのムーアみたいな感じで。そういう星の下に生まれたとしか説明のしようがないよなあ、やっぱ。

 そう云えば、BALのOCはジム・コールドウェルでしたな。これで、コルツに勝ち、マニングに勝ち、と見事お礼参りを済ませた事になる。これでNEにまで勝っちゃうと、もしかしたら、なかなかの才能の持ち主という事になってしまう。「無能、無能。」と書いてきた私の不明を恥じねばならぬ事になってしまう。人間関係が原因とはいえ、才子と謳われたキャム・キャメロンの後を受けてのOCでもあるし。少なくとも、ベテランQBの話し相手としては有能なのかも知れぬ。

 そのOCと云えば、コルツのOCエイリアンズはARIのHCに栄転。齢60にして、地獄のNFC西に身を投じるとは、なかなかに勇ましい。私なら、よう出来ん。まあ、フットボール関係者にとって、NFLや有力カレッジのHCっていうのは、最終的な目標だもんな。おめでとう、エイリアンズ。

 んで、その代わりのOCはというと、スタンフォード大のOC、ペップ・ハミルトンを招聘。2年目にして、早くもラック様ご機嫌伺い人事である。スタンフォード大つう事で、ハーボー的なオフェンスを展開するのかまでは不明であるが、頑張ってもらいたい。

 さて本題のディビジョナル・プレイオフ二題である。

 まずはHOU@NE。

 NEの完勝。これは予想通りであったのであるが、意外だったのは、HOUがそのお家芸のゾーンブロック・スキームを全く使わなかったという点である。追いかける展開になったので、ゾーンブロックは使いづらいという事情はあろうが、これは意外だった。
 しかし、ゾーンブロックを使わなければ、フォスターはともかく、シャウブはあくまで平均的なQBなので、NE相手にキャッチアップというのは、いくらアンドレ・ジョンソン、オーエン・ダニエルズの両雄を有していたとしても、なかなか厳しかったろう。事実、全く歯が立たなかった。

 いくら追いかける展開とはいえ、ここは開き直って、自身最大の武器であるゾーンブロック・スキームで勝負した方が面白かったと私は思う。どこかでフォスターの一発が出て、面白い展開になっていたのではないだろうか。

 このへんはキュービアックの心境の変化なのか、はたまた戦術眼の変化なのか、皆目不明であるが、その師匠であるシャナハン同様、ゾーンブロック・スキームにある種の限界を感じている事だけは確かだと思う。私も、このゾーンブロックというスキームは終わっている、と言ったら語弊があるが、このスキームでは、どんなに極めたところで、このHOU同様、プレイオフに出る出ないが精一杯、そこから先、すなわちプレイオフに勝ちあがっていく、プレイオフ出場の強豪と伍していく事は不可能だと思っているので、来季以降、HOU、あるいはキュービアックが、どのような戦略を採るのか注目したい。

 次、つうか最後はSEA@ATL。

 前半20−0からの逆転という事で、一時は責任問題勃発かと思われた試合だったが、残り31秒からの意地の再逆転で、ATLが何とか勝利をもぎ取ったというゲームであった。

 私は、このゲームの予想でATLの意地に一票みたいな事を書いたが、最後のドライブはまさしく意地だけだったと思う。「こんなところで終われるか〜。」と、ライアンが意地だけでパスを投げ、ダグラスとゴンザレスは意地だけでレシーブをし、ブライアントは意地だけでFGをねじ込んだという試合だった。ほんと、最後のブライアントのFGは、まさしく「ねじ込んだ」という感じのFGだった。

 でも、ほんとブライアントはよく決めたよ。あのキックというのは、アトランタのオーガニゼーションのすべてと言っては大袈裟だけれども、少なくともこの5年間、ライアン時代の5年間の全てが懸かっていたと思う。外せば、ホークス解散であったろう。20−0からの逆転と言うゲーム内容も含めて。ホント値千金というか、そんな言葉では表せないくらい貴重な、少なくとも私の見てきたNFLのゲームでは最も貴重なFGだったと思う。しかも、外せば負けのキックだし。

 ちなみに、あの場面、私がキッカーだったら、確実におなかが痛くなっていました。「キックをしたら死んじゃう病」を発症していました。
 でも、ほんとキッカーの精神力って凄いわ。私だったら、確実にぶっ倒れているもんな。足を振り上げたら、そのまま倒れてアワワワのコースである。なにしろ、フランチャイズの全てが懸かっていると言ってもいいキックだもんな。あのFGの成否で多くの人々の人生が変わってしまうんだもんな。そんなおとろしいキック、恐くて蹴れんわ。

 とまあ、ブライアントのキックでライダーキック並みに全てが救われたけれども、20−0から、一時的とはいえ逆転されたというのは、それなりには責任問題にはなると思う。戦犯は探さざる得ないだろう。
 シアトル相手ということで、大量リードで逃げ切る為の常套手段、ゾーンブロックが使いづらかったのは痛かったろうが、にしてもである。解説の生沢さんが、第4クォーターでのターンアラウンドみたいなプレイを非難していたが、それは私も全く同意見である。
 そもそも、こういうプレイ・セレクトは前OCマイク・ムラーキーの専売特許で、昨シーズンまで、それを再三問題視し、そのムラーキーが退団した事で、こういう奇抜なプレイコールは無くなるかと思っていたのであるが、まだ残っていたのか。ムラーキーの亡霊か。というか、そもそも今までもムラーキーの発案ではなかったのか。ゴメン、ムラーキー、疑ってました。

 一方、シアトルは惜しくも敗戦したけれど、ATLと違って、まだまだチームに余裕がある。ラッセル・ウィルソンが無茶な契約を要求しないかぎり、今のチームが2,3年は維持できるのではないだろうか。リンチの処遇は、どうにでもなるだろうし。そういう状況下で、無茶な人事をするのがピート・キャロル流なのかもしれないけど。

 で、一応、両カンファレンスの決勝も予想しておくか。

 まずはNE@BALであるが、つーか厭きた。厭き飽きした。2000回見たAVよりも飽き飽きした。2万回クリアしたドラクエよりも飽き飽きした。2億回読んだドラゴンボールよりも飽き飽きした。
 それはともかく、昨季と同カードつうのもあるけれど、なんかもう腐りきっているカード、食べられないくらい腐りきっているカードつう感じではある。観に来るひと、いんの。このNEとBAL、そうしてPITとマニングはもういいわ。お腹いっぱい。どっかのチームはカンファレンスを移動して欲しい。BALなんかNFC東のチームと交換してもいいんじゃないの。いろんなライバリーがあるから一筋縄ではいかないのは分かってけどさ。

 つー訳で、この一戦は予想する気、まるで無し。めんくせー。確か昨季はBAL有利としていた気もするが、そのBALは久しく噂されていた高年齢化が、ここにきてはっきり顕在化したし、一方、NEは昨季と同戦力であろうから、相対的にNE有利と見る。まあ、どっちでもいいや。ハーボー対決も、そんなに面白そうな感じはしないし。SFと戦うという意味では、NEの方が面白い、すなわちハーボー対ベリチックの方が面白いと思う。レギュラーシーズンのリターンマッチという意味でも。

 と、思いっきしSFの勝利を確定させてしまったATL@SFであるが、さすがにここは厳しいだろ。どう足掻いてもSFだと思う。実際問題、あの凶悪ランオフェンスを止める術がATL、というかNFLの他の31チームにあるとは思えない。

 そもそも、ゴアとOLの力だけで20点台後半の得点力があるのに、それにケーパーニックのオプションが加わるのだから、40点近く得点しても全然おかしくない。本気を出せば、ATL相手でも50点は取るだろう。

 一方でSFディフェンス相手にライアンが50点以上得点できるとはとても思えない。よほどの事件が起きない限り、またハーボーがスーパーボウルに出れない運命の元に生まれていない限り、SFで堅いと思う、カッチン鋼より堅いと思う。

 私は、かつて、というかあちこちで「ランオフェンスと強力ディフェンスでは恒常的に勝てない。」みたいな事を書いてきたけれど、そのヘッポコ理論を覆すチームが今のSFであると思う。
 もっとも、ケーパーニックのオプションはパス攻撃みたいなものだから、純然たるランオフェンスと強力ディフェンスのチームでは無いかもしれぬ。昨季のSFは「純然たるランオフェンスと強力ディフェンスのチーム」だったろうが、それ故にNYGに負けた。

 つっても、形の上ではオプションもランなのだから、私の理論「完璧なパスオフェンスは完璧なパスディフェンスに勝る。完璧なランディフェンスは完璧なランオフェンスに勝る。」は訂正、ないし注釈付きへの変更を迫られるだろう。少なくとも、どんなランディフェンスでも、今のSFのランオフェンスを止めるのは難しいだろう。少なくとも、私には思いつかない。

 また、私は「HCの仕事」というコラムで(スンマセン、まだ終わっていません。近い将来、最終回を書きます。)、「これからのスポーツはHCや監督よりGMがますます重要になるだろう。」みたいな事を書いたが、このハーボーのSFはその反例であると思う。
 私のこの考え方を、上と違って、訂正する必要は無いだろうが、重大な注釈は付ける必要はあるかもしれない。すなわち、「但し、本格的に強いチーム、王朝レベルの強いチームを作るには、GM主導ではなく、現場のHC主導でなければならぬ。」である。

  このハーボー、そうして00年代のベリチックと、王朝レベルの強いチームは、現場のHC主導でチームを作っていかねばならないのかもしれない。
 そう云えば、KCのピオーリが解任されたが、NEを作ったのはピオーリではなく、ベリチックだったというのは、これではっきりしたであろう。だいたい、この期に及んで、ロミオ・クレネルをHCに据えているのだから、ピオーリに見識も、また人脈も無かった事は、この一事に老いても明瞭である。

 さて、話をハーボーに戻すが、HC主導という意味では、彼があまり人事に手を付けなかったというのは、やはり現場のコーチ主導でチームを作りたかったという気持ち、というか理論の表れだったのかもしれない。現代主流のGM中心のチーム作りへの反発とも云える。その反例を作りたかったといったら、穿ちすぎか。

 いずれにせよ、このハーボーのチームは、私の二つの理論、「完璧なパスオフェンスは完璧なパスディフェンスに勝る。完璧なランディフェンスは完璧なランオフェンスに勝る。」および「これからのスポーツはHCや監督よりGMがますます重要になるだろう。」の反例である事は間違いない。
 こんなことを書くと、私はハーボーのチームの勝利を喜んでいない、不快に思っているように思われるかもしれないが、そんなことは無い。むしろ、清々しい気持ち、大袈裟に云えば、その勝利にウキウキするような気分である。

 なんとなれば、それは、このフットボールというスポーツがまだ生きている。現在進行形で進歩している証拠だからである。
 私はこの記事の冒頭で、野球やバスケットボールには進歩がなく。フットボールにはそれがあるみたいなことを書いたが、実際、野球やバスケットボールを見ていても、そこに大きな進歩は無い。細かな駆け引きの新設や微妙な技術的変更ぐらいがせいぜいであり、大きな戦略的戦術的進歩は無い。

 ところが、フットボールにはまだまだそれがある。それを見る事が、フットボールを見る大きな、あるいは最大の喜びなのかもしれない。

                                                    2013/1/20(日)

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